34幕:ココと蒼葉と謎の少女2 『モフモフが呼んでいる』
恐れ入りますが、出張が続いていたため更新が遅くなりました。
5月中も出張で留守が多いため更新が遅くなるか不定期になるかと思います。
「あらお帰りなさい」
いつものように木製の大きな食堂の扉が大きく開かれた。
からんからんと吊り下げた鐘の音が響くと優しく温かな声が返される。
その声はとても穏やかで慈愛に満ちたものである。
「「「ただいまー」」」
「ただいまです」
「あーー!!」
ココはついつい指を指して叫んでしまったのだ。
なぜなら目の前の椅子にあの気になっていた子供達が座っているのだ。
耳がピクッとこちらを向いたのだがすぐさま見えなくなってしまった。
椅子の上からレールナお姉ちゃんに正面からくっついていた二人はココと目があうとすぐに後ろに隠れてしまったのだ。どうやら二人ともぎゅっと抱きついていたらしい。
だからココもレールナお姉ちゃんに飛びついた。
何故だかひっつきたくなったのだ。
「あらあらココちゃんも甘えん坊さんね」
「れーるなおねえちゃんおねえちゃん!!ココもひっつくもん!!」
同じく食堂の椅子に座るお姉ちゃんの大きて柔らかな胸の中に顔を埋めて感触を確かめてから、それからココは右から後ろを伺った。
小さな犬耳の女の子がこちらを覗き込んでいる。
でもシュッとまた後ろに隠れてしまった。
可愛らしい尻尾の先だけは今も見えている。
だからココは続けて左から後ろを覗くことにした。
こちらには小さな猫耳の男の子がじーっと見つめているところだった。
数秒だけ見つめ合うと彼もまたシュンと後ろに隠れてしまった。
でも耳だけはこちらから見えておりピクピクとしていてとても触りたくなる気持ちになる。
何回かやりとりをした後、周りから笑い声が湧き上がった。
特にマークスとレイモンドは大きく腹を抱えている。
ココと二人の子どもたちのやりとりは相当おかしかったようでしばらく笑い声が止まらなかった。
そんな3人のやりとりを肌で感じながらレールナは謝罪した。
「昼過ぎに目覚めてからずーっとこの調子なのよ。もぉー本当に可愛くって仕方ないわ。この耳と尻尾が最高なのよ。だからごめんね、夕食準備するの忘れてた」
「もぉお姉ちゃんの顔がチーズのようにトロけてる。いいなぁ私ももふもふしたいなぁ」
可愛らしい姉の謝罪はともかくルーリも羨ましいようでそわそわと落ち着かない様子である。
「「かわいいー」」
残りの娘二人も近づいて来て子供達を両脇から覗いている。
ココが二人の姉を見ると手がヒクヒクしている。
やはりあの可愛らしいお耳としっぽに反応しているようだ。
だがこの時ココは思ったのだ。
それはダメなのだと。
ココが一番最初なのだ。
だってずーっと我慢してたんだもん。ココが一番にもふもふするんだもん。
二番じゃダメなんだもん。
隙を伺いながらココは両手をお姉ちゃんの脇の間からそーっと手を這わせながら近づいたのだが
「レールナお姉ちゃんずるいです」
「いいでしょー♩さぁローロもこっちにおいで」
ココがそーっと二人に手を差し出す前にローロちゃんも姉に飛びついたのを見て、、、閃いた。
これはサンドイッチだと。
だからココは力いっぱい主張するのだ。
「あおばおにいちゃんよるはさんどいっちがたべたーい!!」
「「「食べたーい」」」
続けて三人娘の声が木霊する。しかし蒼葉は浮かない顔でこう切り返した。
「たまにはルーリさんの手料理が食べたいん、、」
「「ダメです」」
友人組が斬って捨てるように反対する。見事なユニゾンである。
「こちとら大変な目にあったのに先輩の手料理でも食べないとやっとられんわー」
「そうだそうだ、お兄さんの料理を食べさせろー」
「いや飲みたいか、、、」
二人組がプンスカし出し、その直後に末妹が蒼葉の胸に飛び込んだ。
「蒼葉お兄ちゃんの手料理が食べたいです」
どうしてだろうか、よく分からない顔をした蒼葉に末妹は全力の斜め上目遣い45度を披露した。その小さくて大きな瞳にはじわりと涙が浮かんでおり今にも決壊しそうなほどである。
そしてこのおねだりの威力は反則であり蒼葉の保護欲を刺激したようだ。
「ロ、ローロは蒼葉お兄ちゃんの手料理が食べたいです」
「「ニヤリ」」
二人組は悪魔のような笑みを浮かべその様子を眺めている。だが本人はローロの真っ直ぐで無垢な姿に心を鷲掴みにされ気づくことはない。
ココはそんな皆のやりとりを後ろに顔を向けて観察している。
これは二人のお姉ちゃんに教わったお願いするときの48の必殺技の一つである。意識せずに使えるとはローロちゃんはココよりも大人なのだ。
「パンで挟むもの、、、小麦粉寝かせて挟む、、包む?でもあれってイースト必要だったっけ久しぶりで思い出せないなぁ。寝かせるのは必須だけど膨らませるとなるとあの手なら短縮できるかも。ただこの時間からだと時間かかりすぎるしもう売れ残ってもないだろうし。両方作るか、、、そうなると少し人手がいるかな。あ、たくさんいるからいいのか。こうなればタダでこき使ってやるか、ならなんとかなるのか。あとは材料と道具さえあれば、、、有り合わせでいくか。材料刻む準備する間に寝させて、そしたら短縮できる。とにかく効率よくやるには3人組をこき使う、あーと何だっけ」
「蒼葉くん心の声が漏れてる漏れてる」
横からルーリがすかさず突っ込むのだが蒼葉は気づいていない。
心の声だけでなくさっきから蒼葉お兄ちゃんの手がそわそわしている。
ココは知っている。
こんなときお兄ちゃんはある仕草を見せる。
でもお兄ちゃん自身は気づいていないし、それに滅多に人前では見せない仕草である。
いつも一緒にいることが多いココだからこそ知っているのだ
蒼葉お兄ちゃんの右手からポンと可愛らしいお人形が飛び出した。間髪入れず左手からも違うお人形が現れた。そのお人形はお兄ちゃんの手から少し離れて踊るような動きで一礼すると素敵なダンスを披露した。それから最後のポージングと同時に白い布の中に瞬時に消えてしまった。
まるで生きているかのような緩急のついた動きが場を支配する。そして彼の指がその動作に合わせて滑らかな動きをみせている。まるで何かを弾いているかのように。
ちょうど外から差し込む赤い日の光がその姿をより一層幻想的に魅せている。
部屋中の視線がその手元にその人形たちに釘付けになっていた。
考え込んでるときや何かに集中しているとき、お兄ちゃんは自身で気がつかずに魔法を使っていることがあるのだ。この癖が出始めたのは以前からなのだが、ここまで流暢に洗練された動きを取りはじめたのはここ最近のことだ。これはお兄ちゃんにしかできない魔法でありココと初めてあったあの日あの部屋で見せてくれた魔法にとても似ていた。
というよりもあの時の魔法と本当は同じだとココは思っている。
「お兄さんすごい」
「先輩すごい」
リルリとシェリの二人が自然と呟いた。
初めて見る者はいつもこんな反応をする。
それは二人だけでなく小さな獣の耳を持つ子二人も同様であり小さくて大きな瞳は太陽のような輝きをしていた。
ちなみにレールナお姉ちゃんやルーリお姉ちゃんにローロちゃんが初めてこの光景を見たときも言葉にならなかったほどだ。もちろんその視線はその人形が消えてしまったテーブルの上に今も注がれている。
「こんばんは、蒼葉お兄ちゃんいますか?」
ココがお姉ちゃんに抱きついたまま人形の踊りを鑑賞していた時に入口の扉がそーっと開かれ外からハンチング帽を被った男の子が顔を見せた。
後ろにはスタイルがとてもいい女性が控えている。白のブラウスに黒のパンツスタイル、黒のローヒールのパンプスといいクラシックに纏めた大人な空気が漂う彼女は男の子の姉ピルファナである。Bar黒猫のオーナー。そしてピピル、ピーターの姉であり、レールナやソフィアの先輩である。
一昨日に転倒し足を痛めたばかりなので動くたびに少しだけ足を引きずっているようだ。
「ん?レールナ何だい皆んなグリフォンが豆を投げつけられたような目をして、、、」
「二人とも確保」
「「もち」」
お兄ちゃんの掛け声とともに二人娘がピピルとその姉を確保、室内に連行した。
さらにその直後、次は引率二人組がピルファナの顔を見て何かを思い出したかのように慌ただしくなった。急に外出するみたいだが、ココにはなぜだか分からなかった。
「青年そろそろお腹が減ったのだが、任せるぞ」
「蒼葉今日は俺たちだけだから二人ぶん追加で頼むぞー、じゃあ後でな」
「あっちも確保」
「任せて」
ルーリが二人を連行しテーブルに座らせた後、すぐに扉をコンコンと叩く音がした。
「ごめんください。付かぬ事お聞きしますがこちらに獣人の子どもはいませんかぁ?」
扉が開かれ差し込む夕暮れの光とともに姿を見せたのはとても綺麗な少女の姿だった。
ただし頭に小さく柔らかそうな動物の耳、お尻に細くてしなやかな尻尾を生やした女の子である。
「あれも確保」
声に反応してココとローロはレールナから離れ一緒に入口のお姉ちゃんに左右同時に展開した。
困惑する目の前の可愛いケモミミのお姉さんを前にココは大きく力いっぱい両手を広げるのだ。
もう我慢できないのだ。
さっきからあおピクピクしたお耳がすらっとした不思議な尻尾がココを呼んでいるのだ。
モフモフが呼んでいるのだ。
だから今からお腹いっぱいモフモフするのだ。
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