北へ
「何も聞かないでくれてありがとうニーサちゃん。じゃあ先に行ってるね」
「何言ってるんですか。私達も一緒に行くに決まっているじゃないですか。ほらっ、準備万端ですよ。他の二人も同じです」
ほんとうだ。三人ともフル装備だ。
「ありがとっ」
何かよくわからないけど気持ちがワクワクする。嬉しい。
「ほらっ、忘れもの。これ。大事なものだろ。シャルさん」
三人のうしろから隻腕の剣士が一本の剣を投げてよこす。
「あ、ありがとう」
あの剣は元の持ち主に返そうと、意図的に置いてきたものだったのに。
「今の俺には必要ないよ。君が使うといい」
「うん、わかった。それでは。お世話になりました。それと……ごめんなさい」
深く頭を下げ、感謝を伝える。
不思議なやり取りに三人が怪訝な顔をしている。
「師匠、『シャルさん』じゃなくて『シャルルさん』でしょ。ほぼ初対面なのに失礼ですよ。あと、シャルルさんが美人だからって馴れ馴れしいです。師匠にはそういうデリカシー的なとこが欠落しているんです」
「はいはい。ニーサは相変わらずだな。というわけで三人の事頼む。シャルさん。あの子ら結構無茶するところあって危なっかしいとかあるから助けてやってくれ」
こうして私は、再び北に進路をとる。北に向かうほど、凶暴化した動物が多くなってきた。
悪魔が憑依するという話も本当っぽい。
さらに、北に行くほど強い猛獣が多い。
今回、私が同行して正解かもしれない。
複数頭で来られると対応しきれない事がある。特にニーサは長期戦になると体力的に厳しい。
「ニーサ下がって!私が代わりに入るから!」
「はぁ、はぁ、はぁ、すみま……せんシャルルさん。体力なくてすみません」
狼の群れに遭遇してしまった。
一頭一頭が強力な上に数が多い。しかも大きさが三メートルくらいあるかもしれない。
今斬ったので九匹目。残り七匹。
「ニーサは女の子なんだからいいのよ。スパーク!リンク!撃つわよ!」
その一言で察した二人が後退する。
「爆炎!炎狼!」
剣を地面に突き立てる。
そこから炎が地面を走り七つに分かれる。
分かれた炎は狼の形を成し、現実の狼へと特攻し爆発する。
閃光さん考案の技だ。
それぞの個体に自動追尾で命中させるのに精神を削られる。
簡単に言うと疲れる。普段は疲れるから進んで使わないけど、今はちょっとまずかった。三人ともスタミナ的に限界だった。あのタイミングで仕止めないと無傷ではいられなかったかもしれない。
「はぁはぁ……助かった。今のヤバかった」
体力自慢のスパークがへばっている。
「ニーサちゃん大丈夫?」
「はい……大丈夫です。ふぅ」
「少し休みましょ。あとこれ以上はレベル的に無理じゃないかな?ここからまだ一日進むのでしょ?敵も比例して強くなるとしたら、今回はここまでにした方がいいと思うの」
誰も何も答えない。
おそらく全員がわかっているのだ。
本人たちは悔しいと思うけど、死ぬよりはいい。
「わかったわ。三人とも帰りなさい。ここからは私が一人で行くから。目的の場所に異常がないか見てくればいいんだよね……」
ガサッ
「……こんな状況で。最悪ね」
通常の十倍の大きさはあるかと思われる巨大なマンドリルが三匹立ちはだかるのだった。




