3:神の使いと予期せぬ出来事
◆とある貴族の侍女の証言
「旦那様のベッドメイクをしていた時だったかしら…今話題になってる神様の声が聞こえたの。
暫く話を聞いてたら、貴族である旦那様の食料を接収するとか言ってるじゃない。
私慌てちゃって、急いで食料庫まで走ったのよ。そしたら黒い靄みたいなのが見えて、食料が宙に浮いてるのよ!
私びっくりして、手に持ってた箒を振り回したわよ!でもヒョイヒョイかわされるの!その瞬間、ピカッと光ったと思ったら、手に持ってた箒がボロボロ崩れて、私も塵になるのかと思って目をつむって悲鳴をあげちゃった。
気が付いたら食料庫には、僅かな食料しか残ってなかったのよ…
あの靄は…蠅?かしら、虫みたいだったわ。あの神様とか言ってたのは、悪魔よ!蠅の王ベルゼブブだと思うわ!」
◆◆◆
「なんだよ蠅の王って…俺の名前はミヒカリノミコトだろ?」
『おかしいですね…。人々は、神である貴方を、涙を流しながら感謝する予定でしたのに…』
「下せぬ!神の雷を落としてやろうか?」
『私利私欲に走るのは禁止と自分で言ってましたよ。』
「神はつれぇわ」
『私が台本を書いていれば…悔やまれます!』
ルナは、机を叩いて悔しがった。
「んじゃ、ルナ…次の一手は?」
「そうですね…貴族の力は未だ大きいですが、大多数を占めるのは、やはり一般大衆です。それを味方に付けましょう。
ナノさん、人々は今、何を求めていますか?」
『人々は労働を再開しています。ヴィンデミアは農業、ノヴァーレは工業が主な産業です。しかし、その二つは王の死去以降田畑は荒らされ、工業は需要の停滞で大打撃を受けています。
それを手助けしましょうか』
「その二つに肩入れするのは、平等ではないのでは?」
『農業が復興すれば、食料危機はなくなるでしょう。工業が発展すれば、瓦礫にまみれた町並みも徐々に元に戻ると思います。平等とはいえど、優先順位は必要かと』
「なるほど…」
『それと…イメージの悪いミヒカリノミコトのイメージアップ作戦も開始しましょう。そのために、神の使いを降臨させます。』
「神の使いって?」
『ルナです。』
「え?」
『以前から、響が俺の天使と言ってましたし。
身バレ防止のため、ルナにはコスプレをして貰いますが、まぁ勝算はあります。』
「身バレ?コスプレって何ですか?」
「まぁ、身元がバレないように変装するって事だよ。」
「分かりました。響さんのお手伝いさせてください!」
◆◆◆
◆ある農民の証言
「俺は以前、麦とか野菜を作ってたんだよ。でも王様が死んじゃって、暴動が起こってさ、うちの麦畑の麦も根こそぎ持って行かれちゃったのよ…
廃業しようかなと思ったけど、親父が残してくれたしさ、新しい神様は自立しろとかいうじゃん。
やっぱり、人間腹が減ると悪いことばかり考えちまう。俺が出来るのは、みんなの腹を満たしてやる事だけだなと思ってさ。
荒れた田畑を、また耕してさ、種まきしてたの。そしたらさ、凄く美しい声が聞こえてきたのよ。」
『私は神ミヒカリノミコト様に使える大天使イリスです。皆様の心に向かい、直接話しかけております。
神は、復興に立ち向かう人々のことを案じております。そして、私に人々の手助けをせよと、お慈悲をくださいました、神はなんとお優しいのでしょう。
復興には、まず食料自給率をあげる必要があります。田畑に私の加護を授けました。食物は驚くべき速度で実るでしょう。
人々の生活環境改善には、工業の力も必要でしょう。彼らの使う道具に、期間限定の加護を授けます。鉱石が驚くべき早さで掘れるようになります。他の職業の方々にも、順次加護を授けていきます。
皆様、復興のために一致団結して励んでください。私は、いつでも貴方達のそばで見守っています。』
「いつの間にか俺は泣いていたよ。神様は俺の努力を見ていてくれたんだなって感じてさ。
そしたらさ!イリス様が目の前に現れてくれたのよ!美しいその姿に、見とれてたね!
街でその話をしたら、俺みたいに努力してきた人達の前にだけ現れてくれたみたいでさっ!
俺たちのアイドルだよ、イリス様は!その場で、ファンクラブを設立したよ。
んで翌日よ!今日もがんばるぞーってなもんで、畑に行ったらさ、実ってるのよ!昨日、植えた野菜とかさ、麦とかさ…もうびっくりだよっ!
気が付いたら、地面に跪いて神に感謝を捧げてたよ…」
◆◆◆
『大天使イリスの人気、爆上がりですよ。巷では、イリスの肖像画が大売れとの事です。人々に心の余裕が出来てきたと言うことですね。』
「本当に良かったですね!今度、人形も作ることになったと聞きましたよ。」
「ミヒカリノミコトは?」
「『えっ?!』」
「ミヒカリノミコトの肖像画は?オフィシャルグッズの依頼きてないな…?
俺のイメージアップ作戦だったよね?ナノ説明を求める!」
『ニャー』ゴロゴロ
ナノは喉を鳴らしながら、ルナのそばにいく。
「あらあら、可愛いわね~。ご飯でもあげましょうかね。」
ルナは親戚のおばちゃんみたいな仕草で、ナノの頭を撫で、台所へと消えていった。
そして、尻尾をピンと立てて、ルナの足に頭を擦り付けながら、ナノも付いていった。
俺は一人、ミヒカリノミコトの何が悪かったのか、悩み続けるのだった…




