エピソード1.異世界転移❹
「あ、そいつ起きたんだ」
二人の女性のうちの一人、赤髪ツインテールの子が口を開いた。
「あんた異世界から来たでしょ?違う?」
「そうだけど」
「なら、早速だけど付いて来てもらうわ」
心なしかぶっきらぼうな言い方に感じる、それに彼女の表情は凛としていて、気の強そうなイメージが見てとれる、まぁ美少女に変わりはないのだが。
「え?付いて来いって、どこに?」
「王様が呼んでるのよ」
王様?もしかしてアレか?俺のこの能力で世界を救ってくれ的なイベントなのか?今俺めっちゃ主人公っぽいじゃん。
「あのっ……も、もう具合は大丈夫なのですか?」
エリーゼが心配そうに尋ねてくる。
「あぁ、おかげさまで。ありがとな」
「い、いえ…私は何も…」
謙遜して俯くエリーゼの瞳はどことなく寂しそうに見えた、しかし、俺の主観が入っているのであろう事は十分に承知している。
「ちょっと早くしてよ?行くの?行かないの?」
赤髪の彼女はイライラと足踏みをしている。
「行く、行くよ、行きますよ!」
ーー介抱してくれたエリーゼに礼を言い、彼女達の後に続き王様の元に向かう事にした。
王城に向かう道中、街の人達にめちゃくちゃジロジロと見られ、めちゃくちゃヒソヒソと噂話をされている。
まぁ、異世界者だからね?服装とか変わってるもんね?分かるよ、みんなの気持ちすげー分かるんだけど、なんか客寄せパンダにでもなった気分だ。
「当たり前でしょ?みんな異世界から救世主が来るのをずっと待ってたんだから、そりゃ注目は浴びるわよ」
「まぁ、分かるっちゃ分かるんだけどさ」
てか何?今異世界から救世主が来るのをって言ってたよね?敢えて突っ込まなかったけど、やっぱりアレじゃん?俺が世界救っちゃうフラグめちゃくちゃ立ってんじゃん!
「何ニヤニヤしてるのよ?かなり気持ち悪いわよあんた?」
一緒に歩きながら顔を覗き込んでくる赤髪ツインテール。
うん、どうやらまたニヤついていたらしい、人前だと恥ずかしいからマジで気を付けよう。
てか、アレだな、この赤髪ツインテールは結構口が悪いな、初対面でこんなズバズバと人をdisって許されるのは基本的にツンデレヒロインだけだ、そしてこの赤髪ツインテール…この名称長いな、赤ツインテール、赤ツインテ、赤ツイン赤ツイン…レッドツイン、レッドヘアー、あーもうレッドでいいや、そう要するにレッドは明らかにツンデレヒロイン枠に入る属性の持ち主だろう、そうなのだが先程も初対面でこんなズバズバと人をdisって許されるのは基本的にツンデレヒロインだけだと言ったが、そう、基本的にはなのだ、正しく表現すれば彼女の攻撃的な言動を許せるのはツンデレ萌え属性を持っている戦士達だけだ、だが、俺は生憎と言ってツンデレ萌え属性を持ち合わせていない戦士!どちらかと言えばさっきのエリーゼちゃんのような正統派ヒロイン萌え属性を常備している戦士なのだ、つまり何が言いたいのかと言うと、結構コイツの言動にイラってくるよね?って話。
「てか、あんた名前は?」
「あんたじゃねーって…山本一郎」
「ヤマ、モトイ、チーロ?」
「山本一郎!」
「え、ちょっと難しいわよ!ヤマモ、ト、イチロー?」
「片言の外人かよ!」
「え?何?また間違えた?ちょっと、もうちょっと簡単な呼び方ないの?本当に難しいんだけどあんたの名前!」
「あー、もう一郎でよいいよ一郎で」
「イチロー?イチローね?うん、これなら簡単ね」
最後にレッドは自分自身に言い聞かせるよう小声でもう一度『イチロー』と呟く、そしてしっくりきたのかコクンと頷き笑った。
レッドの初めて見せる柔らかい表情に思わず見惚れそうになる、危ない危ない、これが俗に言うツンデレっ子の得意攻撃『ギャップ攻め』か、危うくときめく所だったぜ、流石異世界!ツンデレっ子のレベルも高いぜ。
「私の名はティティス、戦士よ」
レッド、もといティティスは自信に満ち溢れた表情で名を告げた、そしてずっと俺達に同行しているが一言も喋っていないもう一人の彼女の方に手をかざし言葉を続けた。
「それで、この子が勇者よ」
ほー、なるほどなるほど、戦士ティティスに、勇者ね、オッケーオッケー了解。
「……って、え?名前は?」
「いやだから、言ったじゃない?この子は勇者よ!」
ティティスは再びドヤ顔でもう一人の彼女を紹介した。
勇者と紹介された子は俺の視線に気が付くとコクンと軽く会釈をして、特に言葉は発さず終了。
容姿は白髪でボブくらいのショートヘアー、何を考えてるのか分からない雰囲気を醸し出している。
正直俺が居るのにもう既に勇者がこの世界に居るんだ?的な疑問もあったのだが、とりあえず名前を教えてもらわないと何かスッキリしない。
「あー、うん、勇者なのは分かった。で、勇者で?この子の名前は?」
「は?だから勇者よ!」
「いや、だから名前だよ!もしかして、勇者で、勇者って名前なのかよ?」
意図が伝わらず少しイラつきながらティティスに問いただす、すると彼女はため息を吐き再び言葉を続けた。
「そうよ?当たり前じゃない。だから彼女の名前は勇者なの!」
まじかー!何それ、キラキラネーム的なアレ?親御さんの顔が見てみたい。
「………まじで、君の名前は勇者、なの?」
恐る恐る勇者に尋ねる、すると彼女は初めて言葉を発した。
「はい」
表情一つ変えずただ一言彼女はそう呟いた、その後何か続けて喋るのかな?と思い待っていたのだが、本当にその一言だけで終了してしまった。
本当の本当にこの子は勇者って名前なようだ。
この異世界の設定大丈夫ですか?思わず心の中で突っ込んでしまうくらいだ。
「ほら、着いたわよ」
ーーそんなこんなでいつの間にか王城の前まで到着していた。




