第十八話 春遠からじ
三学期。
別れの季節だった。
雪が降っていた。
静かに。
ゆっくり。
校庭。
旧校舎。
モルック棒。
全部の上に、
白が積もっていく。
*
放課後。
旧校舎第三準備室。
「……」
なんとなく静かだった。
最近。
みんな少しずつ、
“終わり”を意識していた。
石嶺先輩。
周瑜先輩。
曹操会長。
関羽先輩。
三年生。
卒業する。
当たり前だけど。
なんか。
全然実感がなかった。
*
窓の外。
雪。
白い空。
僕はぼんやり思い出していた。
去年の今頃。
ダイエット部は、
三人しかいなかった。
劉備小桃。
関羽先輩。
周瑜先輩。
そこへ。
曹操会長が現れて。
僕が入って。
石嶺先輩が来て。
呂布が来て。
気づけば。
毎日騒がしくなっていた。
*
「孔明〜!」
劉備小桃が笑う。
「聞いてくれ!」
「なんですか」
「卒業式で泣きそう!」
「早いですね」
でも。
劉備小桃の目はもうすでに少し赤かった。
*
その時。
関羽先輩が静かに言った。
「……終わるんだなぁ」
珍しく。
真面目だった。
「先輩……」
「なんか」
笑う。
少し寂しそうに。
「ずっと続く気してた」
静寂。
雪。
白い息。
その時。
曹操会長が言った。
「終わるから美しいんだ」
「うわ会長それ卒業アルバム載るやつ」
「載せろ」
普通に言った。
*
卒業式当日。
雪は止んでいた。
空気だけが冷たい。
体育館。
拍手。
証書。
別れ。
そして。
「……」
石嶺先輩。
制服。
最後。
なんか。
綺麗だった。
*
式後。
旧校舎第三準備室。
最後の部活。
「……」
静かだった。
誰もふざけない。
珍しく。
その時。
周瑜先輩が言った。
「孔明」
「はい?」
「次、お前らの代だ」
「……」
「ちゃんと続けろよ」
「はい」
その横。
石嶺先輩が笑う。
「腹筋も戻しなね?」
「まだ言います?」
最後までそれだった。
*
夕方。
校庭。
雪解け。
地面の下。
春を待つ草花。
僕はふと思った。
終わる。
でも。
終わるだけじゃない。
次が始まる。
僕と劉備小桃は三年生になる。
呂布は二年生。
新しいダイエット部。
新しい季節。
*
「……さよなら先輩たち」
僕は小さく呟いた。
なんか。
少し泣きそうだった。
*
――しかし。
現実は、
そんな綺麗に終わらなかった。
*
四月。
新学期。
劉備と新入生勧誘の打合せのため、朝早く部室に向かった。
「おはよー!」
石嶺先輩だった。
「えっ」
普通に部室へいた。
「大学は!?」
「午後から〜」
軽い。
*
その横。
曹操会長。
「……」
腕組み。
圧。
「会長も!?」
「週二で来る」
「なんで!?」
「天下統一は終わっていない」
終わってる。
完全に。
*
さらに。
「おっす」
関羽先輩。
制服。
「……」
「……」
「……なんで?」
静寂。
関羽先輩は目を逸らした。
「……留年した」
「ええええええ!?」
しかも。
「同じクラスだぞ孔明!」
「最悪だ!!」
*
劉備小桃が机叩いて笑ってる。
石嶺先輩も笑ってる。
呂布は静かに言った。
「……関羽先輩らしいですね」
周瑜先輩だけ、
少し遠くから笑っていた。
春の風。
新しい学年。
「部活紹介はちゃんとやりましょうね」
「おう、まかせたぞ、孔明!」
「新入生いるから、諸葛亮と呼ばないで!」
でも。
結局。
ダイエット部(三国志研究会)は、
あまり変わっていなかった。
そして僕は思う。
青春って。
終わりそうで。
案外、
終わらないのかもしれない。




