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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第三章 魔剣舞闘会
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本選・第四試合

『続いての第四試合で本日は終了だぁ!だからといって、盛り上がらねぇ奴は、いねぇよなぁ。なんせ、最後に残った組み合わせは、そのどちらもがとびっきりの美女二人だもんなぁ!』


「「「「「ウォーーー!!!!」」」」」

「「「「「お姉様ーー!!!!!」」」」」


『ではでは、選手の入場だぁ!まずは!我らが獣王国の白金級冒険者ぁ!!極東は陸の孤島、武仙国家ミズホにて修行を果たした、武を極めし者っ!見る者を魅了する剣舞が如きその剣を振るうのは、酔いどれ女剣豪!「魅刃」のクズハ・ホワイトテイルゥウ!!!』


 酔いどれ……?

 入場口から、歩いてきたのは、徳利片手に堂々とした女剣士。頭には狐耳、臀部からは狐の尾を生やした狐人が、和服に身を包み、腰の左側に刀を佩ていた。


 石舞台に辿り着くと、徳利を傾けて酒を呷った。粗雑なしぐさのはずだが、どこか色気を感じさせた。

 これが狸人だったら、ただの信楽焼だが……。


「っんっんっん……ぷはぁ。なんだい?妙に静かだねぇ」


 それはあんたが堂々と酒を呷ったからだ。予選は持ってなかったよな?


『流石、酔いどれ女剣豪ぉ!酒を飲んだ時のが、強いという噂は本当なのかぁ!?』


 そんな噂があったのか。


「「「「「ウォーーーー!!!」」」」」


 ここは歓声を上げるところなのか?えっ?あっなるほど、タイミングを逃したから、無理矢理捻じ込んだんですか、へぇ。

 しかし、本当に酔ったほうが強いんでしょうか?


 ふむふむ、蟒蛇(うわばみ)だから、飲みたい時に飲んでるだけ。そう言えば、あなた随分、詳しいですね。

 なるほど、あれのお師匠様ですか、へぇ。……えっ?


『続いて!東の覇者、帝国の白金級冒険者ぁ!ボボル、コヅネと帝国の冒険者は、立て続けに負けてしまっているが、大丈夫かぁ!?無表情な鉄仮面(ポーカーフェイス)の裏で何を思っている!?弓術と魔術を操る暗森人(ダークエルフ)の魔弓士ぃ!!「氷麗姫(つららひめ)」シトナ・イカームゥウ!!』


「「「「「お姉様ーーーーー!!!」」」」」


 クズハと反対の入場口から歩いてきたのは、肉感的な褐色の銀髪灼眼の美女。右手に握るのは、黒き大弓。身に纏うのは、所々を魔獣(ビースト)の革で守った狩人装束。


「オマエさんも飲むかね?」

「遠慮しておこう」

「そうかね?ふむ……っんっんっん……ぷはぁ、あぁ、うまいねぇ」


 向き合った二人に緊張感はない。シトナはあいも変わらず、鉄仮面。クズハも徳利を傾けては喉を鳴らしている。


『それでは、魔剣大会・本選、第四試合開始ぃ!』


 司会の宣言とともに、シトナが下がる。クズハに動きはなく、未だに徳利を傾けていた。


「【凍てつく雪原(フリーズ・フィールド)】」


 予選にて、猛威を奮ったシトナの魔術が淡々と発動する。


「そぉれ」


 気の抜ける掛け声とともに、クズハが跳躍。凍てついた石舞台に戻るのに合わせて、抜刀。自身が降り立つ分だけ、氷床を斬り取った。

 着地する時には、すでに納刀の音が響いていた。


「っんっんっん……ぷはぁ」


 酒を呷って、一息。踏み込んだ。


 シトナに焦りはない。矢を番えぬまま、弦を引けば、氷柱の矢が自然と形成された。それはすなわち、無詠唱(シングルアクション)

 放たれた矢は違わず、クズハに迫りくる。当然、それが一本だけなわけはなく、二本三本、次々と時には同時に襲い掛かった。


「フッ……ハッ……」


 異名に違わぬ剣の舞が、その尽くを斬り落とす。右へ左へ、狐が踊る。遂には、狩人へと接近を果たす。


「そりゃ!」


 流れるような太刀筋が、狩人に牙を立てようと試みる。

 されど、狩人に焦りはない。弓弦引けば、形成された氷柱の矢。その矢先は、今までのとは違い、膨らみがあった。そうちょうど、花の蕾のような。


「【氷華の円盾(アイス・ブロッサム)】」


 弓に番えたまま、発動する防御魔術。蕾は開き、花弁が広がる。それは、円盾となって、狐の牙を確と防いだ。


「およ?」


 防がれたならば、斬ればいい。しかし、一瞬、遅かった。防いだと同時、円盾の矢は放たれた。形状からして、遠くには飛ばないが、狐の体勢は崩された。ついでに、刀と円盾が凍りつくカタチでくっ付いた。


 続け様に、矢は射られ、円盾の花弁が割られてゆく。背後に跳ぼうにも、自身が斬り落とした氷柱の残骸が鋭利な様子で転がっている。斬らなければ、着地は難しい。


「詰んだか?」


 狐の暢気な声がした。刀が自由になったら、背後に跳ぶか、と飛んでくる矢を、くっ付いた円盾で防ぎ、刀を自由にしようと試みる。だが、自由になる前に狩人の準備が完了した。


 割れた氷華も、斬り落とした氷柱も、斬り取った氷床も、氷片は宙を舞う。


「【氷嵐(ブリザード)】」


 魔術宣言に、氷片は一斉に襲い掛かった。


 ギンギン……ギンギン……


 何度、ぶつかり合う音が響いただろうか。嵐が過ぎ去れば、背後を取られた無傷の狐がいた。


「ふむ、気付かなんだ。あたしの負けだ」


 納刀しての発言。その言葉に、シトナも魔術で形成した氷柱を消して、弓を下ろした。


『第四試合、勝者はぁ!「氷麗姫」シトナ・イカームゥウ!!!!』


「「「「「ウォーーーー!!!」」」」」

「「「「「お姉様ーーーー!!!!!」」」」」


「飲むかね?」

「……あなたの奢りなら」

「よしよし、では行こう!酒宴じゃ酒宴じゃ!」


 狐と狩人は、二人揃って舞台を降りていった。


『明日は、準決勝と決勝だぁ!!本日は、私の忠告も虚しく、二日酔いで来れなかった馬鹿どもも!さっさと休んで、万全の体勢で観戦しに来いよぉ!!』


「「「「「ィエェーイ!!!」」」」」

 応援宜しくお願いします!先のメンテナンスで、評価がしやすくなったしね!

 ちなみに、地の文の師匠は多分、出てこないから、気にしないように。

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