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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
31/40

31. 親友

なんとかいつも通り(土曜夜には間に合わない)投稿できました!

今回の話でなんと、奏向と利麻が結婚するらしいです!(嘘)


活動報告は明日には更新します。今回はネタがないわけではないです!


追記 2019.11.26

活動報告更新しました

 夜ご飯を食べ終え、リビングでテレビを見つつあるものを見つめていた。うちには母さんの仕事用に買ってあるタブレット端末が一台だけある。

 基本母さんは家に置いていくためたまに動画を見るために使ったりするのだが、今見ているのは"LICE"のトーク画面だ。

 俺がこの姿用に新しくアカウントを作った時、もとの(・・)のアカウントをこっちに移しておいた。

 だから、今までの友達との連絡先はこのタブレットに入っている。そして、いくつもあるトーク部屋の中で一つ通知マークが付いていた。

「美香」と書かれたトーク部屋にメッセージが届いている。トーク部屋を選択する画面では最新のメッセージの文頭が表示されるようになっている。

 そのトーク部屋には「久しぶり、今まで連絡できなくてごめんね……」と表示されており、続きのメッセージはトーク部屋を選択しないと見れない。


 俺は、そのトーク部屋を選択できないでいた。一度トーク部屋を選択してしまうと、メッセージの内容が見れる代わりに相手に読んだこと、既読したことを知られてしまう。

 すぐに返信できればそれでいいのだが、今の俺はなんて返事をしていいのかわからなかった。

 長い間、既読状態が続いてしまうと相手に不安感を伝えてしまうかもしれない。そのせいで未だに見ることができないのだ。


「いい加減見たらどうですか? 見てみないとなんて返すのかなんてわかりませんよ」

「それは、そうなんだけど」


 多分美香からのメッセージの内容は今日の昼に話したこと。それを伝えるように俺が言ったし多分そうなのだろう。

 でも、例え内容がそうだとしてもなんて返せばいいのかはきっとわからない。ううん、返すことができない。

 美香が言った「大切な友達」、その言葉がずっと俺の心をかき乱している。ずっと思ってくれてた友達に、自分は大切と言われる資格があるのか。

 ずっと拒絶してた、そんな俺でも大切に思われていいのか。理由がある、それを言い訳にしていいのだろうか。

 だいたい大切な友達の条件ってなんなのだろう。ずっとモヤモヤが続いて、結局今日はメッセージを見ることは出来なかった。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 例え、喧嘩別れみたいなことをしちゃっても大切って思われていいのかな。そもそも大切な友達ってどんな友達だ? 普通の友達と違うのか、それともあんまり変わらないのか。


「……ちゃん……な、ちゃん」


 そもそも大切に思われるかって資格とかそういう問題なのか? 相手が勝手に思うこととかじゃないか?


「奏向……なたちゃん」


 だいたい友達ってどこからが友達なんだ? 仲良く話してれば友達? 一緒に遊んでるから友達? 友達って一体……。


「奏向ちゃんってば!」

「うわぁ! おっと」


 気がつくと目の前にいた利麻が心配そうに俺の顔を覗いていた。


「大丈夫? 体調とか悪い?」

「い、いやちょっと考え事をね」

「考え事?」


 しまった。今は文化祭実行委員の仕事をしてたのに余計な考えに夢中になってた。時刻は放課後、俺と利麻は教室で机を向かい合わせにしながら実行委員の仕事をしている。

 文化祭のスケジュールについてまとめる作業だ。クラスのみんなの予定を聞いて作業の日程表を作成する仕事である。

 エリスは学校や生徒会に提出しなければならない書類を提出しに行ってる最中だ。そのため、今は俺と利麻の二人でこの作業をしているわけなんだけど。


「もしかして、悩み事、とか? だったら相談にのるよ?」


 昨日のことを考え込んでしまい、利麻に心配されてる有様だ。どうにも頭の中に引っ掛かったモヤモヤが晴れない。


「別に、そんな大したことじゃ……」


 大したことじゃないから大丈夫、と言いかけたとこで利麻の顔を見ると不安そうな顔をしている。いっそのこと利麻に聞いてもらう方が解決になるのでは? そう思うと言葉が簡単に出てきた。


「えと、その今ちょっと悩んでることがあってアドバイスとかもらえないかなーと」


 すると、利麻は少しだけ明るくなり、


「もちろん! アドバイスでも何でも相談にのるよ」


そう言ってくれた。

 俺は、とりあえず昨日のことを利麻に話すことにした。(・・)のことで相談するわけだし今の俺がって言ったらややこしいよね。


「この話は私の親戚の子の話なんだけどね」


 こうやって切り出した。これなら話やすいだろう。すると、利麻はハッとした表情になりそのまま優しい笑顔を向けた、と思いきや真剣な顔をする。


「そっか、親戚の子の話なんだね。あー、ごめん続けて続けて」


 ん? 何か勘違いされた? よくわからないけど話を続けよう。

 利麻には昨日のことを掻い摘んで話した。美香と喧嘩別れのようになったこと、たまたま再会したこと、大切な友達だと言われたこと。

 そして、その大切な友達がわからなくなったこと。利麻は終始うんうんと頷いて、何も言わずに最後までただ聞いてくれた。


「つまり、奏向ちゃんはその親戚の子が言われた大切な友達ってのがわからなくなって困ってるってことでいいのかな?」

「うん。そういうことだと思う」


 歯切れが悪い答えになる。でも、自分自身何に思い悩んでいるのかはっきりとはわかってない。利麻はうーん、と唸ってから話を切り出した。


「その大切な友達ってのは親友みたいなものってことなのかな」


 親友、意味合いとしては合っていると思う。


「そう取ってもらって大丈夫だと思う」

「つまり、親友とは何か、親友の条件とは? ってことだよね。うーん、そうか」


 しばらく考え事をする利麻。腕を組み、眉間にシワを寄せる。すると、利麻は俺に質問をしてくる。


「奏向ちゃんはどう思ってるの、その親友の条件みたいなのは」

「私? 私は……」


 自分の考え、ゆっくりと今までのことを思い出していく。美香たちと仲良くしてた時のこと、友達が多かった時のこと、友達がいなくなった時のこと。


「困ったときに、助けになってくれる人、かな?」

「なるほどなるほど」


 一番俺がして欲しいものを言ってしまった。でも、これって……。


「でもさ、それって奏……じゃなくて親戚の子は仲の良かった子には喧嘩別れみたいなったときにされなかったんだよね? それなのにその親戚の子は資格がないとか言うのはおかしくない?」


 確かにそうだ。俺の考え方なら美香が俺を親友のように扱うのがおかしいことになる。でも、それはそれでおかしいような。


「でもおかしいって思ったでしょ。それで合ってると思うよ? 親友っていうのは、人からそう思われるとか自分がそう思うとかだと思うんだ。だから、人から言われる資格が無いとかは関係ないと思う」


 言われてみれば簡単なことだ。人からどう見られているかの問題だった。納得いったのが顔に出てたのか利麻はこっちを見ると笑顔を向けた。


「その上で、親友とはどういうものなのかってことなんだけど。私の意見は人それぞれだと思うな」

「人、それぞれ?」


 パッとした答えが出るかと思いきや、利麻の口から出た言葉は投げやりだった。


「さっきも言ったけど、人がどう見るか何だからその人によって「これが親友だよね!」っていうのは変わってくるでしょ? ちなみに私は居心地がいいかどうかかな」


 人によって親友というものの見方も違う。当たり前のことなのに、いつのまにか何かの尺度で考えてしまってた。


「そうだよね、そうなんだよね」

「そうだよ。親友ってのは人と触れ合って、関わって相手にどう思われたかの結果なんじゃないかな」


 美香は俺と溝ができたとしても、それまでのことが大切な時間だと思ってくれていた。だからこそ大切な友達だと思っててくれた。親友ってのはなろうとしてなるものじゃなくて、いつの間にかなってるものなのかな。


「利麻にとって居心地のいい人ってどんな人なの?」


 利麻にとっての親友の条件、居心地のいい人、聞くと興味が出てきてしまった。一体どんな人なのだろうか。

 すると、利麻は目を丸くしてため息を漏らし、大きく肩を落とした。え、何かまずいこと言った?

 少しムッとしてから諦めたように柔らかい表情になる。


「私が居心地がいいって思ってるのは、奏向ちゃんと襟澄といるときだよ」

「そっか、私とエリスと……私達!?」

「そう」


 えっ、えと、それは予想外だったんですけど。


「奏向ちゃんって意外と鈍い?」

「そ、そんなことない!」


 まさか自分だなんて思うはず、なくはないのか。利麻は少しだけ頬を赤らめていた。


「奏向ちゃんが言った通り私が困ってるときに助けてくれたってことも大きいよ。でも、遊びに行ったりお祭りに行ったり、一緒に喋ったり、そういう一緒にいて楽しかったことが大きいんだよ」

「でも、利麻は他の子とかとも遊ぶでしょ?」

「それは遊ぶけど、二人は特別って私は思ってるよ」


 利麻にとっては、今まで一緒に過ごした日々が大切で楽しいことなんだ。そう思うとすごく嬉しい気持ちが溢れてくるとともにむず痒いような恥ずかしさを感じる。


「そっか」

「そうだよ。だから、私と奏向ちゃんと襟澄は"親友"ってこと」

「…………"親友"」

「そう、奏向ちゃんが何と言おうと私はそう思ってる。奏向ちゃんはどう? 違う?」


 結局親友とは何か、はっきりとはわからなかった。人それぞれに度合いがあって、それによって決まる好感度みたいなもの。でも、それはずっと一緒に居たいのか、一緒に居て楽しいのか、それが他の友達よりも強い思いなのか、それだけだと思う。

 俺は、利麻と一緒に居て楽しい、もっと一緒に居たい!、もっと、もっと!


「ううん。合ってるよ! 私と利麻は親友!」


 叫ぶようにそう言った。利麻は嬉しそうな顔をする。それは俺も同じだった。しばらく互いを見つめ合うと、途端に笑いが溢れてしまう。


「あはは、何か恥ずかしいねこれ」

「まるで告白見たいかも」

「結婚しちゃう?」

「なら式はハワイがいい」


 二人してバカみたいなことを言って、また笑ってしまう。何かいいな、これ。久しぶりな気がする。二人で話してるだけで楽しいし、すごく居心地がいい。

 それは、昔美香や翔と一緒に遊んだりバカやってはしゃいでた時と同じ気持ちだ。


 ガタン


 そんな時、教室のドアが開かれた。


「二人とも、申請終わりましたよ……って、二人して何してるんですか?」


 ちょうどエリスが帰ってきた。二人して笑ってる光景に、何が合ったのか気になってるみたいだ。

 すると、利麻はまるで悪戯っ子な笑みを浮かべる。


「奏向ちゃんとの結婚の話」

「そうですか、奏向と結婚……結婚!?」


 案の定エリスは驚きを見せる。瞬間扉の前から俺たちの机へと、まるでワープでもしたかのような速さでやってきた。


「どどどどどどどどどうゆう事ですか!? いつの間に二人はそんな仲に! 同性婚できる国に移住するんですか!?」


 エリスはすごい形相でこっちを見てくる。その様子がすごく面白く見えてしまう。


「ふっ、ふふ、ふぁははは!」

「か、奏向ちゃん、笑っちゃ悪い、あはははは!」

「な、なんですか二人とも!?」



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その後、エリスにこっ酷く怒られたのは言うまでもないけど、何となく親友というものがわかった。


(最終目標は親友と呼べる人を作ってもらうことです!)


 そういえばエリスにそう言われて女の姿になったんだっけ。気がつけば親友が出来てた。今の俺なら、もう美香とも翔とも向き合うことができる。そんな勇気が湧いてきてた。

 その日の夜、俺は美香にメッセージを返した。美香のメッセージは思った通り、俺を助けられなかった理由が書かれていた。だから、俺は少しだけ悪戯っぽく返すことにした。


 ----理由は知ってるから。近いうちにまた会おう----




 ----奏向ちゃん! 奏向ちゃん! 奏が理由知ってたんだけど! 何で何で!?----


 美香から来たメッセージを見ながら、次に何で返そうか鼻歌まじりに考え夜は()けていった。

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