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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第三章 魔剣舞闘会
63/139

正体

 特に何事もなく、件の洞窟入り口に辿り着いた。


「……」

「いるようだな。これは、洞窟蝙蝠(ケイブバット)ではないだろう」


 イジネも察知したようだが、俺たちはすでに包囲されていた。生命感知の仕方からして、人と同等の大きさ。洞窟内からも同じ気配がする。


 俺たちの様子に向こうも気づいたか、代表らしきモノの気配が近づいてきた。洞窟の奥からだ。


 最初に見えたのは、妖しく光る八つの瞳。次第にそれが、女の顔の瞳であるのがわかり、やはり、女の上半身が姿を見せる。胸にサラシを巻くだけで、それ以外には何も纏ってはいない美女だった。


「なるほど」

「これは……?!」


 最後に姿を見せる下半身。それは、人のそれではなく、大蜘蛛の胴体だった。


「いやはや、吸血鬼(ヴァンパイア)森妖精(エルフ)の番とは珍しい。あちきらの巣に、何のようかね?うん?」


 老獪な口調は、見た目によらず歳なのか、はたまた、ただの癖なのか。目の前にいる者の正体からすれば、前者の可能性が高いだろうか。


『個体名:シュテン Lv.22

 分類:亜人(デミ・ヒューマ)

 種族:人蜘蛛(アラクネ)     』


『人蜘蛛:(いにしえ)の時代、錬金魔術(アルケミー)の非人道的実験によって生まれた合成獣(キメラ)が、魔力の影響によって種族として成立した亜人。人と同等の知能を有するが、繁殖期には抑えきれない凶暴性を持つため、社会から弾かれた。女性体しかおらず、不老であるが、人型の男を使って数を増やすことができる。裁縫に、種族全体で適性がある。』


 ふむ、まぁ、人蜘蛛については前情報の通りか。しかし、洞窟蝙蝠のほうはどうした?


「つ、番?!そう、見えるか!?」

「なんじゃ、違うのか。つまらんのう」


 イジネの慌てぶりに、カラカラと笑うシュテン。


「あんた、わかってて言っただろう?」

「うん?何のことじゃ?」

「惚けるな。吸血鬼の男に、性機能のないことは知れたことだろう?」

「そうだったかのう?しかし、それは理由にならんじゃろう。子が作れんだけじゃ」


 ……まぁ、どちらでもいいことか。本題の方に移ろう。


「で、何しにきたか?だったか。俺たちは、冒険者やっててな、ここに洞窟蝙蝠退治に来たんだ」

「ふむ、そうなのか。そう言えば、この前も、そんな奴がおったのう」

「てめぇらが、【魅了暗示(チャーム)】でもかけて、追い払ったんだろう?元々、ここには住んでいなかった筈だ。どうした?」


 番という言葉に、イジネは未だ悶えていたが、真面目な話になったので、深呼吸して落ち着こうとしていた。その様子を、セイが不思議そうに見ていた。

 そんな様子を横目に、シュテンが事情を語る。


「ふむ、まぁ良いか。そちらの言う通り、元々は別の森のさらに奥地に住んでいたんだが、面倒な輩に絡まれてな。同胞の何人かが拐われてしまい、まぁ、もとより数の少ない種族だから、反撃に打って出ることもできず、ここに逃げてきたんだよ」


「それは……!!」


 シュテンのかなり簡略な話で、イジネは自身の同胞のことでも連想したか、声を上げた。


「どうしたね?」

「我ら、森妖精も拐われたんだ。こちらには、敵の拠点があるという話でやって来たんだ」

「ふむ、大森林から滅多に出てこないなんしらが、何故と思ったが、そのような理由だったか……いや、しかし、困った。人ならば、いくらでも誤魔化しはきくのだが、吸血鬼と森妖精ではなぁ。どないにかならんか?」


 特に情報もないのか、はぐらかしただけか、シュテンは話を変えた。


「ふむ、無理だな。ここは、薬師が素材採取に来るようなところだ。頻繁に人に利用されてる。もっと奥に住処の候補はないのか?」

「ない。あちきらの住むのは、このような洞窟だが、他にそれなりの広さのところはなかった」

「むぅ、私たちの森に移住してもらうか?だが、そうなると繁殖期が問題だが……」

「俺の迷宮(ダンジョン)に来るか?」


 俺の言葉に、頭を抱えていたイジネとどこか余裕そうなシュテンが、驚愕の顔を向けた。


「ジャック!迷宮を所有していたのか!?」

「珍しい奴じゃ。迷宮を持っとるなら、普通は引き籠るもんじゃが」


「あぁ、俺の生まれた迷宮でな。今は、召喚した幻獣(ファンタジア)に門番をやらせている」

「ふむ?そこに男はおるのか?」

「不老の身に、必要はないだろう?繁殖期は、ただの名残のようなもののはずだ」

「……そうじゃな。あまり、高望みしても、なんしに討たれてしまいじゃろうからな。さて、話が纏まったところで、一応、今更だが、名乗っておこう。あちきは、シュテン。この群れの長だ。よろしゅうな」


「ジャックだ。ちなみに、俺は吸血鬼としては異端だ。正の魔力を宿している」

「イジネだ」


「チッ!」

「こいつは、俺の従魔(ファミリア)でセイだ」


 シュテンは、名を名乗り、俺たちの名を聞いてから、辺りの同胞に声をかけ、移住の準備を始めさせた。

初期段階ですでに、設定されていた地下墓地の門番。早く登場させたいのですが、登場させると獣王国の問題がなかなか解決しないので、解決した後に登場します!


え?そもそも、期待してない。……そ、そうなのか。人化したとき姿、めちゃくちゃ考えたのになぁ……


「俺の勢力をつくろうとしてるのが見え見えだな」


あはは……それは言わないでくださいヨォ……(涙)


シュテンさんたちの引っ越しは、こうあれでさくっとやっちゃいます。お馴染みのやつですね。主人公なら、これが使えないと、私はドラ◯エファンなので、ルー◯!

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