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劇2
『心奪われたのだ』
足元を見つめながらどこか後悔したように。
『勝手すぎる。あなたは』
『勝手なのは君の方だ』
手元を天に放り投げて。
『あなたにはあの人が』
『私の心は去っている』
『どうして』
驚愕から冷めやらぬ、上ずった声で。
『君の全てを見ることができれば。全てを知ることができたなら。ああ。何故だろう。まるであいつと同じことを問うているように思える』
『そのような難解なことをおっしゃられても私の心は動きません』
警戒するような一瞥。
『愛するものの全てを知りたいと思うことの何が難しいものか』
『愛ですって』
『そうだとも』