窮地
「マズイわね……」
蒼の剣を使えば楽勝なのに。
でもあの子達に見られたら南の魔女って事バレちゃうし。
しかも仲間を呼ばれた。
いったい何匹いるんだろう。
見えている範囲で八匹。それ以外にも森に潜んでいるやつがいる。
「スパーク!あなた達、あと何匹倒せそう?」
「オレはまだ戦えるけど、リンクとニーサが……」
わかってはいたけど。
私が戦いはじめたら、別のサルがあの三人を狙う。それは、先程の挙動でわかった。あの子達を守りながら戦うには……
「よし、この方法でいこう。私って天才か。この方法なら、すべての問題点をクリアできる」
「スパーク!リンクとニーサの三人で固まって!そうしたら、その場から絶対に動かないで」
「えっ?どういう……」
「うるさい!黙って言うこと聞いて。時間ない!」
本当に時間がない。今一斉に襲われたら三人の事を助けられない。
「シャルルさーん!いいよ!二人とも、ここにいる!」
「了解!三人とも。ちょっとだけ寒くて熱いけど我慢してて。なるべく早く終わらすから!」
剣を地面に突き立てる。
お願いだからまだ襲ってこないで!
「終わらない極寒の凍てつきを。絶対氷壁!」
雷の様に地面を氷が走っていく。
氷の雷は少年たちの前で何かに当たった様に弾けて、三人をドーム状の氷の部屋で覆い尽くした。
「地獄の業火よ、壁となって触れるものすべてを煤塵と化せ!」
剣から炎が走り、氷のドームを炎の壁が覆い隠す。
これで三人を守りつつ、蒼の剣も使える。
「お猿さん達。待っていてくれてありがと。お礼にあなた達全員と遊んであげる」
布で体に縛り付けてある背中の剣を外す。
さらに、剣を隠す様にグルグル巻きにしてある布も取り除く。中から美しいサファイアの様な剣身が姿を現した。
「ずっと窮屈な思いさせてごめんね。やっと一緒に戦えるね。でも、数が多いから手分けしましょう。私には見えない森の中の敵はあなたにまかせるわね」
さぁて。とりあえず私は目の前の八匹を片付けなければいけない。
目の前に剣をかざし、イメージを練り上げる。
「地獄の爆炎よ。我が矛に宿りて共に悪を滅さん」
剣に炎が宿る。刀身から炎が吹き出し、刃が倍になったように見える。
「とりあえず……そこ!」
正面の木の上にいるマンドリルの化物に炎の刃を叩きつける。
刃が肉を切り裂いたインパクトの瞬間爆発が起きる。
体の三分の一を失い、森の奥に吹き飛んでいった。
「自分で編み出しといて何だけど、この魔法付与怖い……」
インパクト時の爆発は攻撃力はすごいけど、自分の腕にも負担がかかるし、なにより爆発音にビックリする。
木の枝からまわりを見渡す。
やっぱり森の中に何匹かいるみたい。
あれ?一匹だけ白いマンドリルがいる。ボス?
「それじゃあ残り、片付けちゃおうかな」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
気に入っていただけたら、下にある星マークから評価や、ブックマークをよろしくお願いします。