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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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病状変化 6

 数日経った。私の気持ちは前向きのつもりなのだが、身体の方が思ったようにならない。ますます痩せたし、抜け毛も多い。毛糸の帽子は欠かせないアイテムになっている。坂本は私のそういう姿を見ても嫌な素振りは全く見せない。それどころか私の手を握ってくれたり、咳き込んだ時などは背中を擦ってくれる。その度に私の心には申し訳ないという気持ちと感謝の念が沸き上がり、心の中では涙と喜びが同居している。

 先日、3度目の吐血があった。今度は量が多かった。母がいる時だったので、とても心配そうな顔をしてナースコールのボタンを押していた。すぐに看護師さんがやってきて、必要な処置をやってくれた。有難いという気持ちで一杯だったが、母を心配させたことが気がかりだ。母は私のことを最優先に考えてくれているのが分かる。最近は病院にやってくるのに化粧もしていない。家事もこなさなくてはならないので、時間が精一杯なのだろう。

 もう一つ心配なことがある。私が以前拾ってきた子猫だ。私が面倒を見るということで我が家の一員になったのだが、こんな状況になって、そのことも母の仕事になっている。私はお荷物なのかな、ということを思うこともある。

 でも、母はそういうことをおくびにも出さない。具合が悪くなってくると、今後が心配になり、ちょっとしたことも気がかりになる。

 そう思っている時、母がやってきた。

「おはよう。今日、調子はどう?」

 見れば想像はできると思うが、私は精一杯元気なふりをする。

「うん、今日はちょっといいみたい。食事も全部食べたよ」

 確かに出された食事は全部食べたが、それは元気になりたい一心で無理したものだ。美味しいと思って食べたのではない。でも、本当のことは言えない。事実として言っただけだった。

「そう、それは良かった」

 母も私の言葉に合わせて言ったが、本当にそう思っているかどうかは分からない。でも、私の言葉に「それは嘘でしょう」なんてとても言える訳はない、という心がそうさせるのか目が何だかうつろに見えた。

「ところで最近聞いていないけど、ミーちゃんは元気?」

「元気よ。ミーちゃんもあなたに会いたがっているみたい」

 この時は母も少し表情が違ったように見えた。私は家族に子猫が加わったことが癒しになっているのかなと思った。

 でも、母にそのお世話を頼んでいる。私だけでなく猫の面倒も見るというのは大変だろう。

「そうか、ミーちゃん、元気か。私もまた一緒に遊びたいな。ねえ、退院したら坂本君をウチに招待しても良い? ミーちゃん、見せてあげたいから」

「もちろん良いわよ。歓迎するわ。坂本君にはお世話になっている。彼もミーちゃんのことを知っているわけだから、大きくなったところを見ると喜ぶと思うわ。優しい子だもの」

 私はその言葉に笑みを浮かべた。

「ねえ、お母さん。お願いがあるんだけど、ミーちゃんの動画、撮ってきてもらえるかな。私のスマホに入れて見てみたい。今まで自分の身体のことばかりを考えてすっかり遠ざかっていた。駄目ね、私。ミーちゃんのお母さん失格ね」

 そういうことを話していたら、看護師さんが部屋に入ってきた。

「さくらちゃん、また検査室に来てもらえる?」

「また検査ですか?」

「ごめんね。何かあったらということで先生がこまめに体調をチェックしているの。身体に負担がかかることじゃないから安心して。横になっているだけで良いから」

 そう言うと私はストレッチャーに移動させられて、検査室に連れて行かれた。

 30分もしない内に病室に戻り、その後しばらくして昼食となった。

「今日、お弁当を作ってきたから私もここでお昼をいただくわ」

 母が言った。最近は私が食事する時は外で食べることが多かった母だが、この日は違った。

「私が本当にちゃんと食べているか確認したいの?」

 私は母に尋ねた。もちろん、言葉通りの気持ちで言ったのではなく、ちょっとしたいたずら心からだ。母がどんな表情をするかを確認していたが、思ったよりまじめな顔をして否定した。

 思わぬ反応に私が驚き、本心ではないと言った。母は苦笑したが、この日は久しぶりにミーちゃんの話をしたことで少し心が癒され、冗談ぽいことも言えたのかもしれない。

 そんなことを話していると、坂本からメールが届いた。見ると、今日は遅れるという連絡だった。私は何だろうと心配になったが、来た時に聞いてみることにした。


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