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タ双子のカワイイ赤ちゃん象 創造力と創造生 兄妹象の冒険 1/2  作者: てみたん


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鉛筆画家族のデッサン家(でっさんち)第1巻

この物語は、ある工場で生まれた鉛筆のお母さんと消しゴムのお父さん、そして彼らの間に生まれた「出参でさん てん」と「出参でさん せん」というふたりの子どもたちの、一生をめぐる長い長いお話です。


苗字は「出参でさん」。この家族の名前を声に出すと、なんだかデッサンをしているときの気持ちに似ている気がします。


点は女の子。丸くて小さくて、ちょこんとそこにいるだけで場が和む妹。 線は男の子。まっすぐ伸びようとする力強さと、曲がってしまう柔らかさを持つ兄。


この家族が笑い、泣き、ぶつかり、抱き合いながら生きていく姿を通して、あなたに伝えたいことがあります。


人生は白い紙のようなもの。 何を描くかは、あなた次第。 でもきっと、その紙はずっと、あなたのそばにいる誰かと一緒に埋まっていくのだと思います。


この作品は、お子さんと一緒に読んでいただくことも、大人がひとりで読んでいただくことも、どちらも想定して書きました。紙芝居のように場面を思い浮かべながら、どうぞゆっくりページをめくってください。

第一章 工場のうた ― お父さんとお母さんの出会い ―


第一幕 鉛筆工場の朝


朝の光が、細長い窓から差し込む工場があった。


そこは鉛筆工場。木の香りと黒鉛の匂いが混ざった、少し懐かしいような場所だ。


ベルトコンベアの上で、今日もたくさんの鉛筆たちが生まれていく。削られ、塗られ、磨かれ、ラベルを貼られて、ひとつひとつ箱に収まっていく。


そのなかに、ひとりの鉛筆がいた。


名前はまだない。でも、彼女の黒い芯はとびきり濃く、きれいに尖っていた。工場の職人さんが「これはいい子だ」とつぶやいて、特別丁寧に仕上げてくれた一本だった。


彼女はベルトコンベアの上で、はじめて目を開けた。


「ここは、どこ?」


天井が高い。機械の音がひびく。そして、なんだかとても広い。


「しっかりしな! 揺れるよ!」


隣の少し短い鉛筆のおじさんが声をかけてくれた。


「この先に、白い紙が待ってる。わたしたちはそこへ行くんだ。描くためにね」


鉛筆の彼女は、胸の中でなにかがぎゅっとなるのを感じた。


描く、か。


それが自分の使命なのだと、彼女はなんとなくわかった。そして同時に、まだ見ぬ白い紙のことを、とても楽しみに思った。


第二幕 消しゴム工場の夜


一方、町はずれの別の工場では、夜の仕事が始まっていた。


消しゴム工場だ。


白くて四角い消しゴムたちが、プレス機でぎゅっと押し固められ、ケースに包まれて並んでいく。


そのなかのひとつの消しゴムは、少しだけ形が歪んでいた。完璧な四角ではなく、角が少しだけ丸みを帯びていた。


製造ラインの係のおじさんは「規格外かな」と首をかしげたが、触り心地がよかったのと、消しゴムとしての質が抜群だったので、そのまま出荷することにした。


消しゴムの彼は、工場の箱の中で目を覚ました。


「……なんか、ほかのみんなと形が違うな」


隣の消しゴムたちは、ぴしっと綺麗な四角形だ。自分だけ少し丸っこい。


「いいんだよ、そんなこと」


反対隣の古い消しゴムのおばあさんが言った。「消すのが仕事だろう? きれいに消せれば、形なんてどうだっていい。それに、丸い角はね、柔らかくて使いやすいって言われるんだよ。わたしはそう思う」


消しゴムの彼は、少しだけ胸を張った。


消す、か。


消すことは、なくすことじゃない。消したあとに、またあたらしく描けるようにすること。


そう、なんとなくわかった気がした。


第三幕 ふたりの出会い


ある日曜日の朝、文房具屋さんの棚の上で、ふたりは隣り合わせになった。


鉛筆のお母さんと、消しゴムのお父さんだ。


「こんにちは。あなた、形が丸っこいですね」


鉛筆の彼女は、悪気なくそう言った。


消しゴムの彼は、照れながら笑った。「そうなんだ。ちょっと規格外で。あなたは……芯が濃そうですね」


「よく見てくれましたね! 自慢の芯なんですよ」


「描くのが好きなんですか?」


「大好きです。あなたは?」


「ぼくは……消すのが好きです。上手に消せると、またきれいな白が戻るから。その白を見るのが好きで」


鉛筆の彼女は、なにかあたたかいものを感じた。


自分が描いたものを、彼が消す。 彼が消した白に、また自分が描く。


それって、なんだか素敵じゃないか、と思った。


「わたしたち、いいコンビになれそうですね」


消しゴムの彼は、はじめて大きく笑った。


やがてふたりは同じ家の子どもの机の引き出しへと迎えられた。並んでいるうちにすっかり仲良くなって、いつしか家族になった。


鉛筆のお母さんと、消しゴムのお父さんの、ふたりだけの物語が始まった。


第二章 点と線のたんじょう


第一幕 おかあさんから生まれた線


ある朝、お母さんはなんだかいつもより手が滑らかに動いた。


子どもが画用紙を前にして、はじめてお母さん(鉛筆)を持った日のことだ。まだ小さな手が、ぎゅっと握る。


「いたい!」と思わずお母さんは言いそうになった。でも、それと同時に、なにかとても大切なものが生まれる予感がした。


子どもの手がゆっくり動く。


画用紙の上に、一本の線が引かれた。


ふにゃっと曲がって、少し途切れて、また続く線。


でも確かにそこにある。


その線は、ぱちりと目を開いて、自分が生まれたことを知った。


「ぼく、せん! 出参 線!」


お母さん(鉛筆)は、ほろりとした。


この子が、わたしの息子だ。出参家の、長男だ。


第二幕 おとうさんから生まれた点


しばらくして、子どもはお父さん(消しゴム)を使って、間違えた線を消した。きれいな白が戻った。


そしてその白に、今度は画用紙の上に、とんとんとお母さんで小さな点が打たれた。


ひとつ、またひとつ。


そのうちのひとつの点が、きょとんと目を開けた。


「わたし、てん! 出参 点!」


丸くて、小さくて、どこかお父さん(消しゴム)に似て、角が丸っこい。


お父さんは目を細めた。


この子が、わたしの娘だ。出参家の、長女だ。


こうして、出参 線(兄)と出参 点(妹)の兄妹が生まれた。 出参家の、四人家族の物語が、ここから始まる。


第三章 はじめての世界 ― 小さなふたりの日々 ―


第一幕 おかあさんとおとうさんを描く


線と点のふたりは、まず自分たちのご両親を「描く」ことで、世界の見え方を学んでいった。


「おかあさんってどんな形?」と点が聞く。 「細くて長くて、先がとんがってる!」と線が答える。


線がお母さんを描くと、縦に長い棒のような線が画用紙に現れた。


「うまい!」と点が丸い体でぴょんぴょん跳ねる。


「じゃあ、おとうさんは?」 「四角くて……少しだけ丸っこい!」


点がお父さんを描こうとすると、ころんとした四角形になった。完璧な正方形ではないけれど、どこかあたたかみのある形だ。


「これ、おとうさんにそっくり!」


お父さん(消しゴム)は、照れくさそうに顔をそらしたが、口元がゆるんでいた。


第二幕 ペットのシロ


家には犬がいた。名前はシロ。白くてふわふわの、なんでも食べるわんぱくな犬だ。


シロは点と線が大好きで、いつも画用紙の近くで丸くなって寝ていた。


線がシロを描こうとした。


「シロってどんな形だっけ……」


ぐるぐる丸い線を描いて、足を四本つけて、耳をぴんと立てて。


できた絵は、どこからどう見てもシロではなく、むしろタコに近かった。


「にてなーい!」と点が笑いながらころがった。


「うるさい! じゃあ、てんが描いてみろよ!」


点が描くと……まん丸のお団子が四つ並んで、小さな点の目がついた。


「……これもシロじゃない」


ふたりで顔を見合わせて、それから一緒に笑った。


その絵の前で、シロは尻尾を振りながら「わん!」と言った。まるで「ぼくだよ」と言いたそうに。


第三幕 じいじとばあばのこと


週末になると、じいじとばあばが遊びに来た。


じいじはがっしりして、背中が少し丸い。ばあばはちっちゃくて、いつもエプロンをしている。


「じいじを描いてよ!」とばあばが言う。


線が一生懸命、太くて丸みのある線でじいじを描いた。背中を少し曲げて、足をどっしりと。


じいじは目を丸くした。「おお、よく描けた! おれ、こんな顔してるか?」


「してる!」と全員で言った。


ばあばを描いたのは点の番だった。


小さな丸をいくつも重ねて、エプロンをつけて、ニコニコした顔を。


「まあ、かわいい!」ばあばは画用紙を持って、しばらく離さなかった。


夜、じいじとばあばが帰ったあと、線は静かに言った。


「じいじとばあばって、なんであんなにあったかいんだろ」


点はちょっと考えてから言った。「ずっとずっと生きてきたからじゃない? いっぱい描いてきたから」


線は「そっか」とだけ言って、また画用紙を見つめた。


第四章 季節とたんじょうび


第一幕 ハロウィン


秋になった。


町がオレンジと黒に染まるころ、線と点はドキドキしていた。


「ハロウィンって、おばけが来るんだよね?」と点が震える。 「来ない、来ない。お菓子をもらうんだよ」と線が言う。


でも本当は線も少し怖かった。


お母さん(鉛筆)が仮装を手伝ってくれた。線はがいこつになった。点はかぼちゃになった。


「似合う似合う!」とお父さん(消しゴム)が笑う。


町を歩いて「トリック・オア・トリート!」と叫ぶたびに、お菓子が増えていく。帰り道、点と線の袋はパンパンだった。


家に帰ってお菓子を並べながら、線が言った。


「来年もやる。絶対やる」 「うん!」


点の丸い目が、キャンドルの光でぽわっと光った。


第二幕 クリスマス


十二月、初雪が降った夜。


線と点は枕元に靴下をぶら下げて、ドキドキしながら眠りについた。


翌朝、靴下の中にプレゼントが入っていた。


線には新しいスケッチブック。点には色えんぴつのセット。


「サンタさんって、ちゃんとわかってるんだ……!」と線が目を輝かせる。


(実はお母さんとお父さんが入れたのだけれど、ふたりはしばらく信じ続けた)


家族四人で、雪の中を歩いた。


お母さん(鉛筆)がゆっくり歩きながら言った。「雪って、白い紙みたいね」


お父さん(消しゴム)が笑った。「じゃあ、足跡が絵だ」


線と点は、雪の上をぴょんぴょん跳ねながら、思い切り足跡で絵を描いた。


世界で一番大きな、家族の絵だった。


第三幕 お正月


新年が来た。


じいじとばあばの家で迎えるお正月は、特別だった。


おせち料理が並んで、お雑煮があって、こたつでみかんを食べながら、テレビで駅伝を見る。


「駅伝てさ、線みたいだよね」と点が言った。


「どういうこと?」


「ひとりひとりが、つながってるじゃない。バトン渡しながら。それって線がつながってる感じがする」


線は少し黙ってから「……そっか、ぼくたちの線って、そういうものか」とつぶやいた。


じいじが、線の頭をぽんと叩いた。「いいことを言う。人の縁ってのも、線みたいなもんだ。ちゃんとつながってるんだよ」


おとそを飲んだじいじは、少し目が赤かった。


第四幕 たんじょうびの朝


誕生日の朝は、特別な始まり方をする。


目が覚めると、枕元に折り紙で作った花が飾ってある。


朝ごはんのホットケーキには、チョコレートで「おたんじょうびおめでとう」と書いてある(お母さんの字は細くて綺麗だ)。


夜にはケーキ。ろうそくを消すとき、線はいつも「うまくいきますように」と思って吹いて、点はいつも「みんなが幸せでありますように」と思って吹いた。


「何を願ったの?」と聞くと、お互い「ひみつ」と言い合う。


でも、なんとなく似たようなことを願っているのを、ふたりとも知っていた。


第五章 学校と友だち


第一幕 線の冒険


学校に行くようになって、線はたくさんの線の仲間に出会った。


まっすぐな線、くねくねした線、点線、二重線。みんないろんな形で、いろんな個性がある。


線は最初、自分が太かったり細かったりすることが恥ずかしかった。強く書くと太くなって、力を抜くと細くなる。


「不安定だな、おまえ」と言う子がいた。


でも、先生は言った。「太い線も細い線も、どっちも大事。太い線は主役で、細い線は支える役。どちらが欠けても絵にならない」


線は、初めてちゃんと背筋を伸ばした気がした。


第二幕 点の悩み


点には悩みがあった。


「わたし、小さすぎて誰にも気づいてもらえない」


点線の友達も言っていた。「線の方が目立つよね。点はひとつじゃ意味がないし」


でも、美術の先生がこんな話をしてくれた。


「昔、モネっていう画家は、点々だけで絵を描いたんだよ。小さな点が集まって、大きな睡蓮の池になる。点には、そういう力がある」


点は、その日から変わった。


ひとつじゃなくてもいい。でも、ひとつひとつがちゃんとそこにいること、それが大事なんだ、と思った。


第三幕 はじめての喧嘩


あるとき、線と点は大きな喧嘩をした。


きっかけはくだらないことだった。


線が点の絵の上に、誤って長い線を引いてしまったのだ。


「ごめん、でも消せるじゃん」と線は言った。


「消したって、傷は残るんだよ!」と点が泣いた。


線は言い返せなかった。消しゴムのお父さんが消すと、確かに白く戻る。でも、消した跡には、わずかにでこぼこが残ることを線も知っていた。


その日、ふたりは背中を向けて眠った。


翌朝、線が先に起きて、そっと画用紙に何かを描いていた。


点が目を覚ますと、自分の絵の隣に、小さな花束の絵があった。線と点でできた、不格好だけれど一生懸命な花束。


その下に「ごめん」と書いてあった。


点は黙って、花束の絵に小さな点でできた蝶々を一羽、添えた。


言葉より先に、絵で謝れる。ふたりはそういう家族だった。


第六章 大人へのとびら


第一幕 線の初恋


中学になって、線にすきな子ができた。


曲線がきれいな、優しい女の子だった。名前はなみちゃん。


線は毎日、画用紙の隅に波ちゃんのことを描いた。ゆるやかな曲線を、何度も何度も練習した。


お母さん(鉛筆)は気づいていたが、何も言わなかった。ただ、毎晩よく切れた芯で部屋に入る息子の背中を、静かに見守った。


告白したのは、春の終わりだった。


「すきです。つき合ってください」


波ちゃんは、しばらく黙っていた。


「……ごめんなさい。線くんのことは、友達として大事に思ってるから」


線は帰り道、一本もくじけずまっすぐ歩いた。でも家の玄関を開けた瞬間に、ぽろっと涙がこぼれた。


お父さん(消しゴム)がそこにいた。


「……消せないな、これは」と線が言った。


お父さんはゆっくりうなずいた。「消さなくていい。この傷は、おまえの絵の一部になる」


第二幕 点の青春


点は高校で、演劇部に入った。


「セリフって、点と線でできてるよね」と点は思った。言葉が点で、声が線で、それが合わさって物語になる。


舞台に立つのは怖かった。小さな点の自分が、あんな広い舞台に立てるのか。


でも幕が開いた瞬間、点は光を浴びた。


スポットライトの中で、点はじめて気づいた。「点って、光の中では輝くんだ」


そのとき、客席の中に線の顔が見えた。


ガチガチに緊張しながらも、全力でこちらを見ている兄の顔。


点は笑いそうになるのをこらえて、セリフを言い切った。


あの笑顔が、わたしの一番大事な客席だ。


第三幕 初めての旅


家族で、はじめての旅行をした。


新幹線に乗って、京都へ。


鳥居が並ぶ道を歩きながら、点が言った。「鳥居って、線と点でできてる気がする。縦の線、横の線、それをつなぐ点」


線は空を見上げた。「確かに。でも鳥居ってさ、ずっとそこにあり続けるじゃん。何百年も」


お父さん(消しゴム)が言った。「消えないものもあるよ。消しゴムにだってわかる。消えちゃいけないものがある」


お母さん(鉛筆)が静かに笑った。「じゃあ、この旅の記憶は、消えないね」


そう。これは、消えない線だ。


第七章 それぞれの道


第一幕 線の就職


線は、デザインの仕事に就いた。


図面を引いたり、ロゴを描いたり、人に何かを「伝える形」を作る仕事だ。


最初は失敗ばかりだった。クライアントに何度もやり直しを言われた。消しゴムのお父さんがいつもそばにいるから、消して描き直すことは慣れていたけれど、社会に出ると消せない傷もある。


でもある日、線が一から設計したパッケージデザインが採用された。


シンプルな線だけで描かれた、静かで力強いデザインだった。


上司が言った。「線には魂がある。こういう線、描けるやつは少ない」


線は電話で、お母さん(鉛筆)に報告した。


お母さんは何も言わず、しばらく泣いていた。


第二幕 点の恋愛


点は社会人になって、好きな人ができた。


名前はまるくん。丸くて、温かくて、どこかお父さん(消しゴム)に似た人だった。


ふたりは映画を見て、ご飯を食べて、公園でぼんやりして。


デートのたびに、点は心の中に小さなしるしを打った。


楽しかった、うれしかった、もっと一緒にいたい。


全部、小さな点。でも積み重なると、それはとても大きな絵になった。


「わたしさ、小さな点なんだけど、丸くんといるとね、自分がちゃんと絵の中にいる気がするんだよね」


丸くんは笑った。「ぼくもそう思う。きみがいると、ぼくの絵が完成する気がする」


それが、ふたりの答えだった。


第三幕 線の結婚


線は、曲線の美しい女性と出会い、結婚した。


学生時代の波ちゃんではなく、もっと後に出会った、別の女性だった。


名前はさん。少し内気で、でも一度笑うととても明るい、そんな人だった。


式の日、お父さん(消しゴム)がスピーチした。


「線はね、太くなったり細くなったり、まっすぐなときもくねくねするときもある。でも、ずっと描き続けてきた。消してもまた描く。それが線という男です。どうか一緒に、白い紙を埋めていってください」


線は、こらえきれずに泣いた。


お母さん(鉛筆)は、ずっと微笑んでいた。


第八章 親になるということ


第一幕 線の子どもたち


線と弧さんの間に、子どもが生まれた。


最初の子は、細くて繊細な「斜線しゃせん」くん。次の子は、どこまでも続こうとする「曲線きょくせん」ちゃん。


線は、子どもたちを抱きながら、お父さん(消しゴム)のことを思った。


あの日の言葉。「消えないものもあるよ」


今、自分の腕の中にある小さな命が、その証明だと思った。


第二幕 点の子育て


点も、丸くんとの間に子どもをもうけた。


まん丸の「○(まる)ちゃん」と、やや横長の「楕円だえんちゃん」。


点はお母さん(鉛筆)に聞いた。「ねえ、お母さんはさ、わたしを生んだとき、何を思ったの?」


お母さんはしばらく考えてから言った。


「白い紙に初めて触れたときのこと、思い出したよ。どこに何を描いたらいいかわからなくて、でも、そのわからなさが嬉しかった。あなたも、わからないままでいい。子育てはね、まだ見ぬ絵を描くことだから」


点は、その言葉をずっと忘れなかった。


第九章 老いとやすらぎ


第一幕 お母さんの芯が短くなっていく


月日が経つにつれ、お母さん(鉛筆)は少しずつ短くなっていった。


何度も削られ、何度も描き、その分だけ短くなる。それが鉛筆の生き方だ。


ある日、線が実家に帰ると、お母さんがいつもの机に座って、ゆっくり何かを描いていた。


「何、描いてるの?」


「家族の絵。全員が描ければいいなと思って」


そこには、お父さんの形があり、線の形があり、点の形があり、孫たちの小さな形があった。


「お母さん、まだ描けるじゃない」


「うん。でもね、短くなると、力を入れなくてもよく描けるんだよ。歳を取ると、肩の力が抜けるみたいで」


それが、長く生きた鉛筆の知恵だった。


第二幕 お父さんの角が丸くなっていく


お父さん(消しゴム)も、長年使われるうちに、どんどん小さくなっていた。


もともと少し丸かった角が、今はすっかり丸くなった。


でも、消す力は変わらない。それどころか、長年の経験が積み重なって、どこをどう消せばいいかがわかるようになっていた。


孫の斜線くんが言った。「じいじって、なんで消すの上手なの?」


お父さんは笑った。「何度も消してきたからだよ。消して、また描いて。それを繰り返してきたから」


「じゃあ、失敗しても大丈夫?」


「大丈夫。消せるから。でも……消さなくていいものもある。その違いがわかるようになるのも、年の功っていうやつだよ」


第三幕 最後の夜


長い年月が流れ、お母さん(鉛筆)はとても短くなった。もうほとんど指でつまめないくらいに。


最後の夜、お父さんとふたり、静かに並んでいた。


「ねえ、あなた」とお母さんが言った。


「なんだい」


「わたしたち、よかったね」


「そうだな」


「たくさん描けた?」


「たくさん描けた。たくさん消せた。そしてまた描いた」


「それで充分だ」


窓の外で、星が光っていた。


消しゴムのお父さんは、鉛筆のお母さんのそばで、静かに目を閉じた。


ふたりが最後に描いた絵は、白い紙の上に、小さな点とひとすじの線だけが残る、ただそれだけの絵だった。でも、それがとても美しかった。


終章 点と線の物語はつづく


出参 線(息子)は、歳をとって白くなりながらも、描き続けた。


出参 点(娘)は、丸くなりながらも、ひとつひとつ打ち続けた。


そして線の子どもたちも、点の子どもたちも、それぞれに白い紙に向かって、自分だけの形を描き始めた。


物語は、終わらない。


白い紙がある限り、点と線は生まれ続ける。


描いて、消して、また描く。


笑って、泣いて、また笑う。


それが生きること。


そして、それが家族ということ。


最後まで読んでくださって、ありがとうございます。


この物語を書きながら、わたしは何度も自分の家族のことを思い出しました。


お父さんとお母さんが工場で生まれ、出会い、そしてわたしたち子どもが生まれた。その瞬間から、白い紙の上に物語が始まったのだと思います。


「消しゴムで消す」という行為は、ときに後悔のように見えるかもしれません。でもこの物語の中で、お父さんが消すのは「また新しく描けるように」なのです。失敗した場所を白く戻すのは、あきらめではなく、もう一度挑戦するための準備です。


「鉛筆で描く」ということは、勇気を出して何かを表現することです。うまく描けなくてもいい。曲がっていても、太すぎても、細すぎても。描いた線は、確かにそこにある。

あなたの人生も、誰かの人生も、白い紙の上の一枚の絵です。


点と線を、自由に使ってください。 消して、また描いてください。


そしてできれば、その絵を誰かと一緒に作ってください。


それが、一番きれいな絵になるから。

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