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お約束な出来事と

お昼ごはんを食べたあとは、露店ではなく商店街にあるお店に入ってお土産探しをしようということになったけど


(えっと、ここどこ?)


ウインドウ越しにお店のなかを眺めながらうろうろしているうちに、気が付けばアルツィードさんとはぐれていて


(うーん。なかなかベタな展開)


はじめて行った先で迷子になるなんて、小さな子どもやお話のなかでのあるあるだ。


まさか、自分も同じことになるとは思わなかったけれど


(ひとまず、落ち着こう)


アルツィードさんとはぐれた焦りや心細さはあるけれど、こういうときのために、さっきのお家の住所を書いた紙と簡単な地図をもらっている。


大きく深呼吸をして、ポシェットから紙を取り出して広げて


「・・・・・・」


地図はさっきの家を中心に書かれていて、きっと分かりやすいのだと思う。お昼を食べたお店も露店を見てまわった広場も分かる。だけど、今いる場所が分からなければどうしようもない。


(えっと、誰かに尋ねて)


「どうかなさいました?」


誰かに声をかけようと考えたとたん、後ろから声をかけられて驚いて振り返る。


「えっと・・・・・・」

「驚かせてしまって、ごめんなさい。なんだかお困りのようでしたから」


おっとりとした雰囲気の優しそうな女性が、少し身を屈めるようにして話しかけてくれる。


「お手伝いできることでしたらと思いましたの。ごめんなさい、急に声をかけて」

「いえ・・・・こちらこそ、すみません。驚いてしまって」

「お気になさらないで。この辺りではお見かけしない方のようですが、どうかなさいました?」

「あの・・・・・道に迷ってしまって」

「あら」


アルツィードさんにもらった紙を女性に見せる。


「えっと、ここに行きたいんです」

「あら・・・・・・ごめんなさい。わたしもこちらには越してきたばかりで詳しくないの。お店なら分かるけれど」


地図を見ながら「たぶん、あちらの通りを越えたところで間違いないと思うけれど」と、女性は自信がないのか申し訳なさそうにしている。


助かった!と思ったのに「分からない」といわれてがっかりしてしまうけど、この女性は困っているわたしに親切に声をかけてくれただけ


「そう、ですか。あり」

「お急ぎでなければ、家に戻って夫に聞いてもいいかしら?夫はこのあたりにずっと住んでいたから詳しいの」


お礼を言って離れようとすると、同じタイミングで女性が提案してくれる。


「え?良いんですか?」

「ええ。すぐそこでお店を営んでいるから、一緒に行きましょう」






「だたいま戻りましたわ」

「えっと・・・・・・・お邪魔します」


カラン     カラン


ドアにつけられている鈴っぽいものが鳴る音を響かせながら、女性のあとに続いてお店に入る。


お店は本当にすぐそばにあって、なかはそこまで広くはなさそうだけれど、オフホワイトの壁紙と棚はダークブラウンで統一されたお洒落な内装で、ふわりと微かに柔かな香りもして、どこか懐かしくて、何回も来たくなるような居心地の良さもあって


「エルザ、おかえり」


すぐにお店の奥から、アルツィードさんと同じくらいの年代の男性が出てくる。


(あれ?)


このお店の雰囲気によく似ている、どこか懐かしさを感じる男性


なんだか言葉に詰まって挨拶もせずにいると、男性はわたしに軽く会釈して目の前にきて


「こちらの方は?」

「道に迷ってらしたの。地図をお持ちなんだけど、わたしでは案内できる自信がなくて」

「ああ。なるほどね。地図を見せてもらえるかな?」

「あ・・・・はい。お願いします」


慌てて地図を渡すと、男性は少し首をかしげて


「ここは、工房?工房に用があるのかい?」

「え?」

「最近まで魔道具の修理工房だったとこだろう?あそこなら、移転したよ。工房に用があるなら」

「あの!そこ、知り合いの家で・・・・工房とかじゃない、はず、です」


焦りながら男性の言葉を遮ると、男性はちょっと驚いた顔をして


「え?でも、この場所は・・・・それに、この字は・・・・・」


しげしげと地図とわたしを見比べる。


(もしかして、アルツィードさんの知り合いかな?)


「もしかして、アル・・・・アルツィードの知り合い?」

「はい!」


男性も同じことを考えたみたいで、アルツィードさんの名前を出してくる。


「そっか、だからか。それなら、ここはアルの家で間違いないよ」

「良かった!」


ほっとして思わず大きな声がでて、慌てて口をてで押さえるけれど、男性は気にすることなく、むしろいままでより好意的な笑みを浮かべて


「送っていくのは良いけど、それよりもここで待つ?」

「え?」

「アルの知り合いなら、ここでアルが来るのを待つのもありだよ?ちょうどお茶の時間だし、アルには使いをやるからお茶でも飲んで待たない?」

「まぁ!」


男性はにこっと笑って提案してくれて、エルザさんも嬉しそうに「ぜひ!」と言ってくれるけれど


「えっと。せっかくですが、心配してると思うので」


アルツィードさんはきっと心配して探してくれてると思うし、そろそろ夕方になるから少しでも早く会ってお城に戻らないと、今度はレオンさんたちに心配をかけてしまう。


「すみません。この場所への行き方教えてもらえますか?」


ぺこりと頭をさげると、なぜだか男性はクスッと笑い


「分かった。アルの家までは送ってくよ。エルザ」

「はい。お留守番はまかせてくださいませ。次は遊びにきてくださいね」

「ありがとうございます。お邪魔しました」


残念そうなエルザさんに見送られて男性と店をでると、なんだか次々に質問されて


「そう言えば、自己紹介まだだったね。俺はシールス・ルグラン。シールスと呼んでくれて良いから。さっきの女性は妻のエルザ」

「えっと、ゆ・・・・ユスティーアです。わたしのこともユアと呼んでください」

「分かった。ユアはアルとはどういう知り合い?」

「えっと、親戚です」

「じゃあ、君も貴族?」

「違います。えっと、わたしの祖父が元貴族です。祖父同士が兄弟で」

「なるほどね。ってことは、父方の親戚か。学園には通ってる?」

「はい」


(なんだろう?)


シールスさんは好奇心旺盛なのか次々に質問してくるし、それになんだか納得したように頷いてもいる。


「あの、シールスさんとアルツィードさんは」

「ああ。昔馴染みっていうのかな?初等科からの知り合いだよ。学年は一つ違うけどね」

「そうなんですね」

「だから」

「優愛!」


ぶん!


勢い良く片肩を掴まれ、そのまま勢い良く反対側へ振り向かされる。


「良かった!無事だったか!」

「アルツィードさん!」


額に汗を光らせたアルツィードさんが、わたしの両肩を掴んで


「怪我はしていないな?」


そのまま頭の上からつま先、それに上から覗き込むように背中までみて


「えっと、だいじょうぶ、ですよ」


予想以上に心配されて恐る恐る言うと、ようやく安心したのか心底ほっとした顔をする。


「すみません、心配かけて」

「いや、オレもいつの間にか見失って・・・・いままでどこに」

「アル、アールー?」

「あ?」


とんとん


声とともに伸びてきた人差し指がアルツィードさんの肩を叩き、アルツィードさんが鬱陶しそうにしながらわたしの隣へ顔を向けて


「久しぶり」

「シールス!?」

「もう少し声落とそうか。近所迷惑だし、アルがそんなふうだとユアも話しにくいだろ」


にこりと笑顔のシールスさんに言われて、アルツィードさんが決まり悪そうな顔をする。


「なんで、おまえが」

「道に迷ってる彼女を奥さんが見つけてね」


簡単にシールスさんが説明すると、アルツィードさんは「はぁ」っとため息をついて


「助かった。奥さんにも礼を伝えておいてくれ」


やっとわたしから手を離して、肩の力を抜いたアルツィードさん


シールスさんはそんなアルツィードさんを微笑ましそうに見て


「了解。ユア、良かったね」

「ありがとうございました。えっと、エルザさんにもお礼を伝えておいてください」


ぺこりとしながらお礼を言うと、シールスさんは片手をあげて


「あ、そのことなんだけど」


茶目っ気たっぷりな笑顔で、わたしに目線を合わせるように少し屈んで


「ユア、学園が休みの日にうちで働いてみる気はない?」


そう言ってきた。


最後までお読み下さり、ありがとうございます。

次話もお楽しみいただければ幸いです。

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