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スキル×体質

 あまり初には無理をして欲しくない……というのが俺の本音だ。

 あまり初のことを知っているというわけではないが、なんというか…….初の頭の良さは十人並みで特別な才能というものは感じられない。


 研究がどの程度のものかは分からないが、すぐに結果を出せる能力が初にあるとは思えないし、それが負担になることは避けたい。


 初に「一旦は研究を中断して身の回りを整理した方がいいんじゃないか?」という提案をした方がいいだろうかと考えていると、新子に袖を引っ張られて耳打ちをされる。


「目標があった方がいいよ。何もしない時間は作らない方がいい」

「それはそうかもしれないが……」

「疲れているときに休ませるのは、ヨクくんの係ね」


 新子はそう言って俺から離れる。

 納得したわけではないが、そう言われると否定もしにくい。


 まぁ……始める前から止める必要はないかと頷くと、新子が頼んでいたルームサービスの食事が運ばれてきた。


 ルームサービスって初めてだな……見るからに高そうだもんな、と思っていると案外普通の定食が出てくる。


「じゃあ食べてから、少し動きを見せてもらおうかな」

「食べてから運動するんですか? 大丈夫です?」

「ん、そんなにガッツリするわけじゃないよ、初ちゃんからお兄ちゃんをとっても悪いしね」


 初は少し照れた様子で俯き、それからもじもじと指先で髪をいじりながら新子に尋ねる。


「あ、あの……先程も兄さんに恋がどうとか言ってましたけど……。そ、そんなに私達の関係って分かりやすいですか?」

「まぁ、パッと見で分かるかな」

「あぅ……隠してはないですけど、簡単にバレてしまうのは……その、恥ずかしいです」


 初が俺の方に目を向けて、俺はポリポリと頬を出してから首を横に振る。


「初は可愛いから、俺がいるってことを周りに教えておいた方がいいんじゃないか」

「可愛くなんてないですよ。えへへ」


 新子は呆れた様子で俺達を見て、それから食事を始める。


「そう言えば、ヨクくんのスキルについて聞いていい? あと、願い事についても」

「ええ、まぁ。……願い事は「何もいらない」です」

「何もいらない? ……迷宮の用紙には嘘が書けないんだけど……よくそんなことが書けたね」

「まぁ、迷宮に入ったのは初と会う前なので、今ならもっと違う願いになると思いますけどね。スキルは【英雄徒労の遅延行為(アウトローチェーン)】効果は自身の攻撃を拘束に変換するといったものです」


 新子は箸で米を摘みながら首をコテリとかしげる。


「攻撃を拘束に変換?」

「はい。例えば殴ったら、殴った相手は怪我をせずに鎖に捕らわれるみたいな感じですね」

「へー、私にやってみてくれる?」

「いや……それはちょっと……」


 世話になっている上に小さい子供という容姿の新子を、いくら怪我にはならないと言ってもぶん殴ることが出来るようなメンタルは持っていない。


「んー、まあそれはおいおいでいいか。でも、よくそんなスキルで追い払えたね? 電話で聞いた話、九魔三頭の連中でしょ、私でもひとりだとかなり苦労するよ。不死身だから負けないけど」

「まぁ……追い払ったって言っても、家は……。新子さんのスキルは不死身になるって感じですか?」


 俺が尋ねると新子は美味しそうにご飯を食べながら首を横に振る。


「いや、私のスキルは【天に堕ちる(フォール・エンド)】ってスキルで、効果は落下の加減速の操作」

「俺のよりだいぶ強そう……というか、あれ、不死は?」

「それは生まれつきの体質」

「そんなわけあるかい」


 俺が思いっきり突っ込むと、新子はムッとした表情でコップを持って水を空中に注ぎ、それが空気中をゆっくりと落ちていく。

 水が落ちる前に新子はコップを水の下に置いて、パチンと指を鳴らすと水は重力を思い出したかのようにビシャリと落ちてコップの中に入る。


「お、おお……。あれ、じゃあ不死身なのは嘘なのか?」

「いや、生まれつき不死身なんだって、なんなら包丁で刺したりしていいよ」

「それはしませんけど……にわかに信じられないな、と」


 新子は「はー」と息を吐いてから指を俺に向けて俺の口の中に突っ込む。急に何を!?と驚いていると新子は指を引き抜き、布巾で俺の唾液を拭き取る。


「ほら、擦り傷とか治ってるでしょ。私の汗を舐めたから」


 言われて確認すると、先日の戦いでついた擦り傷がなくなっており、それどころか初を慰めるために深夜まで起きていたことによる充血による違和感もなくなっていた。


 間違いなく俺を回復させたのは本物だし、水も手品ではあり得ない挙動をしていた。


「……スキルが、ふたつ?」

「いや、不死身は生まれつきだって。よし、ご飯も食べたし、ちょっと動きをみようか。初ちゃん、たのんでいい?」

「あ、はい。……えっと、私もスキルをもらった方がいいですかね」


 初は尋ねながらスマホに文字を打っていき、新子は「んー」と悩ませる。


「さっきヨクくんが言ったように「今やったらまた別のスキルになっていると思う」ってことはよくあることだからね。初ちゃんは今色々と不幸な目に遭ったばかりだし、意地悪されたばかりだからね。そういう時にスキルをもらったら、だいたい攻撃的なものになるから……あまりオススメは出来ないかな」

「……そちらの方が兄さんの助けになれるかもです」

「いやあ、どうかな。資質として戦ったりするのは向いてなさそうだし、補助的なスキルの方がいいよ。また落ち着いた頃にもらいにいこう、護衛ならするから」


 初は新子の言葉に納得したのかしてないのか、どちらかは分からないが頷いて、俺達を連れて人造迷宮に移動した。

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