魔竜との戦い その1
全ての魔力を解放する。
私のアドバンテージは魔力に底がない事。
最初から全力解放しても息切れする事はない。
「蒼の剣!」
背中で待機中のパートナーは、出現予測ポイントの真上の位置へと翔ぶ。切先は魔の気配のする一点に狙いを定める。
魔力を送り、美しい青色の剣を私の色で染め上げた。透き通った美しい蒼色は、ゆっくりとアメジスト色に染まっていく。
紫に輝くこの子は私の思いに応えてくれる。出現と同時に人間界最速の突きを魔竜に撃ち込んでくれるはず。
頼もしい味方ばかりだ。もう心配する事は何もない。
私がやる事は一つだけ。一撃で魔竜の命を摘み取る。それだけを考えればいい。
剣を抜き刀身に魔力を流す。
「私に出来る最強の一撃を……」
剣に施した魔法のコーティングは二十四層にした。
「攻撃力追加……攻撃力追加……攻撃力追加……」
攻撃力上昇の魔法付与を二十五回重ね掛けする。
「筋力上昇……素早さ上昇……」
これが私の考えた『元々の攻撃力の低さ』をカバーする方法。難しいのは二十四層の魔力のコーティングを維持する集中力。これが途切れると付与魔法の重ね掛けに耐えられなくなった剣自体が粉粉に砕け散る。
もう他には気が回らない。あとは突貫するのみ。
右手の剣を逆手に持ち替える。
突撃するだけなら、この方がいい。
ドォォォォン!
闇夜の中に巨大な翼の生えた漆黒の何かが羽ばたいた。
闇夜なら視認が難しいだろうけど、今は月が照らしてくれる。
お月様ありがとう。
心の中で手を合わす。
見えた!爬虫類の体型をしているドラゴンはシルエットでも首の特定がしやすい。
「いきます!」
叫ぶと同時に飛び出す。
加速の魔法で初速度からマックススピードだ。
絶対に避けれない!
ザクシュ‼︎
一瞬だが、リアルで確かな手ごたえが右手に伝わってきた。
「斬れたぁ!」
みんなへの報告と嬉しさで思わず叫ぶ。
下を見る。
蒼の剣が切り落とした首を真上から刺し、そのまま地面に張りつけている。
閃光さんは残った胴体を微塵切りにしていた。これではもう復活できない。
よかった。一撃で終わった。やっぱり下準備は大切ね。
安心で着地した地面に座り込む。
剣の魔法もすべて解除した。
剣も無事だ。よかった。
「はぁ、疲れたぁ」
早く帰ってお風呂に入りたい。緊張する事がこんなに疲れるなんて。
魔竜の胴体はすでにミンチ状態で原型をとどめていない。剣だけであそこまでやるなんて流石。また新しい技を教えてもらわないと。
「フレデリカ様ぁ!まだです‼︎盾のお姉ちゃん!ガード!」
叡智の聖騎士の叫び声が響きわたる。
背後に紫色の大きな壁が現れた。
直後に、周辺一帯を爆風が襲った。




