魔竜との戦い その2
「みんなぁ!みんな無事⁉︎」
まわりは土煙で視界がゼロに近い。誰か返事して。
「フレデリカ様。大丈夫です。私の盾が全員分間に合いました。それよりも……」
すぐ近くから盾さんの声がした。
「うん。わかってる」
やっぱり盾さんも、気付いている。
何かが魔竜と一緒にトビラから出てきた。しかも、魔竜を盾にして。まるで、待ち伏せされているのがわかっていたかの様に。
「叡智さん!閃光さん!いる⁉︎」
「閃光はここに。叡智も無事を確認しております」
いつの間にか、閃光さんが後ろでひざまずいてていた。
「閃光さん。アレどう思いますか?」
「はい。魔竜と同じ空間から出てきたのを確認いたしました。少なくとも魔界の生き物である事は間違いないと思われます」
ピカァー
目の前が輝き叡智の聖騎士が現れた。
「みなさま無事でなによりです。ここは距離をとるという意味で一度撤退しましょう。敵が未知数すぎます。探ってみたのですが、あたしでも分析できません。転移します。みなさん固まって……」
ヴォォォォ!
叡智の聖騎士のいた場所を青白いエネルギーの帯が通り過ぎていった。視界がホワイトアウトして何も見えなくなった。
時間の経過で視力が戻ってくる。
白い奔流が通り過ぎたあとに叡智の聖騎士の姿はなかった。
「叡智さぁぁん!」
幼くて人懐っこい笑顔が頭に浮かぶ。
「お前ぇぇ!」
考える間もなく突っ込んでいた。
盾の聖騎士が制止する声がしたが止まれない。
右手に蒼の剣を呼ぶ。
今ある全ての魔力を蒼の剣へ。この子なら私の魔力の全てを受け止めてくれる。
空間が魔力の飽和状態に達した。溢れた魔力がプラズマとなり夜の暗闇を昼間のように輝かす。
「よくもぉ‼︎」
何かの気配に向かって右手を振り下ろす。
何かわからないけど消えてしまえ!
ガキィッ
当たった!このまま真っ二つに切り捨ててやる。
バチバチバチッ
剣に伝導している魔力が逃げ場を失い、光と熱を爆発させている。構わない。私の魔力が尽きるまで送り続けてやる。この敵が消滅するまでやめてあげない。姿は見えないけど、そんなものは後で確認すればいい。
「このまま斬れてしまえ……」
グワァ
煙と水蒸気の中から腕が伸びてきた。
瞬間、目の前が真っ暗になる。
「きゃあああ‼︎」
顔面を掴まれた。
剣から手をはなし両手で腕を引き剥がそうとするが、ほんの僅かも動かない。
「は……離せ……くっ、蒼の剣……助けて……」
一番の相棒に意思を伝える。
だが、まわりの状況に変化は起きない。
「う……嘘……あなたも捕まっているの……そんな……」
確信してしまった。自力じゃ逃げられない。
「フレデリカ様!すぐに!」
閃光さんの声だ!
「その手を離してもら……ぐおっ」
強い衝撃の後、剣の聖騎士が遠くに吹き飛ばされていくのを感じた。
「閃光……さ……」
ガシッ
次の瞬間、心臓を鷲掴みにされた様な感覚が走る。苦しい。
「お前たちは何者だ。我と同じ気配の者のようだが」
耳からじゃない。
心の中に直接話しかけてくる声があった。
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