67…家 愛 族
今現在に戻る。
「私愛されてると思ってた。ううん。違うそう思いたかったの…捨てられたんじゃないって。」
「…」何を見たのかは知らないがいい過去ではなかったのだろうな。かける言葉は見つからない。しかしこのまま放っておいたら自殺でもしてしまいそうだ。
「いや、その」言葉につまるがなにか発言しないと後悔することになりそうだ。
「殺して…そうだ殺してよ。私もやり直せば…」
パチン、椎名さんの顔を引っぱたいてしまった。反射で叩いたからかける言葉も見つかってないし威力も思ったよりかは出てしまった。
「え?」怯えた顔でこちらを見ている。まぁ手加減せずに思いっきり叩いてしまったから当たり前か、明らかに選択肢を誤ったな。
「帰るぞ」まぁいいや。どうせ数日経ったら椎名さんは記憶が無くなるらしいし、これはノーカンて事にしよう。
上の階に行くとミナトが暇そうにスマホをいじっていた。椎名さんの事を軽く説明し3人で帰宅する。帰宅する際椎名さんはずっとミナトの服の裾を握っていた。多分だけどオレはそこそこ嫌われた気がする。
「なぁ、ミナトこのまま椎名さんを放置してたら自殺とかしそうじゃね?」
「…確かにそうだけど、どうするの?」
「一時的にお前ん家で面倒見るとかは?」
「却下、あなたの家で面倒見なさいよ。元々あなたが記憶を戻させたり色々面倒を起こしたんでしょ」
椎名さんの裾を握る力が強くなってる。面倒と言われたことが嫌だったのか、オレの家が嫌なのかは定かではない。
「椎名さんもミナトの家がいいよな!」
「私は…私は…もう」
椎名さんに聞こえないようにミナトが耳元で囁く
「私実は一人暮らしなのよ」
「じゃあ尚更お前の方が都合がいいだろ」
「家族がどうたらこうたら言ってるんだし、あなたの家族の温もりでどうにかしなさいよ」
「いやその家族に捨てられたとかなんとか」
「とにかく1度首を突っ込んだんだから最後まで責任を持ちなさいよ。」
確かに元はと言えばオレが原因でもあるし、引き取るか…
「椎名さん、今日は家に泊まって」
怯えた表情をしてミナトの後ろに隠れた。これはだいぶ嫌われたかもしれないな。
ミナトから無理やり引き剥す。その後泣き叫ぶ椎名さんを拉致し、家に連行する。周囲から見たら犯罪者でしかないがこの際しょうがない。
家の中に入ると、家族からどういう経緯で泣き叫ぶ女子を家に連れ込んだのか質問攻めに合う羽目になった、家出してきたことにして何とかやり過ごす。
妹、母、オレ、椎名さんという異色の4人での夕飯が始まる。
「「「「………」」」」
流石に誰も口を開かないな、さてと早食いして後のことは女子組に任せるか。
「ご馳走様でした」爆速で食べ終え、部屋に逃げ込もうとすると母に腕を掴まれる。
何も言っていないが、言いたいことはわかった。
静かに席に戻り、座り直す。
「あー妹よ。今日は学校どうだった?」
「うぐっ、うん、普通だったよ」いつもは聞いてもないのにベラベラ喋るくせに今日はやけに大人しいな。
「あー母さん、今日の味噌汁は美味しかったよ」
「今日はお味噌汁じゃなくてコンポタージュよ…」
クソッ、食事内容なんてほぼ記憶にないのに適当なことを言うんじゃなかった。
「あー椎名さん、今日も可愛いね」
「「「………」」」
あれオレ今なんて言った。適当なことを言うんじゃなかった。今日二度目の後悔
「椎名さんてお兄ちゃんの彼女?」
「「「………」」」
「いいや全く違うよ。ただの友達」
「でも、彼女でもないのに家に連れ込むなんて変だよ?」
「ツバサ正直に話して」
これは詰んだな。家出するにしても普通は異性の家に逃げ込まないよな…
「わ、私が家族に…捨てられ…」
母が立ち上がりそっと椎名さんを後ろから抱きしめる。少しの間の後再び泣き出し母にしがみつく。そんな椎名さんの頭を優しく撫でている。なるほどミナトはこれを狙っていたのか。
「よし妹、オレたちはこの場からそっといなくなろう」
「分かった!お兄ちゃんの部屋集合ね」
2人して同時に立ち上がり食器を運ぼうとすると再び母に掴まれる。
「なぁ妹よ。ずっと一緒だよな?」妹の手を掴もうとする。
「お兄ちゃんの愛情は伝わったし答えてあげたいけど、今日はごめんね」スルッと避け2階へ消えていってしまった。
しばらくして椎名さんが泣きやみ落ち着くと、母が口を開く
「大体の事情は察したけど、うちにずっといさせる訳には行かないわよ。」
「少しの間だけは?今家に返すのは色々とアレなんだよ。」
「私帰ります。植野くん…もう平気だから」
小さく笑顔をつくる。自殺しようとなんかはしない気がする。それなら返しても別に問題ないかな。
「わかった。途中まで送ってくよ」
「何勝手に決めてるの。椎名ちゃんは今日泊まって行きなさい。」
「いや本人は帰るって」
「夜も遅いし、1日ぐらいはお互い距離を置いた方が冷静になれるのよ。今日は妹の部屋に泊めればいいじゃない」
椎名さんは静かに頷きにオレに連れられ妹の部屋に入った。




