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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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再度の検査入院 9

 次の日、母はいつもの時間に病院を訪れた。しかし、最初に行ったのはナースステーションで、主治医と会える時間を確認した。昨晩、父と相談したように、今度は両親揃って治療に移った時のことを確認するためだ。病院側としてもこういうことを勝手に行なうことはできないので、近々、両親に話をするつもりだった。

 話は昨日と同じく5時ということになったので、父にもそのことを連絡した。その時間に病院に来るという。

 しかし、ただ話を聞くだけではなく、その前に見舞いも予定している。それで父は4時ごろ訪れると母に話した。

 いつもと違う行動をすることで、私が変に思わないかという理由を考えることになったが、仕事の関係で得意先回りが増え、見舞いの時間を捻出できるようになった、ということで口裏を合わせるつもりでいた。勘の鋭い私のことを考え、先読みしてのことだった。

 病室に入ってきた父。母はわざとらしく、予定外の父の見舞いに驚いてみせた。

「あら、あなた、どうしたの、突然。びっくりした。仕事、大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だよ。この前、抱えていた案件が一段落したと話しただろう。この近くにも取引先があってね、そこへの挨拶に来たんだ。これからそういうことも増えるようだから、時間が取れたら俺も見舞いに来るよ」

「お父さん、ありがとう。思ってもいなかった。土曜、日曜だけしか来れないと考えていた。お母さんは毎日来てくれるけど、お父さんとは会える日が少ないからね。嬉しい。でも、もうそろそろ検査も終わるだろうから、そうしたら退院だよ。お父さんは仕事があるんだからそっちを優先して」

「ありがとう。そうさせてもらうよ。でも、来た時は歓迎してくれよ」

「病院に来るのに歓迎なんて変だよ。健康で普通に生活していたら縁が無いところじゃない。今の私には大切なところだけど・・・」

「それはそうだな。ところでさくら、体調は?」

 私は父のその言葉が出た時、母の目を見た。私が昨日話した夢のこと、父に話したのではないかと気になったのだ。母ならば同性ということで話しやすいが、父は親といっても異性だ。恋の話をするには照れくさい。だから母の顔を見て確認したが、何も話していないといっているかのように、首を軽く横に振った。

 その会話の様子を見ている同室の人たちが昨日の会話を聞いているため、話したらといった顔をしている人もいたが、隣の人が首を横に振って話を止めた。私と母はその様子の理由を理解したが、父だけがそのことについては仲間外れになっている感じになっていた。

 ただそういう雰囲気にもまんざらでない様子の父だった。親子でも年頃になると、娘と父親の間で会話が無くなるということはよくある。私の家の場合、割とオープンなのでいろいろと話しているつもりだが、さすがに恋の話というのはたとえ父であっても話しにくい。その内、母から話が出るのではと思ってはいるが、ここでは控えておこうと私は考えた。

 それから5時前まで、他愛のない話に終始したが、5時近くになった時、両親は帰るといった。主治医の先生との話があるからだが、そのことはさくらは知らない。夕方ということで帰るのだろうといった認識だった。私にはガンという認識が無いので、両親が帰る際、病室のドアのところまで行って見送った。

 病室を出た両親は、1階にある主治医の診察室のところへ行った。

≪日記≫

『今日、お父さんが見舞いに来てくれた。平日だったのでちょっと気になったけれど、仕事で近くに来たからということで安心した。

 近い内に退院できるはずなので、家でゆっくりした時に坂本君のこと、話そうかな。

 でも、やっぱり照れ臭い。夢の中でも進展があれば話すかもしれないけれど、今は私とお母さんだけのことにしておこう。

 また、夢の続きが見られればいいな。

 今日も坂本君の夢を見ることができますように。』


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