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エピソード3.名ばかりの救世主❺

勝てる勝てる勝てる勝てる!俺は勝利を確信したまま地面に落下した。


「勇者!頼む!!」


この隙を逃さないと、勇者は口をパクパクさせ詠唱を唱える、いつもとは違う魔法なのか剣が真っ赤な輝きを放っていく、彼女は俺の意図を汲み次の一撃でとどめを刺す気らしい。


「イチロー!早く!」


勇者が繰り出そうとする魔法を察したティティスが地面に這いつくばってる俺を無理矢理起こす。


「ほら!早く!立って!」


「ちょ……はぁはぁ……お、おい!?」


ボロボロの俺はティティスに急かされるまま手を引かれヨトゥン達から距離を取った。


「勇者!今よ!!」


「はい」


勇者は相変わらずのトーンで返事を返し、真っ赤に輝く剣をそのまま巨人の脳天に突き刺した。


ーーゴォォォォォォォン!!

たちまち勇者ごと真っ赤な爆発に飲み込まれていく。


「グギァァァァァァァァア!?」


「勇者!?」


爆発の中ヨトゥンがもがき苦しんでいるようなシルエットが見える、俺は勇者の身の危険も感じ再び戻ろうとするが、ティティスに腕を掴まれ制止される。


「ちょっと!危ないっ!…あの子は大丈夫だから!」


「で、でも!…大丈夫なのか!?」


「えぇ…爆裂魔法を剣に与え、そのまま相手を突き刺す魔法と物理攻撃の融合技よ。あの爆発に飲み込まれる勇者もダメージを受けるわ。…でも今までも勇者は必ず無事に帰ってきたわ」


爆発が収まる頃には既に森の巨人の姿は消滅しており、地面がえぐれている中心部分にへたり込んでいる勇者の姿が見えた。


「……ね?」


「勇者!!」


ボロボロの身体を引きずりながらも、俺達は勇者の元に駆け寄る。


「ふふ、皆んなボロボロね?」


ティティスは涙ぐみながら勇者の身体を抱き締めた。


「はい」


「勝てた…勝てたのよ…遂にヨトゥンに勝てた。…皆んなの…皆んなの(かたき)をとれた。全部、勇者のおかげよ!」


「いいえ」


「…そうね。正直、私達だけじゃヨトゥンの弱点を探すって発想すら無かったと思う。…イチロー、アンタのおかげでもあるわ」


「はい」


抱き合う美少女二人に見つめられ礼を言われる、このシーンだけ切り取って見ると、如何にも異世界ものの主人公にでもなった気になる、それでも正直面と向かってお礼を言われると、めちゃくちゃ背中がむず痒い。


「…それにあんな無茶するなんて…やる事なす事めちゃくちゃ過ぎだし!………でも、結果ヨトゥンを倒せた。そう思うと悔しいけど、やっぱアンタ救世主だわ。そうよね、勇者?」


「はい」


俺だって、二人の役に立ちたかった、勝利を呼ぶ幸運の救世主としてただ同行するのは違うと思っていた、そんなのただの名ばかりの救世主だ、俺はそんな風にはなりたくなかったんだ、それにやはりあの勇者の火力がないと絶対に勝てなかったのも事実、正直彼女の能力はケタ違いだ。

俺は首を横に振り、煤塗れになっている勇者を見つめ笑った。


「いや…やっぱ、勇者のおかげだよ、あの攻撃力があったからここまで逆転できたんだ。やっぱお前、勇者だわ」


「はい」


ーー王都まで無事に帰還した俺達は、王都一の治療機関で治療を受け、ある程度体力が回復した頃に王様の元に呼ばれた。


「お待たせ致しました、戦士ティティス、勇者、救世主イチロー三名共に、四天王の一匹ヨトゥンを無事に倒す事が出来ました」


「ちょ!まじぱねーーーーーっ!救世主君の救世主っぷりぱねーーーーーーっ!え?まじだよね?まじでヨトゥン倒せたのよね?」


王様は相変わらず適当なキャラでべらべらと喋る。


「はい、勇者、救世主の活躍によって、確実にヨトゥンの息の根を止めました」


キリッとした口調でティティスは王様に報告を続けた、コイツもコイツでよくこんな王様相手に真面目に答え続けられるものだ。


「やべー!まじやべーって!ヨトゥンを倒せたとか、まじ人類の進歩じゃねーかよ!今回の活躍!ほんと、まじありがとな!これ受け取ってくれよ!ほら、救世主君!こっち来て!」


俺は言われるまま王様の元に寄り、ゴールドがパンパンに入った袋を受け取った。


「あ、ありがとうございます…」


「かまへんかまへん!」


何故、関西弁?てかマジこの王様何者なんだ?そんな違和感を覚えている俺に対し王様は満面な笑みを浮かべた。


「っしゃー!じゃあアレだな!酒だっ!宴会をすっぞ!おい!宴会の準備だ!」


そんな王様の一声で、宴会が開かれる事になった。


ーーヨトゥンを倒せた事により、王都中の人々が大いに盛り上がり盛大な宴会が開かれた、俺達三人はヒーローとして取っ替え引っ替え色んな人達に絡まれるはめになった。


「はぁ……まじで人に疲れた…」


どうにか隙を見て誰もいない物陰に隠れる、あのままだと気疲れでどうにかなってしまう。


「あ、イチロー様!」


げ!また誰かに見つかってしまった!と思いギョッと振り返る、だがそこには居たのはコーネリオンだった。


「ちょ!ビックリしたわ…お前かよ…」


「先程は本当にお疲れ様でした!でも、皆んな嬉しいんですよ」


「…まぁ、それは分かるんだけど」


「俺からも…本当にありがとうございました。ティティスが無事だったのもイチロー様と勇者様のおかげです」


コーネリオンは珍しく真面目な口調で礼を言う。


「いや、俺は何も…どちらかと言うと足を引っ張ってばっかだったし」


そう、正直魔の森に入るまでは色々な事を舐めていた、自分は特別だとか勘違いしてて、本当に自分の無能さを痛感させられたんだ。


「いえ。やはりイチロー様のおかげですよ。…アイツ、この世界の為にってどうも背負い過ぎてる所があるんで、いつもフォルトゥナと心配してるんです」


「前にヨトゥンに挑んだ事があるって話を聞いたよ…その結果どうなったのかも」


「…はい、あいつ昔はあんなんじゃなかったんです。元々腕っ節は男の俺より強かったし武術の才能もあったんですが、ただそうってだけで普通の女の子だったんですよ。…でもあいつにとって色々な事があって、今言われたその件があってからもより一層武術にしか打ち込まなくなっちゃって……その能力が評価されて勇者専属の戦士としてどんどん出世していったんですが、正直、世界を救う為なら自分は犠牲になってもいいって…何か死に急いでるようにしか見えなくて……何かすみません」


『無茶でもっ!…無茶でも無理でもやらなきゃっ!』


ヨトゥンを前にヒステリックに叫んだティティスの言葉が頭に過ぎる。


「…こんな事言うの、勝手だって分かってます……ですが、イチロー様!今後ともアイツの事お願いします!」


コーネリオンは最敬礼をするようにビシッと腰を曲げ頭を下げる。


「…俺に言える立場なんかじゃねぇけど、あの二人は守りたいって思う、その気持ちに嘘はねぇよ」


「その御言葉だけで充分です!」


コーネリオンは頭を上げニッコリと微笑んで見せた、

本当に友達想いの良い奴なんだろう、それにこうやってしゃんとしていると何だかんだ男前に見えるよな、コイツ。


「……ところで、話を変えますが」


コーネリオンはスッと眼鏡を掛けたと思ったらいつもの気持ち悪い口調に戻った。


「………ぶっちゃけイチロー様はティティスと勇者様、どちらがタイプなんですか?」


「は?」


「いやいや、またまたー!分かっておられるでしょー?美少女二人とずーっと一緒なんですから!そりゃ恋の一つや二つくらいするでしょー!あ、因みにですが、参考までにして下さいね?俺の分析結果だと見た目がクールな勇者様は可愛い可愛い小ぶりなBカップ!一方、わがまま気ままなティティスはあっちの方もわがままボディーのDカップ!あ、因みに胸の話ですよー?」


真顔で眼鏡の位置をクイッと戻すコーネリオン、前言撤回、コイツやっぱ全然男前でもなんでもないわ、ただのHENTAI(変態)だわ。


「アホかお前は!……誰が仲間をそんな目で見るかよ!?……詳しく聞かせろやコラ!」


ただのHENTAIだが、やはり素晴らしい親友(とも)だ。


「ふふふ、イチロー様ならそう仰られると思っておりました、何せ女性のオツッ!ッパイ!は神聖なるモノですからね?ふふ」


「え、つかお前の見立ては間違いないのか?」


コーネリオンの肩に腕を回しヒソヒソと小声で語る。


「イエス!……ティティスはあんな性格ですが、あのわがままボディーのせいで何人もの兵士が隠れファンになっております、ファンの間では、あのわがままボディーにわがまま放題言われたい罵られたいと…そんな声が上がってる程です」


「なるほど、わからん。…だが、言いたい事はなんとなく分かる」


まじ?色々あって全然そんな風に見る機会がなかったが、ティティスってそんなスタイルいいの!?


「……ま、まぁ別に?俺はそんな意識した事はないけど?」


「ふふ、なるほどです。…因みにティティスはいまだに…」


「あれ?アンタら肩なんか組んで何してんの?」


突然ティティスとラブコメ兵士二号のフォルトゥナに声をかけられ、俺とコーネリオンはビクッとなった。


「げ!ティティス!?フォルトゥナ!?」


「げ!って何よ!げ!って!私が来ちゃダメなの!?」


フォルトゥナは怒った様子でコーネリオンに食ってかかった。


「そ、そんな事言ってねぇだろ!?」


コーネリオンは相変わらずラブコメ兵士二号とイチャイチャし始めた。


「てか、アンタらいつからそんな仲良くなったのよ?」


ラブコメ展開を繰り広げる二人を横目に、ティティスが俺に問い掛けてきた。

どうやらさっきの会話は聞こえてなかったようだ、まじで危なかった。


「あー、まぁ、ちょっと共鳴しちゃってさ」


「共鳴?何が?」


「男のロマンかな?」


「は?」


は?って何だよ、自分で聞いといては?って!これか?こんな感じでわがまま放題に罵られたいって思うのか?ファンは?…まぁ、あんまり意識した事なかったが、言われて見れば確かにスタイル良い方かも知れない。


「…何?」


「へ?あ、いや…まぁ、そんなこんなでアイツとは仲良くなったんだよ」


「ふーん」


急いで視線と話題を逸らす。


「あー、そう言えば傷が完全に癒えるまで後二、三日休めって王様の指示があったみたいよ?」


「あ、まじ?」


「暫く休暇を取れって。…せっかくだからアンタも街を見て回ったらいいんじゃない?」


「あー、まぁ…そうだな…」


休暇か。

正直俺は今回の件で色々と反省する事があった、今回は何とか森の巨人を倒せた、だが、正直次はどうか分からない、その上で俺はもっと努力しなければならない、休暇、せっかく休暇があるんなら丁度いいかも知れない。


「何よ?また一人じゃ嫌だって言うんじゃないでしょうね?私も休暇中ずっとアンタに構ってる暇はないんだけど」


「ティティス…あのさ?」


もう御飾りの救世主は嫌だ、名ばかりの救世主はごめんだ、俺はもっと強くなりたい、皆んなの期待に応えられる為にも、だから、その為に。


「俺に特訓をつけてくれ」



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少し色々あって更新できない状況でした。

大変お待たせして申し訳ございません、今後より再び張り切って更新して行きます!

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