特訓 その2
「ちょ……ちょっと!いま何したの⁉︎全然見えなかったんだけど。完全に消えたんですけど!」
まだ背中のゾクゾクがおさまらない。
「これは閃光さんに教えてもらいましたよ。コツは相手の人の目を観察して、まばたきで目を閉じた瞬間に最速で動くんですよ。で、わたしのオリジナルとしては、それに加えて気配ゼロにするんです」
「うう……私にはそんな技術教えてくれなかった……帰ってきたら裏切り者と罵ろう。聖騎士の人にはコレが一番効く」
「ふふ。これでわたし勇者三人の中で一番強くなったかもしれない。帰ったら『なんちゃって頭脳担当』をガチ勝負でのしてあげよう。フレデリカさん。今日はご機嫌なので、わたしが夕飯作っちゃいますね」
青の勇者くんの事ね。気持ちわかるなぁ。
『年のわりに子供っぽいですね。ははは』
なんて言われた時は、私も剣の修行と称して少し強めに殴っちゃた事あるなぁ。懐かしい。
「ほんと?ニーサちゃんの手料理なんて貴重だなぁ。楽しみにしてるね」
「はい!こう見えて料理できるんですよ。楽しみにしていてください」
強くて、可愛くて、料理できるなんてパーフェクト花嫁候補だ。我が家に迎えたいくらいだ。
「お待たせしました。わたしの母がよく作ってくれた料理です。トマトとチーズとミンチを炒めたものです。トマトが嫌いでなければお口に合うはずです。張り切りすぎて多めに作ったので頑張って食べちゃってくださいね」
「いただきます」
手を合わせて感謝する。
酸味の効いたスパイシー香りが食欲をそそる。
とりあえず一口……
「うん!美味しい。」
ガーリックの強い主張をチーズがまろやかにしてくれて、丁度いい。口に入れた瞬間、いろいろなスパイスの香りが広がり、さらに食欲を増してくれる。
ありあわせのもので作ったと言っていたスープもクリミーで美味しい。
もっとホワホワしてるだけの女の子だと思っていたけど間違いだった。
「なんでしょう。この舌を刺激するものは。フレデリカ様のお作りいただくものと同じ濃い味付けなのに、ニーサ様のお料理の方が深い何かが……素敵です」
もしも、食を評価したりレポートする様な職業があったら、盾の聖騎士さんはプロフェッショナルね。
それよりも……
「盾さん。どうせわたしの料理は浅いですよ……」
「ち、違うんです!別にフレデリカ様の料理が劣っているという事ではなくて……」
「盾のお姉ちゃん。フレデリカ様拗ねちゃいましたよ。フレデリカ様の味は、過去にお付き合いをしていた男性の方の好みの味に合わせてらっしゃるのです。だからその方以外の人には合わせる必要がないんですよ」
「ちょ、ちょっと叡智さん⁉︎」
何言ってるのこの子は!そんな事言ったら……
「ええー!フレデリカさん!お付き合いしている男性とかいらっしゃるんですか⁉︎わたし聞いてません!しましょう!ガールズトークしましょう!わたし今夜はフレデリカさんと一緒に寝ます」
あぁ、もう。予想通りになったし。
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