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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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再度の検査入院 6

 坂本が見舞い来てくれた次の日、母は私の顔を見てその表情にいつもと違う様子を見た。

「さくらちゃん、今朝はとても嬉しそうね。何か良いことあった? ・・・あっ、そうか。昨日、坂本君が来てくれたんだものね」

 母は笑顔で私に話しかけた。

「うん、それもあるけどね・・・」

 私は少し思わせぶりな返事をした。

「えっ、それだけじゃないの?」

「エヘヘ。そうなんだ」

「何? お母さんにも教えてよ」

「・・・うーん。良いけど笑わないでよ」

「そんなことないわよ。さくらが嬉しいことは私にとっても嬉しいことだから。女同士、嬉しいことは共有しましょう」

「実は昨日、坂本君の夢を見たんだ」

「えっ、すごいじゃない。その様子だと良い夢よね。教えて教えて」

 私たちの会話は同室の人にも聞こえている。無関心を装いつつも、耳が私のほうを向いていることを感じている。立場が変われば私も同じことをしていると思うが、私はその内容を話し始めた。

「今、私、見た目がおばさんじゃない」

 私の第一声が一見、負の感情に聞こえる言葉だったので、母の表情が瞬間、曇った。だが、続く言葉でそれが一層された。

「でもね、夢の中ではみんなと同じ高校1年生なんだ。同じ青春、真っただ中だったんだよ」

 私はここまでの言葉を笑顔で話したのだ。母もその勢いにつられて表情が明るくなった。

「そこではちゃんと2人っきりで話をしていたよ。昨日、坂本君が1人で見舞いに来てくれたことがそんな夢につながったんだね」

「そう、楽しい夢だったんだ。もっと聞かせてくれる?」

「ダメ、恥ずかしい」

 照れる私を満面の笑顔で見ていた。

「じゃあ、話す気持ちになったら聞かせてね」

「分かった」

 そう言うと私は毛布をかぶって顔を隠した。

 母はその後、少しして病室を出ていった。主治医のところに検査のことや今後のことを尋ねるためだ。私の様子を見て、現在の状態と今後のことをきちんと確認しなければ、と考えたのだ。親であれば子供のことを思うのは当たりまえだ。同じ女性ということもあり、たとえ夢であっても娘の恋の話を聞かされたら、本当にそういう時間を持つことができるのか、その可能性を確認したかったのだ。

 でもその反面、その願いが叶えられなかったら、という思いもあった。その気持ちが足を止めるシーンもあったが、親としてきちんとしたことを知り、少しでも娘に充実した時間を過ごしてほしいと考えた。

 母も医者から直接聞いたわけではないが、ネットなどで肺ガンについて調べていた。他のガンに比べると亡くなる人の数が多い。医者は当人への病名の告知はしていないが、父母は知っている。今回の入院も検査のためになっているが、どれくらいの希望があるかということを意識しているかで生活も違ってくる。その際、親として、同じ女性として、何ができるかをはっきりしたかったのだ。

 ナースステーションで主治医からの話を聞きたいという相談をした。

「本日であれば5時くらいなら大丈夫だと思います」


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