熱血未満の部活中
劇は始まった。私は今河先輩が用意した用紙の束を読みながら、静かに劇を眺めていた。配役が決まっていって昨日の続きが始まるのを眺めながら、私は自分の役について思っていたんだ。
賦星先輩と今河先輩。二人のもつれるような台詞合わせが続くうちに私は少しだけ引き込まれてしまっていた。のめり込む感覚。
私の役と私の番。
足元を見つめる今河先輩に対して、私は頭の中が真っ白で台詞は手元の用紙の束を眺めながら慌てて、詰まって、そしてどうしようもなく間が抜けていた。
「か、勝手すぎる。あなた、は」
「勝手なのは君の方だ」
手元を放るように縦ざまに払いのけて伸ばしてしまう今河先輩。まるでそのまま風でも吹いてきそうな勢いだったな。
「あなたには、えー、あの人が」
「私の心は去っている」
「どうして」
一言だけ詰まらず、間合いもよく言えた言葉が私を安心させる。驚愕というよりは安堵の、上ずったというよりは重荷を下ろすような、そんな一言。
「君の全てを見ることができれば。全てを知ることができたなら。ああ。何故だろう。まるであいつと同じことを問うているように思える」
「そのような難解なことを……」
私の劇はそこでお仕舞。今日はどうしてもそこから先が出てこなくて手元の用紙の束を四回も見直した挙句に、そのまま棒読み。
「そのような難解なことをおっしゃられても私の心は動きません」
確かに私の心は動かなくなった。緊張の糸が切れたように手元の用紙の束を直視したまま台詞を継ぐ。警戒するような一瞥なんてそこには無い。
「愛するものの全てを知りたいと思うことの何が難しいものか」
「愛ですって」
「そうだとも」
……。




