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次の日、私は王宮の廊下をてくてく歩いていた。
ジャント国は永久にマスタス国に攻め込まないことを誓い、マスタス国の平和は守られた。その後の会議では今後の方針が話し合われ、私とアリスターの結婚がびっくりするほど簡単に認められた。もともとそのために開催された会議だったらしい。
私が今何をしているかといえば、入り組んだ廊下を抜け、1つの部屋を目指して歩いている。
先程宰相様に耳打ちされたのだ。アリスター殿下との結婚の日取りが決定したので、聞きに行ってください、と。
嬉しくってスキップで向かおうかと思ったが、王妃としてさすがにやばいと思ったのでやめておいた。だけど廊下ですれ違う召使いや侍女さんたちは、「今日は走ってもスキップしてもいないんですね」と声をかけてくる。なるほど、やっても良かったようだ。
あと、エミ様ではなくメグム様と声をかけられることがあるのはなんでなんだろうか。それでも呼ばれた気になるのでいいんだけど。
考え事をしていたら、両開きの扉の前についた。両腕でバタンと勢いよく押し開く。
――――とんでもない既視感を感じながら。
まず目に入ったのは国王陛下、王妃様、先についていらっしゃるのがさほど不思議ではない宰相様。みんなにこにこして私を見ている。
そして何よりこの人だ。
椅子に深く腰掛け長い足を組んでこちらを見ている。まるで一枚の絵画みたいなこの光景、すごいデジャブだ。………いや、待て?『デジャブ』どころじゃなくないか。
――――私、これ、3回目じゃない?
「『名乗れ』、なんてな」
その声はまだ王子なのに王様感たっぷりで、いやもはや謎の皇帝感たっぷりで。この世の誰よりも愛おしくてしょうがないというように、私のことを見つめている。
私の大好きな、親友かつ恋人かつ婚約者。
「アルっ!」
駆け出して飛びついた。
私はこれからも、この世界を、彼と一緒に生きていく。
以上で完結となります。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。




