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ベクトルマン  作者: 連打
24/189

家族ってどんなん


「周蔵!ご飯できたよ!」


バンバンと勢いよく叩かれる扉。

ほとんど寝ていないというのに元気な事この上ない。僕はオモムロに時計に目をやるとなんと6時22分。この時間だとまだ父が出かける前、今まで姉がずっと意図的に避け続けてきた時間帯。だというのに……


「……」


食卓にはすっかりパンやらハムエッグやらが3人分ずらりと並べられていた。制服にエプロン姿の姉、飄々とした変人・父も少しばかり落ち着かない様子でコーヒーをガブ飲みしている。


「今日は……早いな2人とも」


こころなし声が震えているようだ。


「お父さん今日は帰り遅くなる?」


ぴきり、と父に入った亀裂。姉の問いかけに目を丸くして手にした新聞を落とした。


「ああ……そんなにでもない。いつもどうりだ」


僕に視線を寄越す父。僕は姉ほど父に距離を取っていた訳ではないので僕に助けを求めた父だったが……あいにく僕もトバッチリは避けたいので無視。


「そっか。じゃ夜も3人で食べられるね」


真っ赤な顔でニッコリ笑う姉。その顔を向けられた父は無言で立ち上がり、リビングにあるソファーに向かってボスボスと左右の拳を繰り出す。無論はじめて見た姿だった。


「ちょっとお父さん?食事中に……」


「ああ!ちょっとしばらくほっといてくれ!発作だ発作」


ソファーに拳を繰り出さざるを得なくなる発作、実に興味深い症例だ。急いでまとめて来月の学会に報告の準備を……


「あんたもちゃんと帰ってくんのよ!昨日みたいに遊び歩いてたら姉ちゃん怒るからね!」


そう真っ赤な顔で僕に宣言する姉。いやあ、実にキモチワルイ!!清々しいほど醜悪なホームコメディー。


「オトウサン行ってくる!ちゃんと帰ってくるからな!」


見事な棒読み。国籍間違えたかのようなたどたどしさ!


「いってらっしゃい!」


姉も涙ぐむほどテレるならやんなきゃいいのに。


しかし……なぜか否定する気も起きない。

姉は家族を再生する気なのだ。血の繋がらない父と対人恐怖症の弟、当の姉本人だってセレブぶってはいるが本性は猪突猛進の近視眼的な高校生に過ぎない。本人もよく分かってない家族という共同体の輪郭をなぞっているだけなのだから醜悪なのも当然だ。

でも、そもそも醜悪で無い家族ってどんなん?と聞かれてもやっぱりよく分からないのだ。昔やらなければいけなかった軋轢のすり合わせや齟齬の修正。それを意図的にむりやり再開しようというのだから、姉の決断ならびに実行力は凄まじいモノがある。

そのうち僕にもなにか出来ることがあるかも知れない。そのとき僕は姉のようにステキな笑顔で「いってらっしゃい」と、そう言えるだろうか?

先のコトは分からない。でも……


僕たちの戦いはこれからだ!!新木先生の次回作にご期待k


「勝手に最終回にすんな!」


「ぶぼっ!?」


かばんでアタマ叩かれた。


「なななんだよ!さっきまでやや優しかったじゃないか!!」


「続かないのよしょうが無いでしょ慣れてないんだから!!さっさと学校行くわよ!!」


ママゴトみたいな朝食を済ませ僕らは学校に向かう。

継続は力、すなわちコダワリの結晶というわけだ。うん、この考えは悪くない。

じゃあ精々コダワッて一般カテーってヤツを作ってみようじゃありませんか。モノ作りという響きはオタ心に実に良く響くし。


電車から降りた僕と姉、……僕らの第2の共同体である学校を目指しちょっとだけ暖かくなった風に煽られながら、姉は僕を見て照れくさそうに笑った。

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