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勇者なっさんの苦悩  作者: KP


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パーティの仲間が色ボケすぎて困る


私は勇者なっさん。

憎き魔王を打ち倒し、世界に平和を取り戻すべく冒険と戦いの日々に身を投じている。

そんな私には、頼もしき仲間がいる。

戦士おいっす。盗賊とんずらー。

もちろん彼らも私と志を同じくし、義勇心に駆られて立ち上が


「今日こそ俺の愛を受け止めてくれー!」

「へっ、誰が!やーなこった!」


………。

うん。

ごめん、見栄張った。

彼らは確かに頼れる仲間ではある。

だが!

崇高なる使命も志も覚悟もなーんもあったもんじゃない!

冒険の傍らで、おいっすはとんずらーの尻ばっか追いかけ回してるし、とんずらーはそんなおいっすを嘲笑ってからかうばかり。

…え?逆?

恋の鞘当て追いかけっこするついでに冒険してる?

………ぐぬぬぬぬ!?

おまえたち、そこに直れー!!!




そもそも、パーティ結成の時から不穏な感じではあった。

勇者として王様に魔王討伐を依頼され、さっそく仲間集めに冒険者ギルド兼酒場へと足を運んだ私。

最初は期待に胸を膨らませていた。

これからどんな仲間と出会えるのだろうと。

勇者パーティなんてきっとみんな入りたがるだろうから、あんまり大勢だと断らなくちゃいけないかなー?申し訳ないなー?…とかって考えてさえいた。

見当違いもいいとこだった。

魔王討伐のために力を貸してくれ!

そう呼びかけた私に返されたのは、ただただひたすらに長く重苦しい沈黙のみ。

陽気に酒を飲んでいた連中も一瞬でシン…と静まり返ってしまい、そして誰も私と目を合わせようとはしない。

あれっ?…

戸惑い、冷や汗を流す私の耳に、ボソボソと小声でのやり取りが聞こえてきた。

「魔王討伐なんて冗談じゃねーよ、命がいくつあっても足りゃしねえ」

「俺たち、その日暮らしでテキトーに楽しくやれてりゃいいしー?」

「んなもん勇者の仕事じゃねえか。俺たち無関係の冒険者に話を持ってくんなってんだ」

…なんということだ!?

世界中の人々が魔王軍の被害を受けている。

ここにいる連中は、曲がりなりにも戦える技能を持った者ばかりだ。本来なら皆のために率先して立ち上がるべきだろうに!?

気概も矜持もありゃしない。

その上、勇者である私に丸投げとか…他力本願で無責任もいいところだ。

勇者だからって、見誤るなよ!?

私はまだモンスターと戦ったことすらないレベル1なんだぞ!?

今一人で町を出ていったら、ザコ扱いのスライムにすらボコられて負けるわ!

そうならないために、パーティを組む仲間が必要だというのに…!

ギリギリと歯噛みしながら周囲を睨みつけるように見回したが、やはり誰も立候補しようとしない。こそこそ、影で互いを肘でつつき合って、嫌なことを押し付け合おうとしている気配さえした。

頭に来るが、かといって無理強いできることでもない。

どうしたものか…と為すすべなく立ち竦んでいた時だ。

酒場のスイングドアが音を立てて開き、何者かが酷く取り乱した様子で中へと飛び込んできた。

装備品の雰囲気から、盗賊と思われる彼。

開口一番、叫んだ。

「やべえ、下手打った!誰でもいいから匿って助けて!?」

…これが後に仲間となる、とんずらーとの出会いだった。

どうも只事ではない。

私の性分として放っておくこともできず、事情を尋ねてみると、

「ちょっとこう……ヤバい筋の人のおうちに盗みに入っちゃって追われてるんだ!」

オイ。

「金目のものもたんまりあったけど、裏帳簿とか口に出すのもやべー犯罪の証拠とか見つけちゃって!マジやべえ!このままじゃ俺、消されちゃう!」

それは…大変じゃないかと思うが。

なんだか同情しにくいなぁ。

そもそも盗みになんか入るなよ。

「盗賊としての習性なんだ!」

私は勇者だからそーいうのはよく分からんなぁ。

「えっ?あんた、勇者なの?」

ああ、そうだ。

魔王討伐のための仲間を募りにここに来たのだが、誰もパーティに入りたがらなくてな…

「じゃじゃじゃじゃじゃあッ!俺!!俺が立候補しますっ!!!」

えっ、君が?

「このままじゃ明日の朝には海に浮かんで冷たくなってそーだし!勇者パーティに入ればあいつらも簡単に手出しできなくなるはずだ!魔王討伐とか超やだけど俺の命には代えられないッ!!」

…ある種、魔王よりも恐れられているな。その筋の人。

遠い先の大きな危険より、身近にある危険の回避を選んだか。

そんな動機でパーティインして欲しくないんだが…?

「いーじゃん!どーせ他に入りたがる奴もいなかったんだろ!?」

まあ、そうだけど。

「なら決まりだ!俺たちナカーマ!だから俺のこと守ってね勇者様!」

とんでもないお荷物を抱え込んだ気が…!?

「待て、ならば俺も共に行こう」

おっ!?

隅のテーブルでひとり静かに飲んでいた男が、ガタッと椅子から腰を上げて…!?

私よりも頭一つ分は背が高い!

なんという偉丈夫だ!

筋骨隆々で見るからに歴戦の戦士といった佇まいで、全身から強者のオーラを放っている!

君もパーティに入ってくれるというのか!

今度こそ本当に頼れる仲間が出来た!

「えー?俺だっているのに失礼だなー」

ぶつくさボヤいてる盗賊のことは黙殺することにして…

ありがとう、君が一緒に来てくれるなら百人力千人力だ!

しかし、一体どういう心境の変化だ?

さっきまでは君も私と決して目を合わせようとはしなかったのに…?

「それは………彼のせいだ」

えっ?

「えっ?俺?」

「彼は、俺からとんでもないものを盗んでいった…!」

なんだと!?

「ええっ!?俺、身に覚えねーけど…!?」

こらっ!盗賊!

人様のものを盗んでしかも盗んだことを忘れるなんてふとい奴だ!

ちゃんと返して謝りなさい!

「だ、だって…本当に覚えが…!」

モメる私と盗賊をよそに、屈強なる戦士は言った。

いかつい顔にポッと朱色を灯して、

「彼が盗んでいったもの………それは、俺の心です」

「は…?」

「好きだ!惚れた!俺と付き合ってくれ!」

「えええ〜〜〜!?…どうしよっかな?」

「くっ、なんという小悪魔めいた!?だがそこがいい!共に旅をする間に必ずおまえを射止めてみせる!」

「いーよお?やってみればー?」

「応とも!」

私をそっちのけで盛り上がる二人。

………あのさぁ。

いくら私が勇者だからって、そこまで寛容じゃないんだぞ?

すっごいイラッとした。

それが、戦士おいっすとの出会いだった。




うん。

こうして振り返ってみると、二人とも第一印象最悪だな…(遠い目)

幸いというかなんというか、二人とも冒険者としての能力は抜群だったのが救いだが。

過酷な魔王軍との戦いの中で、何度助けられてきたか知れない。

私も含めて皆レベルが上がり、おいっすは今や百戦錬磨の大戦士。とんずらーは神業の大盗賊。私もスライムくらいは小指一本で倒せるほどに強くなった。

今や、冒険を続けていくのに、仲間の力は不可欠だ。


「好きだー!…うおおおおっ!また逃げられた!?」

「へーん、俺のスキルレベルカンストした身かわし脚についてこれるわけねーだろっ」

「くぅぅっ!突進レベルをもっと上げなくては…!」

「じゃあ俺、今度は素早さカンストさせちゃおっかなー」


…冒険や戦い以外のところでばっか能力を使いがちなのが、本当に心底残念無念だが。

あいつら、事あるごとにじゃれ合ってイチャイチャと…!

一見、おいっすが一方的にとんずらーを追いかけてるだけのようだが、私には分かる!分かっちゃう!

追いかけられるのを楽しんでるだけで、とんずらーもまんざらでもなく思ってるってこと!

こんなの毎日見せつけられてたら、こっちのがおかしくなるわ!

勇者、いい加減怒っちゃうぞ!?


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