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エピソード6.俺の異世界生活がこんなに順調な訳がない!❷

魔の森に入ってから何日目かの夜、俺は二人が帰って来る間一人で焚火の番をしていた。


「あー……まじで今日は疲れたぁ…」


今日は夜明け前からずっと起きていたって事もありもう既に体力が限界に近かった。

あの二人は何処に行ったかと言うと『水浴び』である、この周辺は凄く水辺が多い場所で、しかも勇者が調べたところ水辺には珍しくモンスターが全然居なかった事から女性陣は夕食後、連日の野宿による疲れを癒しに行っているのである。

そして話を最初に戻すが、一足先に水浴びを終わらせていた俺は二人が帰って来る間一人で焚火の番をしていたのだった。


『バチバチ』と鳴る焚火の音を聞きいてるうちに段々と睡魔が襲ってくる、あの二人が帰って来るまで何とか頑張ろうと気張っていたのだが、それでも睡魔には勝てずに、ふとうとうとし出してしまったその瞬間、あの男は現れた。


「おい」


突然男の声が聞こえ、重たくなったまぶたを上げる。


「…あ、れ?」


焚火の向こうには俺と面と向かい合うように座る黒騎士の男の姿があった。

ちょっとうとうとしていたとは言え、全く足音が聞こえなかった、まるで突然そこに現れたかのように黒騎士の男はそこに腰掛けている、一瞬夢かと思ってしまったがどうやら夢ではない。


「…あ、え?…って、え!?誰!?」


あまりの驚きに思わず後ろに仰反ってしまった。

俺の反応に黒騎士の男は眉一つ動かす様子もなく、静かに低い声で呟いた。


「…世界は悲劇を求めている」


「…は、はぁ?」


騎士風なファッションを着た吟遊詩人か何かだろうか?急にポエム的な事を呟かれてしまい、正直ポカンとしてしまう。


「…正確には求めていた、だ。…世界は終わりを求め出し傍観者をこの地へ呼んだ」


ちょ、何なんだこの人?まじでさっきから言ってる意味が全然分からないのだが。


「あ、あのー。…何かご用でしょうか?今晩一緒に泊めて欲しいのでしたら、仲間に一度聞いてからじゃないとお答えできなっ……うっ!?」


突然この男から漂う強烈な死臭が鼻に付き急に吐き気に襲われてしまう。

やばいやばい…気持ちが悪い、まじで吐きそうだ…つかちょっとこの男やばい奴なんじゃないのか?俺は口元に手を抑えながら男の方をチラチラと確認する。


「…お前が頭の中で考えているそんな事など出来やしない。お前は何もできない、全ては全部世界が終焉に向かい作り出した戯言に過ぎないのだから」


「…つ、つかっ…アンタ何者だよっ…!?」


吐き気を抑えながらも男に質問を投げ付ける。


「…誰かに語るような名など持ち合わせていないが、強いて言うならば、俺は観測者(かんそくしゃ)と言ったところか」


ますます男の言っている意味が分からなくなった、観測者?は?何なんだまじで?設定なのか?この男厨二でも拗らせてるのか?だとしてもまじで危険な男かも知れない。


「…忘れるな、お前の役目は最後までこれを見届ける事だ」


「…………」


この男の言う言葉は全て意味不明だ、それにこの男の目、本気で何しでかすかわかったもんじゃない、ちょっとコレはあの二人に助けを求めないとまずい事になるかも知れない。


「おーい、イチロー!」


突然タイミング良く遠くから水浴びを終わらせたティティス達が帰って来た。


「お、おい!二人共早く来てくれっ!……この人まじで意味が分からなっ………えっ!?」


男の方を指差しながら俺はティティス達に声を掛けていたのだが、俺がもう一度男側の方に振り向くと、そこには既にあの黒騎士の男の姿はどこにも無かった。


ーーその場にはあの気持ち悪い死臭すら残っておらず、結局俺が『夢でも見ていたんじゃないか?』と言われるハメになった、それでも必死に会話の内容や、黒騎士の容姿とあの鼻に付く死臭について説明する、すると二人は突然顔色を変え始めた。


「……まさかとは思うけど…アンタが会ったって言うその男黒騎士(ダークナイト)かも…」


ティティスの呟きに勇者もコクリと頷く。


「ダ、ダークナイト…?」


「魔の森に出没する謎の騎士よ…彼に殺せないものはこの世にないって言われている空想の伝説みたいなもので…私は信じてなかったけど、前に兵士達の中でも魔の森で何人か見たって話は上がった事はあったわ…でも、その話はみんな凄い死臭を放つ黒騎士の男を見ただけとかすれ違っただけとかばっかりで、アンタみたいに直接話をした人は一人も居なかったわ…そうよね?勇者?」


「はい」


「…空想の伝説」


まるで都市伝説みたいな話だった、今の話ぶりからしたらティティスも半信半疑なのだろう…でも、俺はあの男と確実に会った、アレは夢なんかじゃない、二人は全然分からないと言うが『俺の鼻には未だにあの死臭がこびり付いている』それこそがあの男がそこに居た証拠で、あの男が空想や都市伝説なんかじゃないって事を証明していた。


「…まー、別に変な事された訳じゃなかったみたいだし良かったじゃない?それに、これは見た人達が広げている噂なんだけど、黒騎士(ダークナイト)を見た日は凄く運が良くなるらしいわよ?だから別に良いんじゃない?今日はラッキーだったって事で。ね?勇者?」 


「はい」


「なんじゃそりゃ…」


『今日のあなたの運勢は?やったー!〇〇座のあなた!一位です!ラッキーアイテムは黒騎士の男!彼と接触すれば今日一日更にハッピーに過ごせるでしょう!』


頭の中ではニュース風の星座占いお姉さんの声が響く。

いや、でもまさに今二人の中で俺とダークナイトはそんな扱いだった。

それに今日一日ハッピーって、もう今日終わんじゃん、意味ないじゃん。


「……はぁ…もうホントやだ、疲れたー」


今の話で緊張感が抜けたせいか、一気に疲労がこみ上げてきた、二人の定番なやり取りも含め色々な事に突っ込む事がしんどくなってしまい、俺は地面に寝転がる。

正直ダークナイトの件は全然釈然としない、最後のあの口振りからするとおそらくティティスは未だに半信半疑と言ったところだろう。

ダークナイトが何故俺の前に現れたのか?色々と考えてしまいそうになるが、今はもう疲れから何も考えたくなかった。

瞳を閉じて『バチバチ』と鳴る焚火の音だけに耳を澄ませる。

あー、これこれ、凄く落ち着く。

よく現代でも寝れない時は某動画サイトにある睡眠用焚火の音動画を流しながら寝たものだ。

でも、やっぱり生で直接聞く焚火の音は格別だなーなんて事を思いながら微睡の中に身をゆだねる。


「…ねぇ、寝るの?」


ティティスの声がやけに近くで聞こえ俺は重たい瞼を開けた。


「…うおっ!?」


俺の顔を覗き込むティティスの顔は本当に近かった、俺は完全に驚き思わず変な声をあげてしまう。


「剣の手入れの仕方教えようかと思ったんだけど」


「あ、あぁ…そうだったな。わ、悪りぃ…」


俺はティティスから顔を背け、返事を返してから起き上がる。

ビックリした、まじでビックリした、つか顔近いからっ!いくら仲間とは言え無防備過ぎるからっ!あなた女子なんだからもっと自覚もってくれよお願いだからまじでっ!


「…いやっ…やっぱりおかしい方は俺の方なの、か?」


小声で独り言を呟き、自分の方が過剰に意識し過ぎているのかと改めて思ってしまう。

勇者の方を見ると案の定俺の悶々とする様子を、まるで孫を見つめるお婆ちゃんのような表情で見つめていた。

俺は口パクで勇者に『だから違うって』と伝える、それだけで意味を理解したはずの彼女は相変わらず全然理解できていない様子でコクリと頷いた。


ーー熱心に剣の手入れの仕方を教えてくれるティティス、彼女はいつものツインテールをほどき、髪を下ろしている為いつもより柔らかく見える、そして凄く美人だ。


「…大丈夫?ここまでは理解できた?」


「お、おぅ!…まぁ、実際に自分でやってみねーとなんとも言えねーけど、何となく理解はした」


「それもそうね。…じゃあ今度は自分でやってみて?」


ティティスに剣を渡され、先程彼女に教わったやり方を実際に実行してみる。


「あ、そうそうそんな感じ…それで、そこを…ちょっと良い?」


ティティスは教育熱心で、本当に色々と丁寧に教えてくれる。

しかし、行程上どうしようもない事なのかも知れないが、中々に身体が密着してしまう状況が続いている。

これをする事前に『呪文を唱え』精神を強化して挑んできている俺でも、もう既に精神力のゲージは赤色に変わり『ピコンッ!ピコンッ!』とアラートが鳴り響いている状態だ。


「うんうん…そうそう…あっ、上手いじゃない?……それで、後は…」


くそー!今せっかく大事なところを教えてもらっているのに、こんなんじゃ集中できねー!

コイツだって全然寝てないのに、疲れてるはずなのにそれでも親身になって『俺のお願い』に熱心に応えてくれているのだ。

それなのに、いちいちティティスにドキドキして変に意識して全然集中出来ていない自分に段々と本気で腹が立ってきた。


「あっ…ごめんティティス、ちょっと一瞬いい?ごめん、ほんっと一瞬だけだから」


「…あ、え?…いや別にいいけど…?」


ティティスは指導を途中で中断させた俺を少し戸惑った様子で見つめている。


ーーチャンスはこの一瞬しかない!この一瞬で気持ちを切り替えろ!今のこの状況こそがおかしいのだ!俺は別に全然ティティスなんて意識してない!異性としても全然見てない!コイツは口が悪くて感じ悪い時もあるけど、それでも情に熱くて仲間思いで意外と優しい仲間だ!そう、仲間だ!俺はティティスの事は仲間として好きなんだ!友情なんだ!それを変に意識して、異性として見るなんて彼女に対して失礼な話だ!それでもまだ気持ちを切り替えられないのなら、初めてティティスに会ったあの日の事を思い出すんだ!山本一郎!あの時ほぼ初対面の俺に対して散々dis(ディス)ってきたティティスに付けた、お前が付けた『あだ名』はなんだった?あの頃の尖ってたお前が!ツンデレっ子に対しても容赦ないお前が付けた『あだ名』はなんだったんだ!?さぁ、今この一瞬で気持ちを切り替える為にもう一度あのティティスにこっそりと付けた『あだ名』を叫べ!


「レェェェェェェッド!!」


突然大声で叫ぶ俺にビクッとするティティス。


「………ふぅ」


額の汗を拭うフリをして、魂のシャウトの余韻に浸る。


「……ごめん、アンタ頭大丈夫?」


ティティスは本気でドン引きしている感じだ。

あー、その感じ!その冷ややかな目良いねー!サイコーだね!

俺のずっと抱えていた違和感はさっきの魂のシャウトと共に消え去っていったようだ。


「うっし!……あっ、ごめんごめん。もう大丈夫だから、続きをお願いしてもいいですか?」


俺はドラマで見るような爽やか営業マン風にお辞儀をして指導の続きを求める。


「…………まぁ、別に良いけど…」


しっくりきていない様子のティティスとは対照的で俺の心は本当に晴れやかなものになり、彼女の指導にもの凄く集中する事が出来た。


しかし、それが終わる頃には俺の身体は完全に悲鳴をあげていた、それもそのはず、最近身体を使うようにはしているが元々体力に自信のある方ではない俺に今日一日のようなハードワークは完全にキャパオーバーだった。


「お疲れ様。大丈夫?凄く顔色悪いけど…?」


さっきの件でドン引きしていたはずだが、それでもティティスは俺の顔色が悪いと心配そうに声を掛けてくれた、本当にコイツは良い奴だ。


「わ、悪りぃ…そろそろ寝るわ…お前も疲れてるはずなのに、本当ごめんな…」


「え、えぇ…私は大丈夫だけど。…本当に大丈夫?」


「大丈夫大丈夫…ははっ…」


ぎこちない笑顔をティティスに向け、俺は早々と眠る事にした。

めちゃくちゃ重くなった瞼を下ろしながら俺はふと思ってしまった。

やはり今から異世界に転移するかも知れないと思っている後輩達が居るとするのなら、先輩として俺は言いたい!やっぱり楽して、アレして、コレして、頑張ってーとか無理だからっ!今からランニングをして体力を付けておく事を強くオススメする!

【私の糞みたいな自己満小説を読んで下さっている親愛なる方々へ】


事前になろう小説に登録など作業が非常に面倒かとは思いますが、ブックマークや広告下側にある欄【☆☆☆☆☆】の星を押してポイントを入れて下さると本当に作者のやる気とモチベーションに繋がります、応援宜しくお願い致します!

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