3幕:魔法の練習と毎日の積み重ね3
だけど、、、
「お兄、、、もう一回!!」
絹のように品やかな黒髪を持つ小さな女の子がルビーのような紅の瞳を真っ直ぐに向けて少しだけ声を張り上げた。
その表情はいつものプイッとした表情とは違い真剣で負けん気が漏れ出している。
小さく握る拳は固く力強い。
何事にも真剣に全力で取り組む姿は健気で可愛らしい。
本当に良い表情である。
そんな彼女の名前はココ。
『中指』との戦闘で大怪我した後、転移したこの地の近郊で怪我を治してくれたという小さな小さな命の恩人。
彼女がいなければ間違いなく死んでいたと思う。
そんな彼女の真剣な眼差しに応えるべく白い布を床に置くとその中からコップを取り出した。
流れるような所作に目の前の二人と2匹は目が点になっている。
取り出したのは少し前に隠した普通のコップである。
さてこれは、、、、
「フェイク オア トルゥー?」(蒼葉)
「フェイク!!」(ココア)
「うーん、、、ふぇいく!!」(ココナ)
「残念、、、本物でした」(蒼葉)
「うぅぅっ!!」(ココア)
「むうっ!!」(ココナ)
よっぽど悔しかったのだろうか。
振り上げた拳は自分の足へと振り下ろされた。
少しだけ目尻に涙を浮かべながらキッと睨んでいるが、その場から動くことはない。
どうやらまだ続けたいようである。
「お兄次っ!!」
続いてコインを上空に上げ落ちてきた瞬間に見えないように隠しながら消失させた。
「ふははっははっ、、、さぁどこでしょうか?」
「こっちよ!!」
負けん気が強いココアはすぐさま右手に飛びかかった。
一方、ココナもマロンもヤキニクも逆の左手に飛びついた。
ココアが込める力は全力で絶対に何もさせないと言わんばかりに右手を体で固定し、一方の左手もココナが両手を使って掴み取り二人をマロンとヤキニクが補助している。
2匹のもふもふっとした感触が素晴らしい。
「こらこらこら飛びつきは反則だってば」
反則やってるのではないかと思ったのかな。
だけどそうじゃない。
「そこにはないよーだっ。お兄ちゃんはそんなところには隠してません」
2匹が左手を抑え、その隙にココナが左手の袖の中を顔を突っ込みながらじーっと覗き込んだ。
彼女のエメラルドグリーンの大きな瞳は全てを捉えそうなほど澄んでいる。
でも今は絶対に見つかることはない。
それよりもさらさらとした金色の髪の毛が顔にかかり少々くすぐったい。
こっちの小さな女の子の名前もココ。
数ヶ月前にホルクス近郊の知らない森の中で出会った不思議な子で、この子との運命の出会いから知らない世界での生活が始まったのである。
気づいてる通りどちらもココという名前だから区別するために愛称で呼ぶことにしている。
ココアとココナ。
思いつきで名付けた二人のニックネームである。
いつもツンとした辛めの表情のココにはココアという名前の苦いけど甘さをもった愛称を。そしていつもニコニコしている笑顔のココにはココナという可愛さをこめた愛称を。
でも二人とも今はしかめっ面で絶対に不正は許さないと言わんかのような必死な顔をしてこちらを覗き込んでいる。
「さぁまずはフェイク オア トルゥー?」
「とるぅー!!」
「じゃあ理由は?」
「んーんとね、、、おとがしたきがしたもん!!」
「ほぉーじゃあどこにあるかなぁ?ココナは?」
「トルゥー!!」
「性格悪いお兄がそろそろ仕掛けるはず!!」
掴んだまま離さない二人に向けて小さな手ごと両手を握ったまま差し出した。
さぁどちらかなと言わんばかりに視線を両手の拳へと振り分ける。
「お兄その手には乗らないわ!!そこよ!!」
「むうっ、、、そっちだもん!!」
二人がさらに体重をかけ腕を固定させようとしてきた。
まさに全身を弄らんとする勢いである。
そのままパジャマの下のポケットを探らんと手を伸ばしてくる。
そんな二人を優しく抱きかかえながら蒼葉はニヤリと笑みを浮かべ二人に正解を開示した。
「残念でした!!正解は拳の中だよーしかも両手にありました!!」
「「ずるいーーっ!!」」
「じゃあ時間だし、もう寝ようね」
「さぎだもん!!」(ココナ)
「お兄のばかーっ!!」(ココア)
「ふふふ、、、大人は汚いのです」
「「ぶーぶー!!」」
「さて明日のおやつはいつもより美味しいの作ろうかな、、、それともいらないのかな?」(ニヤリ)
「「!?」」
「さてどうしようかな、、、」
「「おやすみなさい!!」」(キリッ)
とっさに豹変した二人のかわいい寝顔が観れるまで蒼葉はそのまま優しく抱きかかえながらベッドに寝転んだ。
そしてどのくらい経っただろうか。
しばらくすると急に大人しくなった二人とともに視界がだんだんと闇に染まっていく。
やがてベッドの中にモゾモゾとマロンたちが入ってくる感触を感じながら蒼葉の意識は途絶えたのだった。
これは蒼葉と二人のココとが織りなす『とある魔法』の練習風景である。
翌日の蒼葉( ゜д゜)シマッタ:夜の冒険に行き損ねた、、、
恐れ入りますが、、、、夜の大人の冒険に興味がある方、ココナとココアにほっこりされたい方、もしよろしければ評価やブックマーク等いただけると嬉しいです。




