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DEVIANT DETECTIVE  作者: 藤山理想


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1/16

1#Raptor Rise

 夜の帳が下りた新宿の街は、昼間の喧騒を忘れ去ったかのように冷え切っていた。ビル風が裏路地の湿った空気を撫で、アスファルトを冷たい感触へと変えていく。


 ビルの屋上、錆びついた手すりに身を預け、深く瞳を細めた。夜闇に溶け込む黒髪を乱雑にかき上げ、視線の先を射抜く。

 標的は、裏路地の影を縫うように歩く男。その男の背中から滲み出る、人間離れした気配を、五感は逃さない。

 音もなく屋上から跳躍した。重力を無視するかのようにビルの壁面を駆け、着地音すら立てずに次の足場へと移る。獲物は、行き止まりの暗がりに追い込まれた。逃げ場を失った男が背中を向けて止まる。


 煙草『DEATH』をくゆらせ、その灰が舞い落ちるよりも早く、男の背後に立っていた。

「命乞いをするなら短く頼む」

 感情の欠落した無機質な声音。男が驚愕に肩を震わせ、振り返ろうとした瞬間、右手のデザートイーグルを迷いなく突きつけた。

 自動拳銃の大口径が冷たく光る。

 銃声が轟く。静寂を切り裂くような乾いた音が反響し、火花が暗闇をオレンジ色に染めた。男の左膝から下は、弾丸の衝撃に耐えきれず、肉片となって路地裏の壁に叩きつけられる。

「あ……が、あぁ……っ!」

 声にならない絶叫が男の喉から漏れる。ロキは苦悶に身をよじる男を見下ろし、冷徹なまでの静けさで追撃の照準を合わせた。

「次は、もっとマシな神様になれるといいな」

 容赦のない引き金の連打。計5発の弾丸が、男の脳天を正確に撃ち抜いた。


 崩れ落ちた死体から、まるで命の残滓のように丸い光の粒子がふわりと浮かび上がる。

 それを、空気を取り込むかのように自身の胸元へと吸い寄せ、虚無の胃袋へと沈めた。

 路地裏に静寂が戻る。指先に挟んだ『DEATH』に目を落とした。まだ半分も残っている。


「せめて、一本はしっかり吸えないと張り合いがない」


 つまらない呟きを吐き出し、彼はデザートイーグルをホルスターに収める。

 冷たい夜風が通り過ぎる頃には、そこにいた死体で転がっていた男の姿も、タバコの煙を纏った男の気配も、新宿の闇の中へ跡形もなく消えていた。

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