エピソード1.異世界転移❷
ペチペチと乱暴に頬を叩かれる痛みで目が醒める、目の前には茶色い布に身を包んだ人達が物珍しそうに俺を見つめている。
生きてる、俺まだ生きてる。
俺を囲む人達の中に緑色の髪の少年の姿もあった、もしかしたら彼が俺をあの場から助けてくれたのだろうか?
「あ、あのっ…助けてくれてありが………え?」
少年に礼を言い終わる前に身体に違和感を覚え視線を落とす、俺はどうやらロープで柱に縛られているようだ。
うん、分かってる。
俺も流石にもう夢じゃない事は分かってる。
ここは、アレだな、異世界だな。
俺異世界転移って奴しちまったんだな。
「俺異世界転移って奴しちまったんだな!」
何となく声にも出してしまった。
意味は特にない、ただこの驚きを表現するのに声にも出した方がいいかな?とか意味もなくそう思っただけだ、だってずっと憧れてはいたんだ、夢の異世界生活、それにちょっと興奮しちゃっただけだ。
しかし、俺の今のこの声で皆さん一瞬ビクッてなっちゃったよね?ごめんね?脅かすつもりもなかったんだけど。
「あ、あのっ…あはは、何か俺…異世界から来ちゃったみたいで…あはは」
取り敢えず状況説明を。
うん、大概のパターンだとこれで理解を示してもらえるはず。
ちょっと変わった服着てるだけの普通の異世界者ですよー、全然恐くないですよー、だからこのロープ早く解いて下さい、まじで手が痛いんですお願いします。
ーーヒソヒソと俺を囲む人達は耳打ちをして何か会話をしている、どうやらかなりの小心者らしい。
俺はなるべく敵意がない事が証明できるようにニコニコと笑顔を作り、彼等からコンタクトがあるのを待っていた。
バチバチと焚火が薄暗い洞窟のような空洞を照らす。
暖かい、あの焚火のおかげで濡れた服も少しは乾いてるみたいだ。
うん、それにしても長い。
彼等のヒソヒソ話タイムはかなりの時間を要していた。
チラッと緑色の髪の少年と目が合い俺はニッコリと微笑んで見せた、しかし少年は怖かったのか大人の背中に隠れてしまった。
あれ?と、ここまで来て何か凄く違和感を感じた。
彼等の服装を見る、茶色い布に身を包んだ露出の多い格好だ、そう露出の多い。
ーー物思いに測っている俺に突然族長っぽい人が語りかけてきた。
「マャニカニアタマナキア?」
彼の言葉を聞いて俺は言葉を失ってしまった。
焚火に照らされる彼等の姿。
茶色い布を身に包んだ彼等の衣装は露出の多い服装だ、そう薄暗くてよく分からなかったが彼等の着衣から露出させている膝、太腿、脇腹、てか全身紫色だ、見間違いなんかでも何でもなく紫色だ、そして正直気が付いていたけど、気が付かないフリをしていたが彼等の頭部にはツノのような何かが生えている。
そして何より、そして何よりだ!俺が声を大にして言いたい事は。
「いや、言葉通じねぇぇのかよ!?」
ーー俺の絶叫でビクッと彼等は警戒してしまったのか、暫く間を置いた後に再び族長が今度は強めに語りかけてきた。
「マナヌュガニカサアダバァニサ!?」
え?何?何か怒ってる?ちょっと口調に圧を感じたんだけど、怒ってる?俺が言語について突っ込み入れたから?つか、何なの?こんな異世界転移ってあんの?
ある日目が覚めたら異世界で、美少女に世界を救ってくれと頼まれて俺が世界を救う。
そんな現実が来る事を妄想しながら退屈な日常を過ごしていた。
そして今、その夢が叶ったはず、なのだが。
「ガルゥガダニューガザァ!!」
族長以外の人達も何故か雄叫びを上げ始め、彼等は突然狂ったように身体をピクピク震わせ始める。
え、何?何なのコレ?まじでやばくね?この人達やばくね?つか人なのか?もう意味が分からねぇ。
これが夢では無く現実で、異世界転移だとしても、こんな不幸な事が続くってありなのか?自分の不運さにだんだん泣けてきた。
俺が、俺が憧れてた異世界はこんなはずじゃねぇって、可愛い美少女にひたすらモテて、あんな緑色の化け物なんか無双して軽く世界とか救っちゃって、英雄になって更にみんなからチヤホヤされてヒロインのフラグ立てまくってハーレムエンド迎えり、最後に現実世界に戻る時にヒロインに行かないでと泣き付かれたりする王道で鉄板の、俺の、俺が憧れてた…。
「俺が憧れてた異世界生活を返してくれぇぇえ!」




