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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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病状変化 10

 薬が強くなり、放射線治療が続いている関係で、最近は特に体力的に厳しい状態が続いてる。この様子が治療の副作用ならまだ良いけれど、癌の進行が原因なら辛い。だが、私には実際が分からない。先生も両親も何も言ってくれない。私に余計な心配をさせないためだろうが、実際に苦しむのは自分だ。私は本当のことが知りたい。今、どんな状態で本当に癌が治り、退院してこれまでの生活に戻れるか、それが分かれば今感じていることは我慢できる。しかし、何も分からないという状態では気力が続くかどうかを心配している。

 先日、また吐血した。これまでよりも量が多い。腹部の不快感や痛みも増しているように感じている。でも我慢している。特に両親や坂本には弱音を吐いていない。言ってしまえば少し楽になるかもしれない。でも、それで周りの人が苦しむのが嫌なのだ。

 そんなことを考えているところに母がやってきた。

「おはよう、今日、調子はどう?」

 いつものように聞いてきた。

「元気よ、ありがとう」

 私はいつものように返事する。

 しかし、私の様子を見ればそれが違うことは分かるはずだ。最近、目に見えて体重が落ちている。ベッドから降りて歩くこともままならない。最近は用を足すことも看護師さんに手伝ってもらい、病室で済ませている。

 最初の頃、とても恥ずかしかった。だからきちんと歩いてお手洗いに行きたかったが、それも難しいほど足腰が弱り、見た目も骨と皮だけ、といった感じになっている。ウェルナー症候群の関係で老けて見えていたところに体力の低下が重なり、本当にお年寄りのようになっている。しかも、臨終が近い人のようなのだ。本当にこのまま亡くなるのかな、という気持ちが心の奥底にあるが、言葉だけは元気なフリをしているというのが最近だ。

 午後になると坂本が見舞いにやってくる。その時はもっと元気なフリをしている。坂本の前では弱音を吐かない、弱いところを見せないようにしているのだ。そして、楽しくなるような話ばかりしている。

 いつもの時間に坂本がやってきた。

「どう、体調は?」

 坂本も母と同じようなことを言う。見舞いだし、開口一番の言葉としては至極当たりまえの言葉だ。そしてそれに対する私の返事も決まった言葉になる。だが、そこからは毎日異なる。

「この前の中間テストの結果が出た。さくらちゃんは僕の成績のことを心配していたでしょう。でも、大丈夫って言っていたよね。それが証明できた。全ての科目で前回を上回った点数だった。特に数学は満点に近かった。いつも見舞いに来ることを気にしていたみたいだけど、これで安心できた? さくらちゃんの頑張りに比べたら大したことはないけど、パワーをもらっているからできたんだ。今回の平均点、前回よりも低かったようだけど、そういう中で上回ったことに、先生も驚いていたよ」

「敦君、すごい。その調子なら志望校、受かるね。さすが。私もパワーをもらった。元気になるからね。一緒に勉強しよう。その時はよろしくね」

「もちろんだよ。そうできたら僕、もっと成績が上がるね、間違いなく」

 私たちはそういう話をしながら明るい雰囲気になった。

 母は私たちが楽しそうな話をしている時、その場を離れた。

 私は母が気を利かせてくれたものと思っていたが、実は主治医から呼ばれていたのだ。先日の吐血の後、また検査があり、そのことで話があったのだ。その時間、実は父も呼ばれていた。


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