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エピソード2.俺の異世界生活がこんなに可笑しい訳がない(仮)❺

誤字脱字報告貰えると助かります。

俺はあまり剣術には向いていないようだ、いや、剣術と言うより白兵戦そのものに向いていないようだ。

あの後何度もモンスター相手に剣で斬り掛かってみたものの結果は同じ、一撃は剣で斬り付ける事はできても力が足りないのか息の根を止める事は出来ず、逆上するモンスターに襲われそうになり、結果二人に助けられてしまう、その繰り返しでやっと自分にその才能がない事を自覚したのだ。


「イチローはもう前に出ないでいいから」


先頭を進むティティスは嫌味とかそう言うのではなく淡々と事実を告げる。

俺のフォローをしながら戦うよりも最初から俺抜きで戦った方が効率がいいからだ。


「あ、あぁ…分かったよ」


くそ、正直めちゃくちゃ悔しい。

どうやら俺の能力は、あのチートな魔法のみらしい。

てっきり魔術も剣術も強く、まじで無敵な異世界転移者に憧れていたのだが、この際しょうがない。

俺は自分の掌を見つめ、あの亜人達にぶちかました能力を思い出していた。

俺が中学の時に考えてた、フェニックスバーニングの詠唱でそのまま発動してしまった爆裂魔法、しかし、あの魔法はあまりにも威力が高過ぎて自分自身も気を失ってしまう程だ。


「何とかコントロールできれば…」


掌をグー、パー、グー、パーと握っては広げを繰り返す。

あの能力さえ使いこなせるようになれば俺は間違いなく最強、今度こそ救世主様としての威厳も取り戻せ、今のベンチ組も抜け出せるはず!俺の異世界生活がこんなに可笑しい訳がない!そうだ!見てろ?俺のモンスター無双伝説はココから始まるんだ。


「え、何?あんたどうしたのよ?自分の掌ばっかり見つめて?」


「え、あ、いや…白兵戦だと二人の足を引っ張るから、魔法で二人を後方から支援できないかな、と」


その言葉にティティスが真面目な表情でジーっと見つめてきた。


「…あんた、魔法使えるの?」


「へ?いや…使えるけど、多分」


何?何々?なんでそんなシリアスな表情してるの?俺が魔法使えちゃ駄目な理由でもあんのか?

俺の疑心暗鬼なのかも知れないが、ティティスは疑いの眼差しで俺を見つめているように見える。


「…どんな?」


「え?いやだから…爆裂魔法的な、奴だけど」


「じゃあ、ちょっとそこで使ってみて」


ティティスは丁度何もない開けた場所を指差した。


「え?何で!?」


「いいから」


なんだコイツは?やっぱり魔法が使えるって事が信じられないのか?そこまで俺の事を馬鹿にしてんのか?そう思うとだんだん腹が立ってきた。

正直あの力を制御できる自信はまだ無い、がここまでコケにされたら黙っておけないのが男って奴だ!


「いいぜ。……見せてやるよ!俺の力!」


意識を集中させ、開けた空間に力を放つイメージを膨らませる。


「古に失われし全てを焼き尽くす炎よ」


俺のこの膨大な魔力に唖然とする二人の顔が想像でき、思わずニヤリと口元が緩んでしまう。

しかし、最後まで気を抜く事はなく、細心の注意を払いながら詠唱を力強く唱える。


「我に従い、奴等を焼き払え!フェニックスバァァァァニング!!」


俺が思いっきし手をかざした方向は、真っ白い光に包まれた、筈だった。


ーーあれ?思いっきし手をかざしたままでずっと待っているのだが、フェニックスバーニングは全然発動する気配が無かった。


「あ、あれ?おかしいなぁ?ちょっともう一回いい?」


俺は再び意識を集中させ、開けた空間に力を放つイメージを膨らませる。


「古に失われし全てを焼き尽くす炎よ、我に従い、奴等を焼き払え!フェニックスバァァァァニング!!」


再び、思いっきし手を振りかざす。


ーーだが、何度やってもフェニックスバーニングは発動しなかった。


「えぇぇぇ!?な、何でだ!?あの時は使えたのに!?」


「ねぇ、もしかしてだけどさ?あんたが言ってる爆裂魔法ってコレの事?」


ティティスは勇者に向かい短く頷いて見せた、すると勇者は目を閉じ口をパクパクさせる。


ーー突然勇者の身体が青白く光り輝く、そして彼女が思いっきし手を振りかざした瞬間、耳鳴りと共に真っ白い光が現れた。


「ちょ、まさか!?」


そして目の前で『バーーーン』と俺が今使おうとしていたはずの爆烈魔法が制御された形で華麗に炸裂されていた。


「うそーーーーーん」


口をパクパクさせ動揺する俺に、ティティスが哀れむような眼差しで説明をする。


「やっぱり、あんたやけに自信あるみたいだったからもしかしてって思ってたんだけど」


勇者は爆裂魔法を唱えた後に、良い仕事したーと言わんばかりのスッキリした表情で額の汗を拭っている。


「勇者の爆烈魔法を自分で出したって勘違いしてたんじゃない?」


いやいや、いやいやいや何を言ってるんだティティスさん?俺はあの時、自分の力で確かにフェニックスバーニングを使ってピンチを抜け出して、あれ?突然俺を介抱してくれていたエリーゼとの会話が脳裏に過った。


『エリーゼが助けてくれたの?俺の事?』


『いえ、私ではありません』


そう、意識を失ってる俺を助けてくれたのはエリーゼではなかった。


「も、もしかして!?」


「…そう、人食いの亜人達からあんたを助け出したのは勇者よ!」


うそーーーーーん。


「そして、亜人達を蹴散らす為に使った爆裂魔法であんたを気絶させちゃったのも、勇者よ!」


う、うそーーーーーん!!


「え、じゃああの時の爆烈魔法は、俺が使ったんじゃなくて…その、ゆ、勇者がっ…」


人ってあれだね?自分が認めたくない事実を自分で口に出そうとすると、声って震えるんだね?


「…自分の力だって、あんた勘違いしていたのね…」


目の前が真っ暗になった。

俺は膝から崩れ落ち、とても受け止め切れない事実を突き付けられたのだ。

嘘だ、嘘だと言ってくれ!じゃあ、何だ?俺もしかしてだけど、能力ゼロ?剣も魔法も全く駄目なの?もしかしてだけど俺ってただの一般人?まじ?そんな異世界転移ってある?こんな事ってある?まじで不幸だ、不幸過ぎる、ここまで期待させといて、能力無しとか神様酷過ぎる、お…俺の、俺の。


「俺の憧れた異世界生活を返してくれぇぇ!!」


「イチロー、気を落とさないで?」


ティティスが肩をポンと叩き、言葉を続ける。


「その為に私達が付いてるんじゃない?…まぁ、正直想像してたのよりもあんた弱いけどね」


「ぐはっ!?」


笑顔で言われたティティスの最後の一言で俺はトドメを刺され、朽ち果ててしまった。

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