プロローグ
冬。
11月も半ばになり雪も積もり始め、一年の終盤を感じる。独りで過ごすには寒すぎる季節。こんなとき彼女でも居たらこの身を刺すような寒さですら楽しく感じただろうか?
…出来たことがないから分からない。
すれ違うカップルを横目に歩いてるとそんな哀しいことばかり考えてしまう。
夜になるとライトアップされた街路樹とそれをまるでカップル専用と言わんばかりの男女で溢れ返る大通り。
そんな道を独りで歩かなければならないと言うのはなかなか苦痛だった。
大通りから外れると、すぐに夜の闇が辺りを包む。電灯も最低限しかなく、今すぐ犯罪が起きてもおかしくないくらいだ。
妃守拓真は憂鬱だった。
理由は、彼女がいない 。のもあるが、拓真の右手にある。
正確には、右手に持っている箱。
「あーあ…こんな無惨な姿になっちゃって…」
手元には、プレゼント用に装飾されていたであろう箱が。 いや。もはやこれを『箱』と呼ぶには少々無理があるだろう。
ぐしゃぐしゃにひしゃげ、一部は思いきり破れており、最早これは『かつて箱だったもの』という表現が正しい。
元々独りで歩いていたのもこれを買うのが目的だったというのに、箱がこの状態では中身も無事じゃ済まないだろう。
暗い路地で、電灯にもたれ掛かる。この電灯もまた、 チカチカ不安定な光を発しており、ここの寂れ具合に拍車をかけている。




