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疑念×呑気

 カレーを食べながら頭を悩ませる。

 ……もしかして、これから平穏な生活をするための一番の敵は初自身なのではないだろうか。


 本気で内縁として結婚し二人で生活するなら近所の人間に説明をしないとダメなのは事実だろう。こんな小規模な人里で近所の人と関わらないというのは難しい。

 だが……普通に時期尚早が過ぎる。


 俺が初を好きになったのはビー玉と見た目が主な理由だが、初の方は吊橋効果みたいなものかもしれず、冷めていくかもしれない。

 近所の人に説明をしたあとに別れるのはかなり気まずいし、初の印象も悪くなるだろう。


 そもそも中学生という年齢がマズい。


「……よし、今度こそ本題に戻ろう」


 俺は現実逃避しながら口を開く。


「とりあえず、協力者が来るのを待つか。ウドも時間は有り余ってるみたいだし」

「……暇だしゲーム持ってきていい?」

「ダメだ。何か暇つぶしになるものあったかなぁ」

「あ、兄さん、パソコンにソリティア入ってますよ」

「あー、俺と初はふたりでなんかするから、ウドにはそれで時間を潰してもらうか」

「……なんかそれすげえ寂しくない? 俺も混ぜてよ。当初の予定通り妹談義しようぜ」


 いや……妹の前で妹萌えは語りにくいし……。三人で食事を終えて、食べた後を燃えるゴミと缶詰めに分けて袋に入れて袋の口を縛る。


「というか、本題だ、本題。毎回脱線してるせいで結局全然話せてない」

「本題は妹の身の安全……つまりは妹のことだろ」

「それはそうなんだけど……とりあえず話を聞いてくれ」

「しゃーねーな」


 なんでちょっと説明をするだけでこんなに疲れるのだろうか。


「初もまとめとして軽く聞いていてくれ」

「はい。とは言っても、兄さんの予想通りだったので私の方はあまり話すことはないかと」

「まぁ、そこも含めてな。……昨日もアイツらの仲間に襲われた。二度目の襲撃を受けたってことだな。目的としては初の父がしていた研究成果を奪うためだ」


 俺が話していると、初が紙コップにお茶を注いで俺の元に置く。ウドはそれを見ながら小さく手を上げる。


「はい、質問。アイツらは何者?」

「名乗りが正しければ九魔三頭というダンジョンを攻略している組織の連中。ダンジョン攻略に詰まって情報が欲しいらしい」

「ほーん。渡したらダメなのか? いや、お前の反応的にダメなのは分かってるんだけど、理由を聞いておきたい」

「万が一迷宮を攻略されると不法者の願いが叶えられることになるだろ。……というより、実際は初の父の遺志に沿ってのものだな」


 ウドはうんうんと頷いてから壁に目を向ける。


「まぁ……こんなの用意出来るぐらいだからな。欲しがる奴が出るのはよく分かる。まぁ、おおよその話として強盗に襲われてるってことだな」

「かなり雑にまとめるとな。かなり特徴的なのは……理不尽に襲ってきているわりに会話は成立していたんだよな、二回とも」


 ボリボリと頭を掻いて初を見て改めて口を開く。


「……初は俺の予想通りになったって言っていたが、今回は襲われるとは思ってなかったんだよな。柳下も部下もアホそうだから独断専行かもしれないが」

「んぅ、じゃあ兄さんは話が出来ると思っていたんですか?」

「まぁ二、三日引き伸ばすぐらいは。結局のところは意見の食い違いか凄まじくて交渉は成立しないだろうが。……なんか妙な感じがするんだよな。何かこっちを探っているというか……」


 俺がそう言いながら足を組もうとすると足が机に引っかかってガシャンと缶詰めの入った袋が揺れた。


 その音を聞き、不意に保存庫にある保存食が全て最近買われたものであることを思い出す。

 この保存食は初の父が用意したものだが、まるで自分がいなくなることを予期していたようにも感じられる。それにアイツらが初の父の死を知るのも早すぎる気がする。


「兄さん、どうかしましたか?」

「いや……なんでもないよ」


 父の死にアイツらが関与していると考えるのは勘繰りが過ぎるだろうか。しかし……父が自分の死を予期していたことはどう考えても不自然だ。

 少なくとも突発的な事故ではない。自殺か、あるいは他殺か……いや、他殺だったとして俺達が助けを求めた協力者やあるいは単に警察を頼らないというのも変だ。


 どうにも整合性が取れない。……偶然保存食を買い込んだというのは……それもやはり妙だ。


「んー、よく分からないけど、結局強盗をどうにかするって話だろ? 警察任せだったらダメなのか?」

「ちゃんとした被害に遭ってからじゃないと動かないからな、警察は。現状何も盗まれていないし、怪我もしていない」

「そんなもんなのか? 大の男に囲まれてってヤバいと思うが」

「そんなもんだ。それに俺も初も未成年だからあんまり相手にされないだろう。あと、組織的なものだから末端がちょっと警察に注意されたところでな……」


 そう答えてからソファに深くもたれる。


「結局のところ、あんまやれることないんだよ」

「あー、まぁ警察がそうそう来れるような場所でもないしな。となると、自助するしかないか」

「一応、父の知り合いに来てもらうことになっていて、その人曰く「合流したら守れる」らしい。まぁ明後日の朝に会えるから一日引きこもるのがいいっぽい」

「そんなに強いのか?」

「さあ……あんまり強そうではなかったけど、迷宮の探索者は見た目とか参考にならないんじゃないか?」


 俺がそう言うとウドは納得したように頷き、それから軽いおちゃらけた表情を浮かべる。


「まぁ、大丈夫って言ってんなら大丈夫だろ。せっかくの休日に引きこもるのも勿体ないし、明日の朝になったら俺が車を出すから街の方に行こうぜ。流石に真昼間の街中だと襲ってこないだろうし、あんまりナイーブに考えずに過ごそう」

「……車運転出来るんだな」

「おう。せっかくだしミナも連れてくるからさ」

「……まぁ、引きこもるよりかはいいか」


 初の方を見てそう口にする。

 ウドの言う通り街中だと危険はないだろうし、何よりも初は父が死んでからずっと一人で家の中で泣いていたのだ。

 少し気を逸らすために遊びに出るぐらいはいいだろう。


「えっと……遊んでていいものなのでしょうか? こんなときに」

「まぁやれることもないしなぁ。外の空気は吸っといた方がいいんじゃないか?」

「……兄さんが私とデートしたいからそう言ってるのではなくて、ですか?」

「それは否定出来ないけど、実際やれることないだろ」

「そうですけど……楽しめる気がしないですね……」


 まぁ、これで「わーい、デートだー」ってなる奴は信じられないほど呑気だよな。初も出かける気分にはならないだろうか。

 初は少し迷ったあと「よしっ」と口にして自分の頬をパシパシと叩く。


「考えていても仕方ないので、切り替えます! デートをしましょう、兄さん!」


 ……初さん、すげえ呑気ですね。いや、俺とウドから提案したことなんだが。

 その呑気さはちょっと羨ましいな……俺には無理だ。


 そう考えていると、ウドは「んじゃ、どこ行く?」と俺達に話を振る。

 かなりアレな状況だが、遊びに行くということで話がまとまり、話し合いが始まった。

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