魔竜ベルハザード再び
手のひらくらいの空間にパリパリと電撃が走っているのが観察できる。電撃の光が一瞬だけ暗闇を晴らす。
視覚的には空間の裂け目や入口は見えないが、確実に魔界との空間がつながり始めている。
「おそらくですが魔竜ベルハザードも前回の教訓で一気にこちら側に進入してくると思われます。あたしの考えとしては、卑怯者と罵られようが、実体化した瞬間に首を落としてしまうのが最善かと思います」
私も出来たらそうしたい。でも正直、魔界四位の実力が不明だ。一撃で仕留めきれなかった時の予備パターンも考えといた方がいいかもしれない。
閃光さんも呼び戻した。四人とはいえ、今の私達からすると最大戦力だ。
「わかったわ。魔竜の頭部が見えたタイミングで首を斬りにいきます。念のため閃光さんも他の部位お願いしてもいいですか?」
「承知いたしました。斬れるだけ斬りにいきます」
「盾さんはいつでもガード出来るように準備お願いします。叡智さんは敵の分析お願い」
「防御はお任せください。誰も死なせません」
パキ……パキン……
近くで何か音がする。
パキパキ……バキッ
耳を澄ます。
何かにヒビが入る音がする。
「フレデリカ様!来ます!」
叡智の聖騎士が身構える。
想像していたよりも禍々しい。
肌の表面が焼かれるような感覚に襲われる。
「みんなの力もブーストします!ぶっつけ本番でゴメン!上手く使って!」
魔力を解放する。これは魔界の技だ。自分と自分に従う者の力を大幅に上昇させる。今まで使うのを躊躇ってきた。おそらく、みんな魔に近い存在になってしまうからだ。でも死人が出るよりはいい。
聖騎士達の体から紫色に輝くオーラが吹き出した。
「フレデリカ様……力が……これは。すべてが……すべてが研ぎ澄まされていく」
「閃光さん!全力で斬ると剣が折れます。コツは剣に魔力をコーティングするイメージです。精神を研ぎ澄ますほど切れ味が増します」
剣の聖騎士が背中に差している刀を抜く。
紫色のオーラが刀身に伝わっていく。
元々身長ほどある刃からオーラが伸び、さらに倍くらいの長さになる。
「フフフ……容易い。このやり方なら全力で斬り伏せる事ができる。我に切れぬもどなど存在しない」
普段は表情が読めない聖騎士が不敵な笑いを浮かべている。
「盾さん!防御力が圧倒的に上がっているはずです。一度に出せる防御壁の数も大きさも大幅に上がってます。お願い!その盾でみんなを守って!」
盾の聖騎士が両手を前にかざす。
いつもは見えないはずの盾が視覚的に確認する事ができる。
数十の紫色に光り輝く盾が目の前に展開された。
「フレデリカ様……この昂ぶりが抑えられません。あの魔竜程度、一瞬で圧死させてやります」
聖母の様な優しい微笑みが、今は妖しい妖艶な微笑みに変わっている。
「叡智さん!あなたは……」
「大丈夫ですフレデリカ様。あたしは冷静ですよ。サポートはあたしに任せて、心置きなく戦いください」
「ありがと!任せるわ!」
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