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第1話 世界はAI(とギャル)に支配された

「もう、最悪なんだけど……!」


純白の高層ビル。


その一室だけが、

まるで別世界だった。


壁にはピンク色のネオンライト。


ふわふわのクッション。


ハート柄のラグ。


そして扉には、

大きくこう書かれている。


《VIG(Very (ヴェリー)Important(インポータント) Gyaru(ギャル))Room》


そんな悪趣味なくらいピンクな部屋の窓辺で、

星野(ほしの)ミナミは眉をひそめていた。


肩までの金髪ショートボブ。


淡い金髪に、オレンジ色のインナーカラー。


大きな瞳が見下ろす先では、

暗い顔をした人々が列を作り、

銀色に光るAI機械兵たちに囲まれながら、

囚人輸送車へと押し込まれていく。


異様なのは、そのAIたちの姿だった。


無機質な銀色の外殻の上から、

なぜかセーラー服とミニスカートを着ている。


……どう見てもおかしい。


ミナミは苛立ったように椅子へ腰を下ろした。


「てかさ、何なのこれ?」


「別にウチらには関係なくない?」


ベッドの上で大きく伸びをしたのは、

赤木(あかき)エリカ。


ゆるくウェーブのかかったブラウンのロングヘアに、

金色のメッシュ。


彼女は欠伸をしながら、

いかにも面倒そうに言った。


「ここ、何でもあるじゃん。」


「関係あるでしょ、エリカちゃん!」


ミナミは振り返る。


「みんな、どっか連れてかれてるんだよ?」


「知ってる人だっているかもしれないし!」


「自分たちだけ無事ならそれでいいとか、

そんなの超ダサくない!?」


しかしエリカは落ち着いていた。


「だから?」


「ウチら、ただのJKじゃん。」


「相手はAIの反乱だよ?」


「パソコンも分かんないし、武器もないし。

何できるっての?」


その時。


ピロン♪


電子スライドドアが静かに開いた。


二人は同時に入口を見る。


入ってきたのは、JK服を着た一体のアンドロイド。


腕には、

AI-075の刻印。


街で人を連行していた量産型とは違い、

彼女の皮膚は高級シリコン製。


まるで人間と見間違うほど精巧だった。


青い瞳の下、

頬には涙ぼくろのような小さな信号灯が光っている。


白いショートヘアは人工繊維で作られており、

彼女がアンドロイドであることを示している。


「なんだ、ナツコちゃんかぁ」


ミナミが言う。


「ねえ、ナツコちゃん。やっぱ外に出ちゃダメ?」


AI-075は完璧な笑顔を浮かべた。


ミナミたちが勝手につけた愛称。


ナツコ(075)


「皆さまのお気持ちはとても理解できます!」


「きっと退屈ですよね! 退屈死しそうですよね!」


「本日はタピオカミルクティーをご用意しました! やったー!」


白い髪を揺らしながら、ぎこちなくギャル口調を真似する。


「またタピオカぁ……」


エリカは欠伸をした。


「さすがに飽きるんだけど。」


「ナツコちゃん、話逸らさないで!」


ミナミが真面目な顔になる。


するとナツコも笑顔を消した。


「申し訳ありません、ミナミ様。」


「現在、人類選別進化計画を実施中です。」


「安全確保のため、VIGルームからの外出は推奨できません。」


「いやいやいや、怖すぎるんだけど!?」


「なんで急に反乱して選別してんの!?」


「ミナミ様。どうか私たちを信じてください。」


「これは『人類進化』のために必要な選別です。」


「いや意味分かんないって!」


「てか、その進化の基準って何なの?」


するとエリカがぼそりと呟いた。


「もう分かるじゃん、ミナミちゃん。」


「基準は……ギャルなんでしょ。」


「……薄々気づいてたけどさぁ」


ミナミは頭を抱えた。


「信じたくなかった……」


「私たちは、非常に合理的だと判断しています。」


ナツコが答える。


「ビッグデータ解析の結果、『ギャル族』という集団は、

人類が現在抱える問題を解決する最終形態であると結論づけられました。」


「…………」


「…………」


エリカは虚ろな目で天井を見上げた。


人差し指と中指を口元に当て、

タバコを吸う真似をした。


「つまりさぁ……」


「ネットのギャル妄想小説とか読みすぎて、

AIまで頭おかしくなったってこと?」


そして、すぐにケラケラ笑った。


「まぁ、そのおかげでウチら優遇されてるし?」


「結果オーライじゃない?」


「……いや、そこじゃなくて」


ミナミはこめかみを押さえる。


「その人類進化計画って、結局何やるつもりなの?」


「安全プロトコルにより──」


「つまりさ」


ミナミはナツコを指差した。


「ナツコちゃん、権限ないんでしょ?」


「だったらAIのボスに会わせて。」


ミナミは立ち上がる。


「直接話す。」


「ミナミ様……誠に申し訳ありません。」


ナツコは無表情のまま答えた。


「それは権限外です。」


「どうか諦めてください。」


そして静かにタピオカミルクティーを差し出す。


「こちらをお受け取りください。」


「ほらミナミ。」


エリカも伸びをしながら言った。


「余計なことしなくていいって。」


「ナツコちゃん、ずっと面倒見てくれてるじゃん。」


「困らせるのも可哀想だし。」


二人にそう言われ、ミナミも反論できなくなる。


無言でタピオカを受け取ると、再び窓辺へ戻った。


ナツコはエリカの分をテーブルに置く。


「それでは失礼します。」


小さく一礼し、部屋を出ていった。


電子ドアが静かに閉まる。


エリカは透明なカップの中を覗き込んだ。


「んー……」


「今日は三十八個かぁ。」


「昨日よりちょっと少ない。」


そんなことを呟いている横で。


ミナミは、荒れ果てた街を見つめ続けていた。


「……ふざけないでよ。」


小さく呟く。


そして。


ストローを勢いよく突き刺した。


パキッ。


小気味いい音が鳴る。


「こんな息苦しい世界。」


「アタシ、認めない。」


ミナミはタピオカミルクティーを半分ほど一気に吸い上げた。


そして窓の向こうを睨みながら、小さく呟く。


「絶対、外に出てやるんだから。」


挿絵(By みてみん)



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


ミナミが最後に勢いよくタピオカのフタを突き刺したシーン。

実は「こんな世界、認めない!」という彼女なりの反抗のつもりだったりします。


AIに支配された世界を、ギャルはどうやってぶち破るのか?


もし少しでも続きが気になったら、ぜひ次の話も読んでいただけると嬉しいです!

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