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第13話 祈りの花が咲く夜に
聖都ルメナ。
神殿が最も力を持つ、光の都市。
その正門前に、一人の女が立っていた。
灰色の法衣。首には焦げた銀の首輪。
かつて“巫女”と呼ばれた者――エリシア=ノクス。
「この地には、もう祈る者の声は届かない」
静かに両手を広げる。
その指先から、黒い花弁が散った。
空に舞い、陽光を遮り、やがて夜のような闇を呼ぶ。
神殿の使徒が叫ぶ。
「お前は神を汚す者! 即刻排除せよ!」
しかし、エリシアの背後に現れた魔獣が一吼えすると、
神殿の台座が真っ二つに割れた。
「神は、信じる者の中にいる。
けれど、“見捨てられた者”が信じる神は、誰が守るの?」
民衆は混乱した。
けれど、神殿から追放された元修道士や、飢えた孤児たちが、
一人、また一人と彼女のもとに集まり始めた。
「私は、あなたたちの“信仰の自由”のために立つ」
その宣言に応じるように、
神殿の外に黒い祈祷堂が生まれた。
それが、神を否定せず、信仰の形を奪わない――**“黒の教団”**の始まりだった。




