ボウリング
俺は、恋人同士のボウリングのシチュエーションを出来る限り頭に思い描きながら戻ってきた。
須賀みかにレモンウォーターを渡す。
「あっ、ありがとう。」
「もうボールは持ってきてあるな。俺も持ってこよう。」
━━液晶画面には、【みか】と【ゆうと】、スコア表が表示されている。
「ボウリングって久しぶり過ぎて、どう投げればいいか忘れちゃったなあ。上手く投げれるかな・・」
「ま、一回投げてみなよ。最初は、みかからだよ。さあ投げて投げて。」
ボールを持った須賀みかは、レーン上に立ち、ちょっとぎこちなく構えている。俺は座って後ろ姿を眺めている。
「一投目!がんばれー!」
そんな俺のかけた言葉を聞いてか、身体が動き出した。
3歩、助走をつけて右手に持ったボールをピン目掛けて投げ入れた。
後ろ姿を見て、ひらり、と揺れる白と水色のワンピースが気になった。
その時になって、“やばい”ということに気付いたのだ━━
ボールを投げ入れた瞬間、少し前屈みになった身体のせいで、
ひざ丈まであったはずのスカートがふわっっと舞い上がり、華奢な体型なイメージの割りにいい感じの肉付きな白い太ももがはっきりと見えて━━━
(スガちゃんのスカート・・・が!!)
いけないものを見てしまった気がして、心がドキドキしている。スガちゃんがボールを投げる度にこんなドキドキしなきゃならないのか・・・
ピン目掛けて投げ入れたボールは、途中カーブして左の溝に落ちていってしまった。
「えへへ、一投目からガーター出しちゃったよ。次は真ん中もっと意識してみるかな。」
残念そうな表情を浮かべながらボールを持って、すぐにレーン上に戻って行ってしまった須賀みかに、俺は言うことが出来なかった。
二投目ということで、さっきより大きく動いて踏み込んだ━━そのせいで、より、勢い良くスカートが舞い上がった。
(スガちゃんにスカートが危ないことになってると言うことを言わなきゃだめだ・・!)
そう思いつつ俺は、それに目が釘付けになってしまう━━━
いい感じの肉付きのある白い太ももが大胆に見えている。さっきはギリギリのラインで隠れていたから見えなかったが、今度は光沢のあるシルクの生地をしたピンク色で、少々、色っぽいパンツが見えてしまっていて━━━
「また、ガーターかあ。うーーーん。」
俺の座っている場所に戻ってきた須賀みか。
他のレーンにいる男子の集団から、こっちをちらちらと視線を感じるのだが、さっきのを見ていたのかもしれない・・
「スガちゃん、ちょっと、待ってて。俺、今から買い物してくるから。えっと、準備運動とかしといて。」
「買い物・・? え、今・・?」
疑問を残したまま、財布をもって駆け出していく。ボウリング場の隣に手頃な価格のファッションセンターがそういえばあったな。
すぐに手頃な値段の無難な女性用のハーフパンツのジャージを見つけて買い、戻って来ては須賀みかに渡した。
「これ着ないと、ボールを投げるとき見えちゃうから・・な?
てか、本当、遅くなってすまない・・」
少しの罪悪感で顔をまともに見られない。俺。
「・・・・!!」
“見えてた”ことを、今知った須賀みかの顔がみるみる赤くなっていく。両手をぽんぽんとスカートに当て、恥ずかしがっている。
「ぱんちら・・・してた? み、み、見た? 」
「見てしまいました。」
何故か敬語になってしまった。俺。
立ち上がって、袋から取り出したジャージをスカートの下に履いた。
「・・・ジャージ買ってきてくれてありがとう。」
そう言いながら、下ろしている長い髪の毛を両手で纏めて高い位置で結んだ。赤いリボンが付いてある。
こちらを振り返るなり、
「勇人、勝負しよっ!!
スコアが高い方が、一つお願いが出来るって事にして。」
まるでアニメのヒロインのような、響く甘ったるくて可愛らしい良い声で須賀みかは言った。
事実、彼女はプロの新人声優で、アニメのヒロインをやっているのだが。
ポニーテール姿を見ると、家へ行った時に観た、黒装束のクノイチの衣装コスプレで踊っていたショートPVを思い出してしまうな・・・
それと、今の台詞、原作のデートシーンで使われてた言葉に似ていた。今ここで再現しようとしているのだろう。
それならば、俺も乗っかるしかないな。
「いいよ。でも・・勝ったら何でもしてくれるよな? 勝負なんだから。」
“何か”を賭けた俺達の勝負は今始まった━━━




