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親友を作りたいなら女の子になればいいじゃない  作者:
最終章. 天使との運命の文化祭
30/40

30. 大切な友達

投稿が遅くなってしまってすいません! 皆さんも体調にはお気をつけて!

遅れている間に、ご感想やブックマーク等してくださって本当にありがとうございます!

「えと、その、取り乱しました。すいません」


 あれからひとしきり泣いた俺はようやくエリスの腕から離れると、その一部始終を全て美香に見られていることに気づき顔を真っ赤に染めた。

 なんとか、恥ずかしがってることを隠そうと俺は平然を装おうとする。


「いや、私もなんか、ごめんなさい」


 だが、向こうも照れながら返答してくるためなんとも言えない恥ずかしさを感じる。

 なんとか落ち着きを取り戻すと、美香に一言だけ伝える。


「美香……さん。さっきのこと、(・・)くんに伝えてあげてください。きっと、納得してくれるはずですから」


 美香はきょとんとした顔をする。


「なんか、奏向さんってまるで(・・)みたいなこと言うんだね」


 ビクッと反応する。も、もしかして俺が(・・)とかって勘づかれたりは……。


「人にお節介を焼くところ。そっくり」


 怪しんでる様子は、ないみたいだ。安堵のため息が溢れる。


「わかった。ちゃんと(・・)に伝える」


 美香はそう言って笑った。美香の知らないところで、俺と美香のわだかまりは解消されてるわけなのだけど。


 ぐぅううううーー!!


『………………』


 お腹に巣食う猛獣の鳴き声に、場の空気が静まり返る。今回は俺のお腹の虫が鳴ったわけではない。断じて違う!


「えと、私、です」


 顔を赤くしながら手をあげたのは美香だった。エリスは時計に視線を向ける。俺も釣られて見ると、時間はお昼時をとうに過ぎていた。


「あっ、もうこんな時間でしたか。折角ですし、すぐに準備するのでうちでお昼食べていってください」

「いや、お構いなく。流石にお昼までご馳走になるのは悪いよ」


 ぎゅるるるるる!


 再びの沈黙。美香のお腹も限界みたいだ。


「…………、ご馳走になります」

「はい! 腕によりをかけますから待っててくださいね」


 そう言うと、エリスはキッチンの方に行って調理を始めた。お昼はパスタ料理を作るとか言ってたけど何を作るんだろう?


「奏向さん」

「はい?」


 美香に呼ばれ、少しドキッとする。


「ありがとう」


 面と向かってそう言われた。ありがとうって、お昼のことかな?


「いえ、お昼くらい「そっちじゃないくて!」」


 美香がツッコミを入れてきた。そっちじゃないって、じゃあなんのことなんだ?


(・・)のこと、私もう会えないんじゃないかって諦めてた。でも、奏向さんのおかげで勇気貰えたから」

「いえ、そんな。私は思ったことを言っただけですし」

「ううん。私にとって、(・・)は大事な友達だったから。だからこそ、なんで私は諦めてたんだろうって」


 美香は少しだけ(うつむ)いた。"大事な友達"……。


「だから、ありがとうだよ」


 そう言って手を差し出してくれた。私も手を出すと握手する。美香は笑っていた。


「二人とも、そろそろできますよ」


 キッチンからエリスが声をかける。しばらくすると美味しそうなナポリタンが運ばれてきた。

 その後、俺たちはお昼を食べつつ美香と話をした。昔の、俺が小さかった時の思い出話を。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ご馳走様でした。急に上がり込んでお昼までご馳走になっちゃってごめんね」

「いえいえ、料理は一人分増えようがそんなに変わらないですから」

「ほんとに美味しかったです!」

「そう言ってもらえると作った甲斐がありますよ」


 時間はもうすぐおやつの時間になろうとしていた。お昼を食べ終えた美香は、帰ることになった。


「奏向ちゃんも、今日はありがと」

「い、いえ」


 ローファーのかかと部分を摘みながら履くと、つま先をトントンとして履き心地を整える。


「それじゃあ、お邪魔しました」


 両手でカバンを持つと、美香はそう言ってお辞儀をした。そして、玄関を出ようとする。

 その時、隣から耳打ちをされた。


「(いいんですか? 聞かなくて)」


 エリスはいつのまにか横にはいなくて、次の瞬間俺は後ろから押されていた。突然の力に体はよろけて美香に後ろから抱きついてしまった。


「うわぁ!? えーと、奏向ちゃん?」

「あっ! あの、その」


 驚いた美香が尋ねてくる。踏ん切りがつかなかったけど、この状況なら聞くしかない。俺は意を決して美香に質問する。


「あの、(・・)くんの友達の、(かける)さんについて何か知りませんか?」

「翔?」


 美香の話を聞いた時、俺の中で一つの可能性が生まれた。美香と同じくらい仲の良かった友達、(たか)()(かける)の存在についてだ。

 翔ともあの時から交流がなくなった。美香と違うとすればはっきりと「もう、俺と関わるな!」と言われたことだろう。

 その言葉のせいもあって、翔には嫌われたとずっと思っていた。でも、今回の美香のように俺と翔で何かがすれ違っている可能性があるかも知れないと思った。

 それを言おうか言わないか迷っていたのだが、エリスにはお見通しみたいだった。


 抱きついてた体を離すと美香は少し困った顔をしていた。


「翔、翔か〜」

「えと、何かまずいですか?」

「奏向ちゃんはどこまで聞いてる? (・・)と翔のこと」


 実際のところ本人なのだから全てを知っているのだが、今は他人ということになってるから触り程度の知識を話す。


「とても仲が良かった友達だと。それと、美香さんと同じくらいの時期に仲が悪くなったと聞いてます」

「そっか」


 美香は腕を組んで少し悩むと再び話し始めた。


「実を言うと私も二人が仲が悪くなった理由を知らないんだ」

「そう、なんですか?」


 意外だった。俺と美香と翔、俺たち三人は小学校の頃からの付き合いだ。すごく仲が良くて、たまに喧嘩とかはするけれどその時は喧嘩してない誰かが仲裁役になっていつも仲直りしてた。

 だから、翔が俺のことを嫌いになったとしても美香が話をしたり翔が愚痴を言ってたりはしてるものだと思ってた。


(・・)の一件で喧嘩みたいになったってのは聞いてるんだけど、その後話をしようとしても無視されて結局卒業してからあんまり口聞いてないんだ。一応高校は同じとこなんだけどね」

「そう……なんですか」


 こうなると翔本人に話を聞くしかないだろう。でも、今の自分は赤の他人だ。話を聞くにしてもどう聞いたらいいのかわからない。


「ごめんなさい! 私がこの話に首を突っ込むのは違いますよね。忘れてください」


 もう少し話を聞きたかったけど、美香のことがわかっただけでも十分だ。翔のことはまた考えよう。

 そう思ってると、美香はカバンからスマホを取り出した。


「たしかに、奏向さんはこの話の関係者じゃありません」


 スマホからは見慣れた画面が写っていた。


「でも、少なくとも無関係ってわけじゃないでしょ? (・・)と入れ替わりでこっちにきたわけだし。だから」


 そう言ってスマホの画面を見せてくる。それは、SNSアプリ"LICE"の友達登録の画面だった。


「奏向ちゃんにも知る権利はあるよ。だから、連絡先交換しよ。何かあったら知らせるから」

「い、いいんですか?」

「いいも何も私たち同い年でしょ? 普通に友達とは連絡先くらい交換するよ」

「とも、だち」

「なら私も良いですか?」

「もちろん。襟澄さんもどうぞ」


 そう言って互いに連絡先を交換した。俺のアカウントはこの姿になってから新しく作り直したから(・・)と勘づかれることはない。


「あれ? このアカウントのアイコンって」


 の、はずなのだが。


「へぇー、奏向ちゃんも空の写真にするんだ。(・・)もそうなんだよね」

「へ、へぇー、そうなんですか」


 昔っからなんか空の風景が好きでアカウントのアイコンもその写真にしてたけど。今度から別のに変えよう、うんそうしよう。そして、一通り交換が済んだ。


「よしっと。私の方からも翔に話してみる。何かわかったら連絡するから」

「ありがとうございます」


 そう言うと今度こそ美香は玄関を出る。すると、こっちを振り向いて、


「お礼を言うのはこっちの方だよ。奏向ちゃんなら、私たちを変えてくれそうって思っちゃったし。ほんとに(・・)みたいだからさ。それじゃあ、ご馳走様でした! お邪魔しました!」


と言うと帰っていった。


 バタン、と扉が閉まる。すると、まるで力が抜けたように床にへたり込んでしまった。


「か、奏向!? 大丈夫ですか?」

「う、うん。ちょっと気疲れしただけだから」


 エリスに手を取ってもらいながら立ち上がる。片手に持ってるスマホには美香の友達申請の承認画面が表示されていた。


「良かったですね。美香さん、奏向のこと大切に思っていてくれて」

「大切……。大切な友達、か」


 俺はそのまま歩くと二階へと向かう。


「奏向?」

「疲れたから少し部屋で休んでる」


 階段をスタスタと上っていく。


「ゆっくり休んでくださいね〜」


 下からエリスがそう言った。部屋に入ると、そのまま布団に横たわる。スマホの画面を見ながら、独り言を漏らしてしまう。


「大切な友達。俺にそう言われる資格、あるのかな」


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