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第49話 投薬実験と怪獣作成







軽量化を施した浮浪者を麻袋に詰め、闇ギルドへと向かう。いくら貧民街が素材が無料で取り放題の優良スポットだとしても、取れる素材の質は最悪。これでは強い怪人の作成なんて夢のまた夢







そこで貧民街を取り纏める闇ギルドにて、強い人間の死体の取り扱いについて訊ねてみようと考えたのだ。闇ギルドならギルド構成員の死体やら敵対組織の死体やらを保存しているかもしれないし、運が良ければタダで譲って貰えるかもしれない







駄目元で頼んでみるだけならタダだし、最悪ノル婆にいくらか金を渡せば、数人分くらいは用意してくれるんじゃないかと期待に胸を膨らませている






じんわり体温を感じる麻袋を担ぐのは正直あまりいい気分ではないが、生物はストレージに収納できないし仕方ない






あのままではすぐに血が不足して死んでしまいそうだったので、切断面を調合キットで焼いて強引に処置を施し、終末を翳す手により麻痺と沈黙を付与済みだ






拘束に使用していた鎖は今はほどいて腰に吊るしている。時々ピクピクと死にかけの魚のような動きで、自らの生存を知らせてくれているのできっと死んではいない筈






戸を潜り、辺りを見渡す。スラムを彷徨く奴らよりもいくらか強そうなごろつきが数グループ。それよりもさらに上澄みの連中もちらほら。やはり良い素材が欲しければ闇ギルドに行けば良いのではないかと言う推測は間違っていなかったようだ






「やぁ、ノル婆に聞きたいことがあるんだけど」






「我らのギルドマスターはお前のような者の話を聞く程暇ではない。用件はおれが聞こう」






こちらを見下すようにして高圧的な態度を取るギルド職員は無視だ。話が通じるとは思えない。ノル婆が暇じゃないなら適当に狙いを付けて闇ギルドのメンバーを拐えば良い。なにか問題があれば向こうの方から接触を図るだろう






「おい、用はなんだ。秘匿性の高いものであれば別の職員を呼ぶが」






「ああいや、そういうのじゃないんだよ。ただ使えそうな死体があればタダで譲って貰えないかなーって思ってね。ほら、腐らせるだけじゃ勿体ないでしょ? 」






「? …生憎だが買い取った魔物の素材等は卸し先が決まっている。信用度の低いDランクのお前に融通してやる事は出来ない」






成る程。すでに買い手が付いていると。そりゃそうか。魔物の死体であれ程の価格が付くのだから、それを狩る存在の肉体なんて使い勝手は限られるが、極めて強力な多方面から見ても素材に…待て。こいつは魔物の素材と言ったか







「いや、魔物のじゃなくて人間のね。ここなら取り扱ってるかもなーって思って」






「人間の…? 一体何をするつもりだ。まさか…貴様、例の屍術師か」






おいおい、死体の利用案の例として屍術なんてファンタジックなものが真っ先に上がるとは。この分では闇ギルドでの死体の購入は無理そうだ






アベレージ王国では屍術は使用する事自体が禁忌とされるスキルだ。平民で屍術を保有していた者は発見次第、抹消されているらしいし







「いや、私は科学者さ。なんなら鑑定して貰っても良いよ」






そうは言ったものの、DEXや、終末を翳す手など、私のステータスには見られたると不味いものが多々ある。ここは黒幕由来のスキル【改竄】の出番だ







あらゆる数値の【改竄】、情報を書き換える事すらも可能なスキル。その効力はステーテスシステムにも及ぶ。ATKを一万に書き換えた所で実際にその数値が適応されるわけではないが、看破、識別、観察、鑑定などのスキルによって改竄を見破る事は出来ない






しかし自身を弱く偽る際には注意しなくてはならない点が一つ存在する。この一つがこのスキルの使用を躊躇していた原因なのだが、自身を弱く偽る際。ステータスを本来の数値よりも低く書き換えた場合に限り、本来のステータスは適応されず、数値を低く改竄されたステータスが適応されてしまうのだ






これはスキルの場合も同様で、非表示化したスキルは改竄を解除するまで使用不能となり、スキルレベルを低く書き換えると、スキルは弱化してしまう。改竄にかかる時間はそれほど長くは無いが、戦闘中や、相手に警戒されている状況ではその時間を確保出来るか怪しいところだ






しかし闇ギルドを利用できなくなってしまうのは不味い。下手したら家を差し押さえられるかもしれないし、弱くなるのは嫌だなんて我が儘も言ってられない






「【鑑定】…疑って悪かった、謝罪しよう。が、我々は人間の死体など取り扱っていない。他を当たれ。それと、妙な気は起こすなよ。お前のような科学者程度、その気になればいつでも」






「はいはい。小言はいいよ。無いって言うならゴネても仕方ないしね」






DEXを二千程度まで低下させ、竜化や終末を翳す手、偽造擬術に改造、勿論改竄も非表示化しておいた。どうやら改竄スキルだけは非表示状態でも使用可能のようだ。しかしDEXを下げたせいか妙に身体が扱いづらい。自らの肉体の動きに違和感を感じる。まるで他人の身体を操っているみたいだ






どうも心地が悪い。今日はもう家に帰って手元にある素材で怪人作成に臨もう。以前作成した怪獣は地下に閉じ込めているし、アレに再度改造を施してみても良いかも。人間をもう一体混ぜればもしかしたら知性が宿るかもしれないし










▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲










部屋に閉じ込めた奴隷の管理はクレアに任せきりだった為、把握していなかったが、どうやら奴隷は朝と晩に一日二食の食事をクレアから受け取っていたようだ。部屋の隅には掃除されていたような形跡が残っているが、現在は汚物が撒き散らされている







「そんなに怖がらないでよ。今日はきみの番じゃ無いからさ」







やれ飯はまだかだとか、いつになったら自分達を解放するのかと騒いでいたので、一先ず【改竄】した数値、項目を元に戻し【終末を翳す手】で二人に沈黙と麻痺を付与しておいた






顔を歪め、ガタガタと震えるのは良いけど床を唾液と排泄物で汚すのは勘弁して欲しい。掃除をしてくれる人間はもういないのだから、これからは自分でこれらの後片付けをしなくてはならないのだ







ただでさえ鼻に付く臭いが部屋中に充満していると言うのに、これ以上我が家を汚されるのは我慢できない。闇ギルドに頼んで近いうちに清掃業者を入れよう。そうしよう






今回使うのは素体として奴隷が一つと、スケルトンの骨、それに加え今回はゴブリンキングの素材を使用する。前回作成したものが格落ちの怪獣になってしまった原因、その一つとして考えられるのが使用した素材の質だ






健康状態の悪く、スタミナも無い貧民街の子供にスケルトンの素材。おそらくだが、素体が素材に耐えられるだけの能力を持っていなかったが為に、素体は人格を崩壊させ、獣へと変貌してしまったのだ







だからこそ今回はこの奴隷を素体として使用する。奴隷商の元で最低限食事にありつき、貧民街の人間よりは比較的マシな生活を送ってきた筈だし、スケルトンの素材くらい耐えて貰わないと困る






ゴブリンキングの素材はついでだ。せっかく作るなら少し工夫も加えてみたいしね。それに素体の問題以外にも、改造スキルは完全なマニュアル操作の為、自信の技術が不足している部分もあるのだろう。技術を磨くためには施行回数を重ねる他に方法は無い







「さて、それじゃあ始めようか」






手術台の購入は資金不足の為に見送られた。それは本来投与する筈であった麻酔も同様だ。手持ちの剣やナイフはどれも繊細な作業にはむかないので、メスの刃の部分に[魔力形成]により生成した持ち手を接合し使用する






今回作成する怪人は四つ腕。奴隷には二本の腕を追加する。これまての改造に続き、腕の追加なんてありきたりな改造を施す訳だが。過去二回の改造はどちらも失敗に終わっている







この世界を訪れて始めて行ったゴブリンへの人体改造、その成果はフェイリァゴブリンなんて成長性を使い切った怪獣ですらない大失敗作。前回の貧民街の子供相手に行った改造も成功とは言い難い







本当ならフォダンの街の領主から貰った吸血鬼の灰を組み込んでみたい。しかしそれ程の改造を施せる技術が身に付いていない以上、素材を無駄にする訳にもいかないし






下手に怪人が出来上がっても逃げられたら、ショックで三日は食事が喉を通らないなんて、揶揄じゃないくらいのダメージを受けてしまう






流石に最初の怪人は手元に残しておきたいし。改造を施した怪人が私の手中から逃げ出す展開も悪くはない。というかヒーローが出来上がる過程の一部のようでワクワクするが、現状でソレをやられると少し困る







先ずは必要な骨格を取り付けよう。うつ伏せの体制で食卓に縛り付けた奴隷の背を開く。麻痺の異常状態を付与したにも関わらず身動ぎをする奴隷の足の裏に針を突き刺しながら、慎重に皮を剥ぎ肉を切り進めると、やがて背骨、脊髄が露出する






前回はここにスケルトンの骨が填まるように脊髄を削っていたが、もしかしたらそのせいで人間らしい動きが出来なくなっているのかもしれない。破損した軟弱な人格の問題もあるだろうが人格が生きていたとて、肉体に問題があればあのような動きしか取れなくても仕方ない。しかしそれでは最初に改造した失敗作の動きが説明できない







人間ではなく魔物であること。同じ種族の素材を用いた施術であった為に拒絶反応が少なかった? フェイリァゴブリンがロストした今となってはどれが正解かわからないが、今後その辺りの調査も進めなければ







一先ずは万能素材てある魔石に頼る事にしよう。そういえば前回も接合部分には魔石を使用していたし、やっぱりただあの子供の人格が脆かっただけか。本当に期待外れだった






「きみは期待を裏切らないでね」






これで怪人が出来ないのならアプローチを変える必要がある。何かが足りない可能性も考慮すべきだ。怪獣の階位を押し上げ、怪人を産み出すには何かが欠けている。考えたくはないが、これより上が存在しない可能性もある







てあれば私自身が、ソレを作り上げるしかない。それ以前に私の改造技術の修練も重要だし、一先ずは目の前の奴隷を改造してしまおう







今回は接合したスケルトンの骨に、骨を除去したゴブリンキングの腕を移植し、ゴブリンキングの性質が引き継がれるかどうか。素材とした魔物の能力はどの程度まで引き継ぐことが可能なのかの実験も兼ねている







ゴブリンキングの腕からわざわざ骨を除去した理由はそれだけではない。ゴブリンキングの腕をそのまま移植し拒絶反応や人格の消失を免れたと仮定しよう。しかしそれだけでは成功ではない。移植した腕を扱えるかどうか。ステータスの向上、素材とした魔物のスキルは引き継げているのか。その全てが機能して始めて、辛うじて成功と言える







ただの人間がゴブリンキングなんて格上の魔物の腕をいきなり身体に取り付けられ、果たしてそれを自らの物のように扱えるのだろうか。否、否である。通常個体の人間はそれほど器用な事は出来ない。なので一工夫加える必要があった







それがスケルトンの骨。正確にはスケルトンの種族スキルである骨格操作だ。スキル保有者の意思により自らの骨の再構築、最適化を行う事が可能なこのスキル。当のスケルトンは欠損した骨の接合程度の使用しかしていなかったが、このスキルの真価は最適化にある







素体の意思により取り付けられた素材が自らに馴染むように最適化された骨を構築し、本来であれば難しい格上の素材を無理矢理組み込むような芸当を可能としてしまう。骨格操作が引き継ぎ可能である事は前回の改造で確認済みだ。あとはゴブリンキングのスキルがどこまで引き継げるかどうか






「よし、あとは魔石を入れて…」






心臓に魔石を付着させ、変異を促す。今回使用した魔石は手元に残っていたゴブリンの魔石がいくつかと、スケルトンの魔石。そして、ゴブリンキングの魔石だ。手元の素材は殆ど使いきった。ここまでやって失敗したら当分は怪人作成はお預けだ







いや、素体もあと一体は残っている訳だし、今回失敗したとしてもあと一回だけはいけるか…? 素材さえ用意できればあと一回くらいは…






「ウグァ。ケヒッ、クヘッ」






麻痺と沈黙を解いてやると、新たに腕を取り付けられた奴隷は唸るように声を出し、新たな腕の使い心地を確かめるように六足で辺りを猿のように歩き回る。こちらに攻撃してくるような気配はないが、これは失敗だな






「クヘッ、ヒヒャアッ! 」






ひとしきり辺りを歩き回った後、思い出したかのように私に向かって飛び掛かってきたが、どうも敵意を感じない。片手で去なしつつ、結果は分かりきっているが【鑑定】を行う






種族は怪人ではなく、怪獣。今回も改造は失敗した。しかし得たものもある。スキルの引き継ぎに関しての仮説を裏付けるデータを取ることが出来たし、動物のように懐いた様子の怪獣。虚ろな目をした成人男性が愛玩動物が行えば愛くるしさを感じるような動きをしていても、そこには鬱陶しさが勝ってしまうが…これは興味深い






前回となんら変わらない手順で改造を行った筈だが、この違いはなんだ? この個体が外れ値だったのか、前回と今回、どちらが通常の挙動なのか。たった数度の改造では把握する事が出来ないな。早急にもう一度改造を行わないと。仕方ないな。うん仕方ない






となれば素材が必要だ。魔物の素材も、魔石も全くないし。一眠りしたらギルドで適当な依頼を受けて素材回収に行こうかな。いや、街の外に出るとなれば早朝から向かったとしても街に戻るのは昼頃、最悪夜になってしまう。疲労を考え、休憩を挟んでそこから改造を行うとなると真夜中か






「クリンから素材を譲って貰えば良かったな…いや、別にクリンからじゃなくても良いのか」






もしかしたら名案かも。上手く行けば短期間でレアな素材を回収できるし、良質な武器や装備品も手に入る。となれば場所を探しておかないと。王都はあの人混みだ。事を済ませて紛れるなんて容易だろうし、逃走ルートも貧民街まで逃げきればなんとかなる






案外クレアが居なくたってやれるものだ。別に代わりなんて探せばいくらでも居るだろうし、そこまで落ち込むことでもないか。まぁ、また困ってたら助けてあげて恩を売れば良いし






そうだ。ゴブリン達に捕らわれている同族を助け出して目の前で殺してやるのはどうだろう。エルフを素体とした怪人にクレアを襲わせるのもいいな






それも計画が成功してから。このような失敗作ではなく、怪人を産み出せるようになってからだ






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