エピローグ(4)
「その通りです、私達の先祖、魔術師達が護ったレイハイスト。魔術師は確かに強大な力を持ちます、ですが、魔術師を廃する今のレイハイストの在り方は、この国を愛し護った魔術師達を否定することにもなる。やはりそれはおかしいことだと思います」
そこまで話し、フロナとアイリスはシリスを見つめた。
「シリス、貴女がフィリア王女の娘だと知った時、大げさな言い方ですが運命だと思いました……貴女に大きな重荷を背負わせるつもりはありません、ですが、これは私とアイリスの二人だけの誓いです」
改めて、アイリスとフロナの二人はシリスに向き直り、胸に手を当て頭を深く下げる。
「私達の祖先が仕え、共に戦った王女フィリア。その娘である貴女に、私達は忠誠を尽くしましょう」
「貴女が王女として戻ったあかつきには、我らは貴方と共に国を護り、民を安んずることを誓います」
フロナ、アイリスのそれぞれに誓いに……シリスは少しだけ俯き、拳をきゅっと握った。
「ありがとうございます、フロナさん、アイリスさん……でも、私はまだ」
「わかっています」
頭を上げ、フロナは優しく微笑んだ。
「焦ることはありません。私達はゆっくり待っていますから」
「いつまでも待っているつもりだが……私達はエルフのように長くは生きられない。生きている内に帰って来てもらえると嬉しい」
「……はい」
顔を上げ、二人の誓いに応える様に、シリスもまた約束した。
「必ず帰って来ます。母のように強くなって……お二人に誇れる王女になれるように」
あれから、瞬く間に過ぎた九日間――悪い思い出の日のほうが多いはずなのに、寂しいと感じるほど良い思い出が増えたレイハイストでの城の生活。
森の中でミリアと二人で暮らしていたら知ることのなかった世界――そして、これからもっと大きな世界に行く。
「ノヴァ、そろそろ……」
「うん、そうだね」
フィルとミィムから抜けだし、ついでにミリアの手を引っ張って連れ出して。
「じゃあ、行きますね」
「うぅ~、やっぱりあたしも付いていこうかな」
「いい加減にしろ」
呟くフィルをアイリスは笑ってたしなめ。
「ノヴァ、本当にありがとう。貴女が来てくれて良かった」
「私達の力が必要な時は手紙でも何でもいいから知らせてくれ。手助けする」
「ありがとうございます、アイリスさん、フロナさん」
ノヴァは微笑んでお礼を伝え、横にいるシリスに顔を向けた。
「行こうか、シリス」
「はいっ」
「あ~、ミリアも!」
「ふふ、そうですね、ミリアも一緒に」
そして、三人は歩き出す。
「ぜったいぜったい、帰って来てねー!!」
大きなフィルの声に振り返り手を振って――やがて、ノヴァとシリスとミリアの姿は遠くに消えた。
魔族は人が多いところでは襲って来ないはず、人通りが多い街道を行けば一先ずは安心のはずだった。
そんな道を三人で歩きながら、
――ギュ
「ん、どうしたのシリス、手を繋いで」
「いいえ、なんでもありません」
「なにか不機嫌?」
「そんなことないですっ…………フィルさんとミィムさんがずっと抱きついているから」
「ん?」
「なんでもありませんっ」
「あたしも~!」
シリスとは反対のほうの腕にミリアは抱きつき。
「……どういう状況なの、これ?」
ノヴァは苦笑して、空を見上げた。
「あ、そういえば、伝え忘れていました」
「なに?」
「ノヴァさんも知っての通り、レイハイストという家名はレイハイストの王が名乗るものです。お母さんの元の家名は……リュウール。これからは、私もシリス・リュウールと名乗りたいと思います」
「そっか、いいと思う。リュウールって素敵な名前だね、改めてよろしく、シリス・リュウール」
「はい、よろしくお願いします」
繋いだ手をきゅっと握り、シリスは微笑んだ。
「これからどこに行きましょうか、ノヴァ」
「そだねー、とりあえず」
魔族とか魔王とか色々あるけど、自分の生き方は変わらない。
強い人と戦って、強くなる。『あの二人』のように!
「とりあえず、強い人探しかな」
「強い人探し、ですか?」
「うん、わたしはそうやって旅して来たし、シリスも強くなりたいでしょ」
ノヴァは笑った。
「二人で最強を目指そう!」
「え……えっと……最強? ……あっ!」
二人から抜け出し、ノヴァは先を歩き出す。
「ほら、先に行くよ」
「待ってください、ノヴァ!」
「待ってよ、ノヴァ!」
呼ぶ二人に、ノヴァはまた笑って。
一人ではなく三人になった旅。
そんな三人の――二人は納得しているかは分からないが、三人の武者修行の旅は始まったばかりだった。
閃光の女王と翡翠の白き魔女 終




