双子のカワイイ赤ちゃん象 創造力と創造生 兄妹象の冒険 1/2
皆さん、はじめまして。この作品を開いてくださり、ありがとうございます。本作『創造力と創造性 ~ふたりの象の冒険~』は、インド象の双子の赤ちゃん、リョクとセイが繰り広げる小さな冒険物語です。「創造力」と「創造性」——似ているようで、少しちがうこのふたつの言葉。辞書を引けばそれぞれに定義はありますが、私はずっとこう感じていました。アイデアを生む力と、それを形にする力は、きっと別々の生き物なんじゃないか、と。だとしたら、そのふたつが兄妹だったら? お互いを必要としながら、時にぶつかり、時に笑い合いながら生きていたら?そんな「もしも」から生まれたのが、リョクとセイです。難しいことは何もありません。ジャングルの風を感じながら、ふたりと一緒に歩くつもりで、気軽に読んでいただければ幸いです。では、どうぞ最後までお付き合いください。
むかしむかし、深い緑のジャングルの奥に、ひとつの大きなガジャ(象)の家族が暮らしていました。
ある満月の夜、母象のアンバリが二頭の赤ちゃんを産みました。
生まれた順に、お兄ちゃんには**リョク**(創造力)、妹には**セイ**(創造性)という名前がつけられました。
第一章 ふたりのちがい
リョクは、とにかくアイデアがあふれる子でした。
川を見れば「あの流れで水車を作ったらどうだろう?」、木を見れば「あの枝で橋をかけたらどうだろう?」と、次々と頭の中にイメージが広がります。
でも、リョクのアイデアはいつも大きすぎて、ひとりではなかなか形にできませんでした。
セイは、じっくり考える子でした。
リョクのアイデアを聞いて、「でも、これはどうするの?」「あそこが難しくない?」と、細かいところまで丁寧に考えます。彼女の手にかかると、ふわふわしたアイデアが、しっかりした計画になっていくのです。
「リョクのアイデアは空の雲みたい」と、村の長老象はよく言いました。「でも、セイがいると、その雲が雨になって、地面を育てるんじゃよ」
第二章 大きな問題
その年の夏、ジャングルに困ったことが起きました。
家族が毎日飲んでいた小川が、上流の岩崩れでふさがれてしまったのです。水が届かなくなって、みんなが困っています。子象たちは喉が渇き、花も木も元気をなくしていきました。
お父さん象のガジェンドラは言いました。
「大人たちは、岩を動かすために遠い山へ行かなければならない。三日かかる。それまで、みんなで水を見つけなくてはならないが……」
リョクはぴんと耳を立てました。
「ぼく、アイデアがある!」
第三章 リョクのアイデア
リョクは、大きな葉っぱを広げて、セイに説明し始めました。
「朝、ジャングルの葉には露がいっぱいつくよね。あの露を集めたらどうだろう? 大きな葉っぱをたくさん並べて、斜めに傾けて、真ん中に大きなバナナの皮で作った器に集める!」
セイは少し考えました。
「……でも、露だけじゃ足りないよ。みんな大きいし、何百枚も葉っぱがいるよ。それに、朝の短い時間しかできない」
「じゃあ、夜の霧は?」とリョクは続けます。「夜も同じようにできるんじゃないかな?」
セイの目が輝きました。
「あ! それなら……ジャングルの霧が一番濃いのは、あの大きなタマリンドの木の近くよ。あそこを中心にすれば、昼も夜も集められる!」
ふたりのアイデアが、ひとつになった瞬間でした。
第四章 みんなで作る
翌朝、リョクとセイは仲間の子象たちを集めました。
リョクが大声で呼びかけます。「みんな、やり方はセイが教えてくれる! ぼくの言う場所に葉っぱを運んで!」
セイが静かに、でもはっきりと指示を出しました。「大きな葉っぱは、この角度で。ほら、水が真ん中に流れるように。小さい葉っぱは二枚重ねて……」
子象たちは長い鼻を使って葉を運び、大人たちも手伝いました。夕方までかかって、タマリンドの木の周りに、不思議な「葉っぱのネットワーク」が完成しました。
その夜、ジャングルに霧が流れてきました。
朝になると……バナナの器に、きらきら光る水が、たっぷりと溜まっていました!
「やったあ!」
みんなが鼻を上げて喜びの声を上げました。
第五章 長老の言葉
三日後、お父さんたちが戻ってきました。小川も元に戻り、ジャングルにまた水が流れ始めました。
長老象のアーユシュが、リョクとセイの前に来て言いました。
「よくやった。でも、ひとつ聞かせておくれ。誰のアイデアだった?」
リョクとセイは顔を見合わせました。
「ふたりの、です」と、声をそろえて言いました。
長老は目を細めました。
「そうじゃ。**創造力は翼を持ち、創造性は足を持つ**。翼だけでは地に降りられず、足だけでは空を飛べない。ふたりがそろって初めて、本当のものが生まれるんじゃよ」
エピローグ
それからも、リョクはどんどんアイデアを出し続けました。セイはそれをひとつひとつ丁寧に育てていきました。
ジャングルの仲間たちは言います。
「あの双子が一緒にいると、なんでも不思議とうまくいく」と。
そして、ふたりはいつまでも、仲良く並んで歩き続けました。
大きな耳をぱたぱたさせながら、今日もどこかで、新しい何かを生み出しています。
おわり
「創造力と創造性は、対立するものではなく、補い合うもの」
【あとがき】
最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
リョクとセイの冒険、いかがでしたか?
この物語を書きながら、私自身もずっと考えていました。何かを作るとき、私たちの中にも「リョク」と「セイ」がいるのではないか、と。
朝ふとしたときに浮かぶ「あ、こうしたらいいかも」という閃き——それがリョク。
「でも、実際にやるにはどうすれば?」と考え始める慎重な自分——それがセイ。
どちらかが強すぎると、アイデアだけが空回りしたり、逆に考えすぎて動けなくなったりする。ふたりがちょうどいいバランスでいるとき、初めて何かが生まれる気がします。
長老のアーユシュが言った言葉、「創造力は翼を持ち、創造性は足を持つ」——これは、この物語を書く前から心の中にあった言葉です。むしろ、この一文を書きたくて、物語全体を組み立てたと言っても過言ではありません。
インド象を選んだのは、彼らが持つ「知恵」と「家族のつながり」への敬意からです。象は本当に賢く、感情豊かな生き物。そんな彼らの家族の中に、創造のふたりを置いてみたくなりました。
至らない点も多かったかと思いますが、少しでもほっこりしていただけたなら、書いた甲斐がありました。
感想・ご意見など、お気軽にコメントいただけると励みになります。
またどこかで、リョクとセイに会えますように。
筆者より




