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平安時代の姫君、現世で婚活はじめまする  作者: かちゃ
異なる世は、地獄にございました
9/18

姫君◇六 祭りじゃ!

―― ピンポーン ――


 地獄の戸が開き、鬼が出てまいりました。


 これより、いよいよ祭りでございますね?


 わらわの胸は、轟轟(とどろとどろ)と鳴っておりまする。鬼の祭りとは、いかなるものにございましょう。


 わらわは地獄の門前で、大きなる岩へ隠れ、事の行方を見ております。


 祭りといへば、神仏のために舞うのが常でございます。わらわは舞をずいぶんに好いておりますゆえ、世に恐ろしき鬼の舞といえども見物いたしますよ。


 鬼が鉾(ほこ)を振るいて、舞いました。その鉾があやしげなる形でありまして、細く長く、先には白い毛が生えており、白馬のたてがみのごとく垂れております。


「ヒィィ~、こっち見んなよぉ」


 鬼は、叫びました。


 鬼の言の葉がわらわにはわかりませぬが、ときの声のようなものでしょう。


 ややっ! 鬼の舞とは、このように激しきものか? 止めなされ! 鬼よ、そなたは狂うたのですか! 鉾の先を、わらわへ向かい幾度も突くのは止めなされ。


 わらわは頭を低くしまして、手にした扇にて鬼の鉾を避けたのでございます。   


「ツクシソータ!」


 わらわも叫びます。


「ツクシソータ! ツクシソータ!」


 これは、荒ぶった鬼を制する術なのでございまする。ふふふ。これさえ唱えれば、鬼など恐ろしゅうないわ! ほれ見よ! 鬼は手にしておった鉾を棄てました――


 およ?


 鬼の前へ立っておるのは、誰じゃ? 男と女の二人が見えますぞ。


 もしや……あちらへおじゃる男の方は、御仏なのでしょうか? 髪は、御仏と同じ形であらしゃります。くるくると短く巻いた髪の形を、螺髪(らはつ)といふのでしたね。


 御仏がお召しになった黒き衣の背には、金色の文字で縫い物をしてありまする。


―― 宇宙一最強 負ける気しねえ ――


 わらわの読めぬ文字もありますが、ありがたい経文でありましょう。


「そこのメガネ! おめえ、ここのコンビニの店員だろうが」


 御仏の使われる言の葉が、わらわにはわかりませぬ。説法をなさっているのでしょうか。

 

「そっ、そうです」


 鬼は、かしこまっておる様子です。


「へえ。じゃあ、何でコンビニの外にいるの?」


 女の方が、鬼へ言葉をおかけになりました。


 その方の髪は黄金の色にて、先はくるくると巻いており、神の社にある狛犬のよう。いかめしいお顔も、狛犬によく似ておられますね。


 おそらく、狛犬より人の姿へと変化されたのでしょう。


 神の使いであらしゃるゆえか、わらわの知らぬ言の葉を使われるようです。


「あんたが店の外でサボってるせいで、あたしは欲しいタバコを買えないんだけど」


 狛犬は、口より煙を吐きました。


 ほほう、珍しき術じゃ! 腹の中で、火でも焚(た)いておられるのですか?


 煙で、厄を祓(はら)うのでしょうね。


 鬼の顔へ煙がかかります。目には薄らかに涙が……ありがたく思うておるのでしょう。 


「お客様、すみません。すぐにレジを打ちます」


 鬼は、狛犬へ二度の拝礼をしております。


 おそらく、神事が行われるのでございましょう。


 御仏と、神の使いにあらしゃる狛犬。神仏の加護を一度にあずかれるとは、めでたきことよ。


「謝るのが遅えんだわ」


 御仏が、大きなる声で叫ばれました。


 説法をなさっているのでしょうね。 


「すみません!」


 鬼が、深く拝礼をしております。


「何だその謝り方は! アァ? 悪いと思ってんなら、土下座しろ」


 御仏は、鬼へ顔をお寄せになりました。


 あのように御仏の近くにて対面するとは! 鬼は、喜びに震えておるようですな。


「ヒィッ! 誠に……申し訳ございません」


 鬼が、地へと伏しました。


 御仏があまりにありがたく、鬼は顔も上げられぬ様子です。


「おわびにタバコくれる? マルボコのメンソール、ワンカートン」


「いやっ、それは……」


「はあ? おめえ、殴られたいの?」


 御仏が、鬼の前へと屈みます。


 座したそのお姿! わらわが寺で拝んでおりました御仏の像さながらです。


「タバコがあかんのなら、お金貸してくれ」


 御仏は、指を丸い形になさり、印をお作りになりました。


 おおお! 何とありがたいこと。


 御仏は、極楽浄土へ参った者を、指で丸い印をお作りになり迎えられるのです!


 鬼よ、ようございましたな。


 極楽へ行けると定まっておれば、死ぬるのも恐ろしくありませぬよ。


 鬼は地獄で曼荼羅(まんだら)を作り立てておりましたもの。御仏は、それを見ていらっしゃったのです。


「お金は……持ってなくて」


「死ねや、ゴルァ!」


 御仏が、鬼の肩へ手をおかけになりました。


 ――その折にございます。


「待って」


 いずこよりか、声がいたします。


「みんな。今のぜーんぶ見たよね! ちい巫女は、セブンマート京都六条河原店にいるの。イケイケ動画のサイトで生中継してます」


 一人の童が、こちらへ近づいてまいりました。


 白き小袖に、赤き袴をまとっております。


「すごい放送事故! DQNカップルが、コンビニの店員さんを脅してまーす」


 あれは……女の童です。


 先刻、わらわをここまで導いた童じゃ。


 今まで、いずこへ去っておったのじゃ。


 童がこちらへ向けておる漆(うるし)塗りの板は、何でございますか?

 コワモテのお兄さん、派手にしてるお姉さんって、話してみたら実はいい人ってこと、多いですよね。

 話の都合上、悪者にしたりDQN(ドキュン)とか書いてすみません。


  読んでくださった方、ありがとうございます。

 お気に入り登録いただいた方、ありがとうございます。

 ちょっとでも楽しんでもらえたかな~と想像すると嬉しくて、ひとりパソコンの前でニヤニヤしてしまいます。


【10月14日 修正しました】

 御仏たち(男女)のセリフ等で、余分な描写を削りました。

 ストーリーは変わっていません。

 少しは読みやすくなっているとよいのですが・・・・・・。

 サブタイトルも変更しています。

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