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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
19/92

病院にて 2

 診察室では医者と母が私のことで話をしていた。

「先生、さくらの容態ですが、大丈夫でしょうか?」

「骨の問題自体は時間が経てば治ります。ただ、先日お話ししたさくらさんが患っているウェルナー症候群という病気の場合、老化が早く進行しますので、骨の脆さもその中の危惧されるケースになります。もし、本当の年齢通りの身体であれば骨にひびが入ることはなかったかもしれませんが、日常生活には注意が必要です。だからといって運動をしないと進行が速くなる可能性がありますので、適度な運動はしなければなりません。特別な負荷をかけない範囲での日常生活、といったところでしょうか」

「はあ」

 母は力なく返事した。入院した時に医者から病名を聞いた時には実感が湧かなかったところがあったが、今回の骨のひびという現実を見た時、病気のことがより現実的に感じられるようになっていた。しかし、同時にさくらの心の負担を少しでも軽くするために、自分には何ができるのだろうか、という思いが頭の中を駆け巡っていた。

「お母さん、定期的な検査で進行具合を確認しながら、私たちもできる限りのことをやっていきますので、一緒にさくらさんを支えましょう。今、お母さんがしっかりしないとさくらさんはもっと落ち込みます。なるべく体調のことには触れず、明るく接して下さい。この病気の場合、患者さんは精神的にも脆くなりやすいので、話題も選んでください」

「・・・はい」

 医者の話を伏し目がちに聞いていたが、母は親としての気持ちが固まったので、しっかりと医者の目を見て返事した。

 そして診察室を出た母は私のところにやってきた。

「先生とどんな話をしたの?」

「さくらは若いから骨は早くくっつくだろうって。良かったわね。でも、それまでは不自由かもしれないけど、ギブス生活になるわね。ひびが入っている側はしばらく使えなくて不便だろうけど、利き腕の右ではなく左だったので、何とかなるわね。お母さんも手伝うから。学校に行っている間はさくら一人で何とかしなければならないけど、強い子だから大丈夫よね」

 変に私を力づけようとしているような言い方に聞こえたが、こんな状態だから言ったのだろうというつもりで聞いていた。

≪日記≫

『病院での話、ひびということには驚いたけど、1ヶ月くらいで何とかなりそうということで安心した。

 母が少し心配性になっているような気がするけど、大丈夫かな。でも、私が元気でいることで安心してもらおう。高校に入学して、まだ実感が湧かないし、楽しい思いもしていないことが残念だけど、これから盛り返すぞ。

 この怪我、天田さんも心配しているかな。もしそうだったら、少し可哀そうな気がする。骨にひびが入るなんて思ってもいないだろうから、明日、大丈夫ってこと、伝えよう。なんだかんだ言っても、同じクラスの人だもの。仲良くやらなきゃ、学校が憂鬱になる。楽しい高校生活のため、私、頑張る。

 ミーちゃんが私のギブス姿を見て絡んでくる。心配しているのか新しいおもちゃと思っているのかは分からないが、そのことで痛いとかはないので無邪気な姿を私も楽しんでいる。ミーちゃん、ありがとう』


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