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[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl  作者: Emotional
3章『法ここに非ず』
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#57『ノアのガレオン船』

〈本能の街、スズメウリ教会跡前〉



「うぉぉぉぉぉぉらぁぁぁ!!!!」


大柄な男は近くの物置に向かい、思いっきり助走をつけると、鉄骨を4つ首の翼竜に向かって思いっきり投げつけた。


■〇※※◇▲〇※■◇〇▲!!!!???


放たれた鉄骨はその勢いのまま翼竜の胸部にある頭に直撃すると、そのまま翼竜は地面に墜落した。


「すげぇ......」

「やっぱプランツさんには敵わねぇな」


「言ってる場合か。仕留めた訳じゃねぇ。そこの嬢ちゃん!そいつらの相手は任す。」


「—―」


オーキッドは混乱する人造人間達を1人1人確実に葬りながら、プランツと呼ばれた男の方を見る。

プランツが起き上がろうとする翼竜に向かう姿を見て、オーキッドは振り返り、住人達の方を向く。


「皆様!!今のこいつらなら簡単に仕留められますわ!!ここが踏ん張りどころですのよ!!だから、頼みましたわ!!」


「「えぇ!?」」


オーキッドはそう言うと射撃を中断し、プランツの方に駆け寄った。


「......」


「今は、1人でも欠けるのは惜しいですわ。特に、貴方みたいな方を亡くすのは」


「...俺よりあいつらの方が重い。お前も、あいつらと同じ様に見ただけだ。」


「でしたら、わたくしは貴方の事を重く見させて貰いますわ。――ん?今わたくしの事重いって?」


プランツはオーキッドと背中合わせに構えながら、初めて笑みを零す。


「フッ、誤解だ。」

「えぇ。分かっていますわ!!」


――――!!◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×!!!!!!!


翼竜は体を起こし、路を完全に塞いでしまう程大きな翼を広げる。4つの内自由に動き回る3つ首が一斉に身体を反り、大きく口を開けた次の瞬間—――


「っ!!伏せて!!!!」


『◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×!!!!!!!!!!!!!』


「いっ―――――!!!!!!」


地面が割れ、近くにあった建物は崩落し、その風圧で皆吹き飛ばされてしまう。

轟音によって裂け、盛り上がった地面が運良く壁になり、プランツとオーキッドはその場をしのいだが、轟音が止んだ後も動けずに居た。

遥か後方に居た者達の内、声の届かなかった者は容赦なく、人造人間と共に吹き飛ばされ、建物の壁に強く身体を打ち付け、1人残らずその場に倒れてしまう。

そして、完全にそれらが止む頃、その場に残った皆が異変に気付いた。


「—――!?まさか、音が―――無い......!?」

「これは、まさか!?」


幸か不幸か、間一髪凌ぐ事の出来た者達の誰一人として、「音」のある世界にへばりつく事の出来た者達は居なかった。


「嘘でしょ.....!?鼓膜が破れたんですの!?このドレスには防音機能もあったんですのよ!?」


オーキッドが戸惑っていると、プランツはその肩を優しく叩いた。

プランツは何か言葉を発そうとしたが、お互いの状況を察し、避けた地面の隙間越しに翼竜の方を親指で指した。

オーキッドがその隙間から向こう側を覗くと、そこには俯き、一時的に動きが鈍くなっている翼竜が居た。


「...!!チャンスですわ!!」


オーキッドはプランツの方を向き、互いに頷くと、同時に盛り上がった地面を飛び越えた。

プランツは近くにあった大岩を掴み、そのまま担ぐと、翼竜の垂れた頭部に向けて投擲する。

岩は素直に翼竜の頭部に命中すると、砂埃となり地面に崩れ落ちる。

衝突と同時にオーキッドは頭部の内の1つに飛び掛かり、その脳天に拳を当てると、ありったけの弾丸を浴びせる。


「さっさと貫通しやがれですわ!!」


△▽〇※□×◎......!!


怯みが収まったのか、徐々に翼竜の首はのたうち回り始める。それに他の頭が気付いたのか、突如その動きはピタリと止まると、砂埃の中から、2つの首が姿を見せ、口を開く。


「うぉらぁ!!!」


その牙の1つがオーキッドに届く直前、再び岩石が翼竜の頭部を襲う。が、命中したのは1つのみで、オーキッドが岩石のぶつかる音でもう1つが迫っている事に気付くと、間一髪でオーキッドは翼竜の頭頂から飛び降りる事に成功する。


▽〇※□×◎■!!!!!


「あの構えは!」

「くっ、」


2人は翼竜に背を向けると、全速力で盛り上がった地面の方へと向かう。


『—――――――――』

『◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×◎■※〇▼×△□◆△▽〇※□×!!!!!!!!!!!!!』


なんとか段差の後ろへと身を潜める事に成功し、再び街を轟音波が襲う。

再び訪れる静寂の中、オーキッドは立ち上がろうとしたが、翼竜の様子を見たプランツに肩を抑えられる。


「ここで待ってたらまたあいつがあれを撃って来ますわ!やるなら今しかないんですのよ!!?」


聞こえない事を分かっていながらも、オーキッドは必死にそれに抗おうとする。

プランツがオーキッドに再び地面の隙間を覗かせると、先程オーキッドがありったけの弾丸を浴びせ、凹ませたはずの頭部が、まるで最初からそんな事無かったかの様に再生していた。


「!?嘘でしょ......?」


「—―――」


2人は身を潜めたまま、再び首が垂れ無防備になった翼竜を睨む事しか出来ずに居た。


「このままじゃ......」


――――――



〈??????????〉



――――――


......


......


『起きて。』


(—―――?)


『起きて。』


(—――)


身体の感覚が無い。何にも触れられない、何も見えない。でも、聞こえる。


(――これは、夢?)


『...起きた?』


(......貴方は、誰?)


『—―――もう、誰でもない。私が誰か、貴方が誰かさえ、分からない。』


(......じゃあ、1つ聞いても良いですか?)


『うん。』


(――私の友達を、知りませんか?)


『—――――』


(...あっ、変な事聞きましたね。貴方は私の友達を知らないのに......)


『......貴方は、友達の所に行きたいの?』


(......はい。)


『どうして?貴方は、死んでなんかないのに。』


(—――だから、せめて最後に、目を覚ます前に、顔だけでも見たくって。)


『...貴方は、友達の事が大好きなんだね。いいよ、会わせてあげる。でも――――』


先程まで会話していた声が遠のいていく。それと同時に、朧げだった感覚が戻り、気付けば先程まであった「音」だけが、失われていた。


(......ここは?)


目覚めた場所は、知っているようで知らない場所。理性の街とよく似ている。

そして目の前には、1棟のビル。


(......ここって、もしかして)


目を覚ました彼女は周囲を見渡し、入れる場所がそこしか無いのに気付くと、そのビルへと足を踏み入れた。



〈?????、エントランス〉



(知ってる匂い......でも―――)


彼女はエントランスを見渡すと、真っ直ぐとエレベーターの方へと向かう。やはり、先程から人の気配が無い。


(えっと、結構高い立場の人でしたよね。じゃあ最上階—――本当に?うーん、とりあえず、入ってから考えましょう。)


彼女はエレベーターの△を押す。その時だった―――


(—――え?)


エレベーターの扉が開く。そこから、無かったはずの気配と共に、一人のぼやけた輪郭が降りて来た。

輪郭はこちらには見向きもせず、真っ直ぐと出口へ向かう。そして―――


(――さっきまで、1人も―――――)


彼女が輪郭を目で追った先、沢山の輪郭が、エントランスを満たしていた。

彼女にはそれが何なのか分からなかったが、直感でそれがどういう事なのか理解出来た。


(......時間は、限られてる。私が本当に目を覚ます前に、見つけないと。)


彼女はエレベーターが閉まる前に駆け込むと、最上階のボタンを押した。



〈???????、エレベーター内〉



(—――咄嗟に押したはいいけど......うん?)


マーカサイトは昇り続けるエレベーターの中、微かに胸騒ぎを覚える。


(......声?でも、私の耳は聞こえないはず―――)


(—――――)


(......!!)


確かに感じた。もうすぐそこだ。


(――待って、思ったより近い!?じゃあ!通り過ぎちゃ――待って、)


そう言っている間に、胸騒ぎの頂点が過ぎ、徐々に収まって行くのを感じた。


(今の――0階...?どうして?)


乗る前は、階層の数字など気にも留めていなかったが、確かに、今この瞬間から、数字は1,2,と数え始めた。


(――でも、確かに今過ぎた場所が一番近かった。エントランスとは違う―――引き返さないと。)


彼女はエレベーターの数字をもう一度押し、-9から9まである階層のうち、0を押した後、もう一度9を押した。だが、エレベーターは止まらない。そして、9を「押した」時、違和感に気付く。


(—――え?)


視線の先にある指先。それは徐々に、消え始めていた。

それも、それを眺めている間に、エレベーターの数字が1つ増えるだけの時間で、指先から手首まで。


(これじゃ、間に合わない―――くっ!!)


彼女はエレベーターのボタンの点灯が、未だに9階を示しているのに気付くと、やむを得ずと、エレベーターの扉に向かってぶつかる。だが、無論扉はびくともせず、向こう側へとすり抜ける事も無かった。


(......どうしよう。これじゃあ)


痛む頭を、無い手で撫でながら、その場で考え込む。その場で思いついたありとあらゆる手段を用いたが、すべて失敗に終わった。


(......どうして。私はただ、最後に一目.......)


そう嘆いている内に、最上階へと辿り着く。彼女の片足は既に根元まで消えており、扉が開くと共に、誤って最上階のフロアに向かって倒れてしまった。


(っ!!――待って、まだ諦めた訳じゃ―――――)


彼女は咄嗟に振り返り、命一杯まだ辛うじてある左手を伸ばす。だが、無慈悲にも扉は閉じ、下の階へと下がって行った。


(—―――っ!!)


あと少しで届いたかもしれない。最初から届く事なんて無かったのかもしれない。


(......なんで、階段使わなかったんだろう。—――なんで、もっと知ろうとしなかったんだろう。)


彼女はエレベーターの閉じた扉の前に座り直すと、扉に向かって頭を押し付けながら、左腕で思いっきり扉を叩いた。


(—――あの時、私が止められていれば、あの時、もっと早く、寄り添えていれば......)


彼女の頬に伝い始める、沢山の後悔。


(あぁ、やっぱり、駄目だなぁ、私—―――――)


いつしか、扉を叩く手は止み、彼女の肩は、震えていた。


  To be continued.

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