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余韻と台本

 その日の夜は私にとって難題だった。私は早速電話してしまうものか、余韻に浸ってしまうことにするのか迷ったことを告白する。結局、私は、コメントだけ残して、そのまま、予習復習に手を付けることにした。

 忘れるには問題に取り組むのが一番だった。解の公式を思い出す。きちんと復習して、-b±√b2-4ac/2aを暗記し直して、それから問題に取り組む。-b±√D/2a。D=b二乗マイナス4acだから。だから。えっと。それから一時間近くかけたと思う。七題の問題を解いている間、私は、恵都の言葉を思い出して少し熱くなったり、台本の台詞を思い出したりして、余り集中できなかったんだけど、それでもきちんと七題解いたことは解いたんだ。一生懸命の伸びをして、それから時計を眺めてから気づく。慌てたようにスマートフォンを手に取りチェックする。恵都の返事は単純だ。『お疲れ。要。お休み。要』それだけ。私は安心したような不安なような、そんな気分に苛まれたくはなかったので、同じようなコメントを残して後のことは忘れてしまう。

 机の上から立ち上がると、お風呂へと向かう私。今日はシャワーじゃなくてお風呂の気分だった。お湯が溜まるまで台本を眺めながら、テレビの音を聞き、ソファーに寝転がる私。母さんがいつも見ているお気にのドラマが流れている。私は、台詞を思い出す。私は台詞を口ずさむ。私は最初の場面の台詞を繰り返す。

「羨ましい。二人とも、睦まじい限りですわね」「有難う」「お名前を伺っても」「私は」「私はノンム。名も無い女ですわ」「まあ、おかしな方」「本当におかしな方」「私が欲しいもの、ですか」「それは、人並みのものが欲しくはありますが、それが私にとって高望みでなければと不安になることもありますわ」「まあ、嬉しい。お連れ様の前でそのようなお世辞を口にして頂いて。お二方ともども、これから仲良くしてもらいたいものですわ」「おかしな人」「お連れ様に笑われますわよ」「では、御機嫌よう」

 台本を持ったままお風呂に浸かると半身浴のまま、黙読する。自分の台詞を一回りすると、それから関係性を確かめるために全文を読んでみる。始まりのシーンから、別れの中興の場面、そして転変の場面と魔女の登場。そして地獄。

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