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屍は黙考する  作者: 龍崎 明
第二章 王国と大森林
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小鬼退治

 目の前には、自然にできたのだろう穴。その周りに立つ二匹の醜悪な生き物。肌は緑色で、イボだらけ、背丈は人間(ヒューマン)の子供ほど。


 真理眼(イデア)


『個体名:No Name Lv.4

 分類:妖鬼

 種族:小鬼(ゴブリン)      』


『小鬼:魔力溜まりから発生する魔化物(モンスター)。狡賢く、奇襲を得意とする。大したチカラは無いが、混血が可能な人間の女を攫って、数を増やす。』


 二匹の強さに大差はなかった。

 冒険者登録完了後、早速とばかりに依頼を受けたのが、大森林とは別の森で確認された小鬼退治だった。あの騒動で、俺の強さは実証済みということで、特に警告はされなかった。


「小鬼って、なんであんな醜悪なんでしょうか?」


 カーラの脳天気な疑問には答えず、今まで忘れていたことを確認する。


「そういや、お前って戦えるのか?」

「へ?言ってませんでしたっけ?私、こう見えても、拳闘士の端くれですよ」


 こいつ、この見た目で徒手空拳(ステゴロ)なのか。


「あっ、でも、小鬼を素手で触るのとか、いや、なんで。お兄さんにお任せします」


 カーラは笑顔で言い切った。こう言われると、放り込みたくなるのが、人の性。


「じゃあ、お前、今から向こうに投げるな」

「えっ!?冗談ですよね!え、ちょ、なんで!?いつの間にか、持ち上げられてるぅ!?いや、待って、お兄さん!なんで、今回、私、余計なこと言ってないですよね!?」


「悪いな、俺の性癖は、鬼畜(S)なんだ」

「そんな、なんて理不尽!?」


「そりゃあ!」


 カーラのドン引き顔を見ながら、良い笑みで実際に投げる。


「イヤァアア!!!」


 絹を裂くような悲鳴が響き渡り、小鬼たちはそちらに顔を向け、呆けた。


「こんのぉ!」


 吹っ切れたか、体勢を立て直したカーラが、足から小鬼に突っ込み、蹴りをお見舞いしていた。小鬼の首からは、嫌な音がなり、折れたことがわかる。

 見事に着地したカーラはそのまま、隣の小鬼に肉薄。やはり、触るのは嫌なのか、足払いをかけ、地面と接吻する羽目になった小鬼の顔を容赦なく、踏み潰した。


「ギ……」


 断末魔はか細く、小鬼たちは何が起こったか、把握できていたのだろうか?


「お兄さん、なんてことするんですか!私は変態(M)じゃあないんですよ!」

「良いじゃないか、別に。大した問題にはならなかったんだから」


 抗議の声を上げるカーラだが、俺の飄々とした態度に無意味を悟ったか、頬を膨らませるだけとなった。


「チッ!」


 カーラの態度をニヤニヤと眺めていれば、セイが警告の一鳴き。

 さっきの騒動で、気づいたか、巣穴から多くの気配が近づいてきていた。カーラもそれを察したか、俺の側に来る。


「後は、お兄さんがしてくださいね」

「そうだな、この数を素手でやらせるのは流石になぁ」


 そうやって、悠長に構えていれば、巣穴から出てきたのは、他の小鬼よりも一回り大きい個体。錆びた剣を握っていた。


『個体名:No Name Lv.12

 分類:亜人

 種族:悪鬼(ホブ・ゴブリン)      』


『悪鬼:小鬼が進化した魔化物。小鬼よりも強いが、ある程度の経験があれば、脅威ではない。問題は、それなりの数の配下とともに襲いかかってくること。』


 なるほど。確かに、脅威ではないな。

 他には、杖らしき棒切れを持った小鬼(ゴブリン)()魔術師(メイジ)や頭になんらかの獣の頭蓋骨を被った小鬼(ゴブリン)()首長(リーダー)などの派生種もいる。


「ふむ、結構な群れだな」

「そうですね、お兄さんが依頼受けなかったら、駆け出し冒険者たちが何人か犠牲になったかもですねぇ。まぁ、まだ(キング)は生まれてないようなので、運の良い人なら、それなりの功績とともに帰還できるとは思いますが」


 カーラと雑談しつつ、魔力を集中する。一応、延焼なんかを考慮して、使う魔術を決める。


 精霊魔術(シャーマニズム)風刃(ウィンド・カッター)


 精霊に魔力を捧げ、現象を操る精霊魔術。その基本的な攻撃魔術の一つ。

 圧縮され、激しく渦巻くことで風の刃を形成し、それを対象に放つことで斬り殺す。在野の魔術師ならば、一体を屠ると込めた魔力が四散し、その魔術が終了する。

 しかし、俺の魔力ならば、そんな面倒なことにはならない。一体、また、一体と【風刃】は次々に小鬼の群れを斬り殺す。たった十秒ほどですべての小鬼の首と胴が斬り離された。


「おぉ、グロいです。討伐証明は耳でしたっけ?」

「あぁ、右耳だ。それでわかるらしい」


 聞きながら、小鬼の死体に近づき、カーラが耳を切り取っていく。俺も参加し、セイは耳のなくなった小鬼の死体を齧ってみて、不味かったのか、自分の口内に【浄化(ブラッシュ)】をかけていた。


 ……何やってんだ、お前。


 その後、巣穴の中を探索。生存者はおらず、すでに生き絶えた女性ばかりだったので、身元確認に役立たそうな物を回収して、遺髪を取り、【鎮魂火(レクイエム・ブレイズ)】で弔った。


 ……。


 帰還後、小鬼の耳、遺留品と遺髪を冒険者協会アドベンチャーズ・ギルドに提出。悪鬼の討伐を確認したため、銅級に昇格。報酬を受け取り、宿に戻った。

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