マグノリア
「エスカローネ、いるか?」
「セリオン?」
エスカローネはセリオンの声を聞いた。
間違えようはずがない。
エスカローネのいとおしい声だ。
「離れていろ」
「ええ」
エスカローネはセリオンの行動を見送った。
ドアがたちまち切断される。
セリオンは大剣でドアを斬ったのだ。
ドアが割れてセリオンの姿が現れる。
ああ、この姿をどれほど待ち望んだことだろう。
「エスカローネ、無事か?」
「ええ、私は無事よ」
「どうやら、大事ないようだな」
「スルト様……」
セリオンの後ろにはスルトがいた。
「私もいるよ!」
「私も―!」
シエルとノエルの姿もあった。
エスカローネは心から安心した。
エスカローネは彼らと別に拘留されていたのだ。
ようやく合流することができた。
セリオンはエスカローネを助け出すと、王宮から出てきた。
すぐさま、アンシャルたちと合流した。
アンシャルたちもスルトたちの安否がわかってうれしいようだ。
「うわあああああああ!?」
「きゃあああああああ!?」
そこに白衣を着た人たちが押し寄せてきた。
セリオンは気になってその人たちを置しとめる。
「どうした?」
「邪魔をしないでくれ! 化け物が! 化け物がああああ!?」
彼らはがくがくと震えていた。
一体何があったんだろうか?
「それではわからない。何があったか、教えてくれ」
「マグノリアが研究員たちを殺したんだよ! ぼくたちは王立アカデミーの者たちだ!」
「王立アカデミー……」
「マグノリアとは何なの?」
「そんなこと知るか! ぼくたちが聞きたいくらいだ! ああもう! 邪魔だ!」
そう言うと研究員は走り去っていった。
「どうやら、本当に化け物がいるらしいな。スルト!」
「うむ。私はシエルやノエルを守ろう。おまえたちは全力でマグノリアとやらを叩き潰せ!」
「わかった! じゃあ行くぞ、アンシャル、サラゴン、アリオン、エスカローネ!」
「ああ、無論だ」
「わかっているさ!」
「暴れたりなかったところだぜ!」
「もちろんよ!」
五人は王立アカデミーに向かって、走り出した。
王立アカデミーはひどいものだった。
内部はところどころ破壊されていた。
それどころか、死体がいくつもあった。
逃げきれずにマグノリアに殺されたのだろう。
中心に彫像のような怪物がいた。
あれがマグノリアだろう。
「武器を出せ!」
アンシャルがセリオンたちに命じる。
セリオンたちは各々の武器を出す。
マグノリアがこっちに気づいた。
マグノリアは木のような胴体、左右に突き出た肩、前面に突き出された顔。
異形の化け物だ。
その体は大きく、五メートルはあるだろう。
「構えろ! 来るぞ!」
「いっくゼええ! 紅蓮犬牙斬!」
アリオンが炎の斬撃を出して斬り上げる。
マグノリアは斬れているはずだが、平然としている。
攻撃が効いていないのか。
「はっ! 黒炎斬!」
サラゴンが黒い炎でマグノリアを斬りつける。
攻撃したサラゴンが驚きの声を漏らす。
「むう!? こいつ、ダメージを受けていないのか!?」
マグノリアから魔力がほとばしった。
「二人とも、離れろ! 魔法が来るぞ!」
マグノリアは硬い石の槍をいくつも形成した。
アリオンとサラゴンが下がる。
それらが一斉に放たれる。
多連・硬石槍だ。
「はあっ! 風月斬!」
アンシャルが風の斬撃を振るう。
アンシャルの斬撃は石の槍の群れに風穴を開けた。
セリオンたちはそこに避難する。
「なんて、攻撃だ……」
「圧倒的だわ……」
セリオンたちはマグノリアに圧倒された。
マグノリアはこれだけの魔力があるのか。
それもまだ一端にすぎないのだろうが。
「エスカローネ!」
「ええ!」
セリオンとエスカローネは交差してマグノリアに攻撃した。
二人の武器がマグノリアを傷つける。
「はっ! 風王衝破!」
アンシャルが風の衝撃をマグノリアに叩きつけた。
マグノリアは涼しそうだ。
「これでも効かないか……」
風王衝破はアンシャルの技でも高位の技だ。
アンシャルは呆然とするしかない。
マグノリアが光点をいくつも全周囲に展開した。
それはバチバチと光ってエネルギーを持つ。
「気をつけろ! また何か来る!」
セリオンが叫んだ。
全周囲にレーザーが発射された。
『ジェノサイド』である。
「うおおおおおおお!?」
「きゃああああああ!?」
「おおおおおおおお!?」
「だあああああああ!?」
「うわああああああ!?」
全員が叫び声を上げる。
マグノリアの攻撃五人を圧倒した。
五人はいずれも一流の戦士だ。
それを平然と圧倒できるのだから、マグノリアは強い。
セリオンたちは魔力を武器に集めた。
「全員で一気に攻撃する! かかれ!」
アンシャルが指示を飛ばす。
セリオンもそのうちの一人として攻撃する。
五人の武器がマグノリアを貫いた。
だが、それでもマグノリアは動じない。
マグノリアは周囲に衝撃波を放った。
「うおおおおおおお!?」
「ああああああああ!?」
セリオンもエスカローネも吹き飛ばされた。
マグノリアはアンシャルを狙った。
マグノリアはアンシャルに接近して氷の息を吹きかけてきた。
「副長!」
サラゴンがアンシャルの前に立ちはだかった。
炎で氷を中和する。
「おらあああああ!」
アリオンが側面から紅蓮剣で斬りつけた。
氷の息が中断する。
「エスカローネ! 連携だ!」
「ええ! ゴルデンリヒト!」
エスカローネが上方に金光を発生させる。
セリオンはその金光を武器にまとわせて、セリオンは刃に変えてマグノリアに攻撃した。
金光の斬撃がマグノリアを襲う。
セリオンは接近した。
マグノリアに大剣で斬り刻み、さらに大剣を突き入れて、ジャンプして斬り上げた。
マグノリアが二つに割れる。
マグノリアはすぐさま再生する。
セリオンが着地する。
「こいつにはダメージがないのか……」
セリオンは決定打を与えられないでいた。
マグノリアの肩がはじけた。
そこから大量の腕が現れた。
それがセリオンを襲う。
セリオンは後ろに跳んだ。
マグノリアの腕がすかる。
マグノリアが長い尾を見せた。
尾の先に魔力が集まる。
「セリオン! まだ狙われているぞ!」
どうやら、マグノリアはセリオンを危険視しているようだ。
テイルレーザーがはじけ飛ぶ。
「うおあっ!?」
セリオンはまたさらに跳んだ。
そのまま頭部に斬りを入れる。
マグノリアは尾でセリオンを拘束した。
「ぐっ!?」
セリオンにダメージが与えらる。
セリオンは身体強化で圧力に抵抗する。
「セリオン! くらいなさい! ゴルデン・シュラーク!」
エスカローネが背後からマグノリアにハルバードを振るって光の打撃を放った。
セリオンへの拘束が弱まる。
セリオンはその瞬間に脱出し、マグノリアを斬った。
マグノリアが吠える。
このまま絶望的な戦いが進むのかと思われた。
とその時。
「見事だ、諸君」
影が現れた。
そこからサタナエルが姿を現す。
「サタナエル!?」
「フッフフフフフ……ずいぶん苦戦しているようだな。だが、これまでだ」
「これまでとはどういう気だ?」
「この国でやるべきことはやった。もはやここに留まる必要はない。さて、それでは我々は去らせてもらおう。さらばだ」
「待て!」
「セリオン、行くな!」
セリオンが大剣を振りかぶった。
セリオンの剣は空振りした。
マグノリアは闇の霧の中に消えた。
「逃げた、か」
「今の私たちではマグノリアを倒せなかっただろう。退けただけでも成果だ」
「そうですか。マグノリアは消えたのですね?」
クリスティアーナ女王がセリオンたちに告げた。
「マグノリアとはいったい何なのですか?」
アンシャルが一同を代表して質問する。
「古代の地層から発掘された怪物と聞いています」
「私たちは何とか退けることに成功しました。ただ、マグノリアは消えましたが……」
「せっかくのシュヴィーデン滞在が台無しになってしまいましたね。あなたがたはこれからどうするのですか?」
「私たちは今日でこの国を去ります」
スルトが答えた。
「そうですか。それでは良き帰郷となることを祈っています」
こうしてシュヴィーデン滞在は終わった。




