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第二十二話 欲望の街 博多

博多。


それは欲望の街。


世界の食はここに集い、

クッキングパパにより統治される美食のディストピア。


豚骨ラーメン。


もつ鍋。


明太子。


焼き鳥。


ごま鯖。


うどん。


屋台。


炭水化物。


脂。


塩分。


糖質。


人類の欲望、そのすべてがここにはあった。


そして今。


僕たちダイエット部は。


夢にまで見た、

ダイエット全国大会の聖地にいた。


「……やべぇ」


関羽先輩が呟く。


博多駅前。


夕方。


ネオン。


漂う豚骨の香り。


完全に危険地帯だった。


「空気がもう美味い」


「それ多分ラードです」


僕が言うと、

関羽先輩は真顔になった。


「つまり栄養か」


「違います」



全国高校ダイエット甲子園・全国大会。


宿泊先は、

なぜか大型健康ランドだった。


「絶対スポンサーだろこれ」


周瑜先輩が呟く。


館内には。


サウナ。


岩盤浴。


低糖質レストラン。


マッサージチェア。


酸素カプセル。


完全に人類を甘やかす施設だった。


「諸君!」


劉備部長がロビーで叫ぶ。


「ついにここまで来た!」


拍手。


「我ら織冠高校ダイエット・モルック戦略研究部!」


「長い」


「全国制覇まであと少しだ!」


「まず予選突破です」


だが。


部長の目は本気だった。



その夜。


僕たちは博多の街へ出た。


危険だった。


本当に。


「うわぁ……」


屋台。


湯気。


匂い。


照明。


全部が食欲を刺激してくる。


「あれ見ろ孔明」


曹操会長が指差す。


『背脂地獄盛り』


「地獄って書いてある!」


「正直だな」


さらに。


『禁断の明太バター焼きラーメン』


「禁断って書いてある!」


「法に触れてはいないんだな」


博多。


怖い街だった。




十分後。


僕たちは屋台にいた。


だが。


意外にも。


ちゃんと選べば、

ダイエット中でも食べられるものはあった。


焼き鳥(塩)。


豆腐。


野菜巻き。


炭酸水。


「なるほど……」


僕は少し感動していた。


「楽しみ方ってあるんだな」


我慢だけじゃない。


工夫する。


選ぶ。


続ける。


なんか。


この数ヶ月で学んだこと全部だった。


その時。


「孔明」


劉備小桃が小声で言った。


「はい?」


「お前、最初よりかなり変わったな」


「……そうですか?」


「うん」


小桃は女子みたいに笑った。


屋台の赤提灯の光が、

横顔を少し柔らかく見せていた。


「最初、死んだ魚みたいな顔してたし」


「失礼ですね」


「今はちゃんと楽しそうだ」


ドクン。


まただ。


最近、

劉備部長が普通に女子として刺さってくる瞬間がある。


危険だ。


その時。


関羽先輩が泣いていた。


「うめぇ……」


「何食ってるんですか」


「低糖質焼き鳥」


「泣くほど?」


「青春の味がする……」


「情緒どうなってるんですか」


その瞬間だった。


屋台テレビから、

全国高校ダイエット甲子園の特集が流れた。


『今年最大の注目校――』


映ったのは。


メンバー全員マジボクサーで構成された鴨川高校。


そして。


僕たち。


『異色の織冠ダイエット・モルック戦略研究部』


「全国放送されたぁぁぁ!!」


劉備部長が叫ぶ。


「しかも長い!」


店のおじさんまで笑っていた。


でも。


悪くなかった。


博多の夜風。


笑い声。


ラーメンの匂い。


そして。


意味不明な仲間たち。


僕は少し思った。


この夏。


きっと一生忘れない。



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博多駅の中で誘惑に負けなかったのはすごい
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