↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/7

第一印象

アオハル――すなわち、青春とはクソである。


 理由?


 そんなもの、まさに理に反しているからだ。


 例えば、高校生の恋人同士が、そのまま何事もなく付き合い続け、やがて結婚にまで至る確率はどれほどのものだろう。


 あるいは、高校球児が甲子園への切符を掴める確率は?


 考えるまでもない。


 青春とは、不確実なものだ。


 どれだけ努力したところで、必ず報われるとは限らない。

 どれだけ誰かを想ったところで、その想いが届く保証なんてない。


 だからこそ――


 青春とは、クソなのだ。


 ……と、俺は常日頃からそんな捻くれた思想を抱いている。


 と言えば、否である。


 では、なぜ俺が今こんなことを考えているのか。


 それは、今朝まで時間を遡ることになる。


 朝。


 いつものように教室へ入った俺は、自分の席へ向かった。


 そして。


「……なんだ、これ」


 俺の席の隣。


 本来ならば、そこには何もないはずだった。


 なのに、そこには一つの机が置かれていた。


 この時点で、俺はすでに嫌な予感を覚えていた。


 そして――その予感は、見事なまでに的中する。


 ホームルーム。


 担任教師が教壇に立ち、その隣には一人の少女が立っていた。


 世間一般では、こういう少女を「美少女」と呼ぶのだろう。


 長い髪。

 整った顔立ち。

 人目を惹きつけるほどの容姿。


 クラスの男子たちが野蛮な視線を向けてしまうのも、まあ無理はない。


「今日からこのクラスに転校生が来る」


 担任がそう告げる。


 少女は一歩前に出ると、淡々と口を開いた。


「諏訪之瀬はじめです。よろしくお願いします」


 それだけ。


 たったそれだけの自己紹介だった。


 しかし、休み時間になった途端、彼女の周囲には大量の生徒が群がっていた。


 昼休みになっても、それは変わらない。


 質問攻め。

 自己紹介。

 趣味。

 前の学校。

 好きな食べ物。


 まるで芸能人でも転校してきたかのような騒ぎだった。


 そんな光景を横目に、俺は弁当を食べる。


 そして放課後。


 俺は誰よりも早く教室を出ようとした。


 こういう騒ぎに巻き込まれるのは御免だ。


 さっさと帰ろう。


「待ちなさい」


 背後から声がした。


 嫌な予感しかしない。


 それでも俺は、仕方なく振り返った。


「……誰?」


 少女――諏訪之瀬はじめは、露骨に不機嫌そうな顔をした。


「あなた、やはり心が腐っているわね」


「それが初対面の奴に対する発言かよ」


「大丈夫よ。第一印象さえ良ければいいのだから」


「いや、俺にとっては今の発言が第一印象になるんだが……」


 こいつ、思った以上に変な奴だ。


 俺が呆れていると、諏訪之瀬は当然のように言った。


「なぜかしら」


「何が?」


「あなた――いえ、沢村君は」


 彼女は俺の目を真っ直ぐに見つめる。


「クラスで私に話しかけられる、唯一の権利を持っているじゃない」


「…………は?」


 意味が分からない。


 というか――


 その言葉を聞いた瞬間。


 俺はようやく理解した。


 朝、俺の隣に置かれていた机。


 あれは、偶然なんかじゃなかったのだ。


 そしてこの日を境に。


 俺の、平穏だった高校生活は――


 少しずつ、狂い始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。