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1-9 どうやら俺は回復チート持ちらしい

 ブックマークしてくださった方ありがとうございます!

「回復系の固有式?」


 確信を持って木蓮さんが言い放ったその言葉を復唱する俺。


「それってつまり回復魔法って事ですか?」

「大方そうねぇー」


 回復魔法か。戦いにはあんまり向いてなさそうだが、だけどこれなら戦いじゃなくて医者のような立ち位置で今後生きていけるんじゃないか?

 と思ったのだが、どうもマーレちゃんの様子がおかしい。


「おい、一輝」

「は、はい」


 深刻そうな声のマーレちゃん。

 その声を聞いて俺の中に緊張が走った。


「その力。今後は使うな」

「えっ?」


 鋭い目付きでそう言うマーレちゃん。

 ……どうして?


「マーレちゃん? その言い方じゃ一輝君が勘違いするわぁー」


 勘違い?

 緊張のあまり固くなっていた俺の表情が少しだけ和らいだ。……気がする。


「ごめんなさいねぇー」

「え、えーと」


 全く状況がわかっていない俺は困惑するばかりだった。

 ふと、水連に視線を向けると彼女もまた表情が固くなっていた。


「も、もしかして回復魔法ってよろしくないんですか?」

「そうねぇー。あなたたち日本人の感覚だと魔法と聞いたら回復魔法があって当然に思うかもしれないわねぇー」


 木蓮さんの言いよう。そうか。

 つまりそういうなのか。


「そうだ。この世界に回復魔法なんてものは存在しない」

「正確にはほぼねぇー。回復魔法は普通式ではまずないわぁー。だけどぉー、固有式でなら一輝君のように可能性があるわぁー」

「どっちにせよ回復魔法が貴重である事に変わりはない」


 貴重な力。希少な力。

 どうやら俺の中にはそんな力が眠っているらしいな。

 ……あれ?

 もしかして俺、ピンチ?


「……どうやらわかってるみたいだな」

「一輝君ならわかると思ってたわぁー」

「回復魔法だなんて希少で、なおかつあまりにもわかりやすく高い利用価値のある力。バレればお前、狙われるぞ?」


 この世界で新しい魔法がどのようにして作られていくのかはわからない。

 だけど、マーレちゃんのこの言いよう。

 もしもやばい連中に力がバレ、捕まってしまったら待っている結末はおそらく……。


「ここでの魔法のほとんどが大元は固有式を解析して作られたものだ。そしてお前は回復魔法の固有式を持っている。捕まった後は想像出来るな?」

「……実験体」

「そうだ」


 まだこの世界にない回復魔法という概念。

 それを与えるための実験体として使われるということ。

 確かにこの世界に回復魔法が普及すれば戦いの多いここではたいへん有効活用出来るだろう。

 だか、そのために実験体になる?

 俺には……出来ない。


「まあ、安心しろ」

「何言ってるのよぉー。一輝君を余計に怖がらせたのはマーレちゃんよぉー」

「こうした方がわかりやすいだろ?」


 ええーと。どういうことだ?


「くくっ。なんだその間抜けな顔は」

「だ、だって……」

「バレたらやばい。つまりバレなきゃいいんだ」

「……えっ」


 なんだその単純な考え方。

 いや、間違ってはいないのだろうが……。それにしても……。


「そんな目で見るな。楽しくなるだろ?」


 不満そうにしている俺に向けてこのセリフ。この幼女。ドSだ。


「それにしても……回復魔法か……」


 何やらマーレちゃんが考え込みながらつぶやいていた。

 あれ? 今、ニヤッてした?

 なんだろう。この不穏な感じは。


「大怪我って言ってたよな?」


 水連に顔を向けて問うマーレちゃん。水連は彼女の表情に戸惑いながらも「はい」と頷いた。


「その傷はどれくらいのレベルだったんだ?」

「え、えーと、深さは大体これくらいで、ここからここまでぱっくりといっていました」


 指で深さを示した後、俺のお腹を指先でなぞる水連。

 なぞられて俺も自覚したのだが……こんなに大きな傷だったのか?


「……ほう。それが半日程度で完治か」

「……そのようですね」


 体調が万全とはまだ言えないかもしれないが、それでも傷がという点では完治と言っていいだろう。

 俺の言葉にマーレちゃんの笑みが深まる。

 えっ……怖い。


「それだけの回復能力が今の所は無意識の内に使われるって事だな」

「……そうですね」

「ならばその力、完全にコントロール出来るようになるか、絶対に怪我をしないほどに強くならなければ秘匿は無理って事だな」


 確かにマーレちゃんの言う通りだ。

 この異常なまでの回復力を見られたらそれだけでバレる可能性もある。

 だが、それを伝えるために推定ドSであるマーレちゃんがこんな楽しそうな笑みを浮かべるとは思えないのだが……。


「なあ一輝。知ってるか?」

「……何をですか?」


 不吉。


「ただの訓練と実戦では得られる経験値って次元が違うんだぞ?」

「……えっ」

「それだけの回復能力が無意識で行われるんだ。多少の無理くらい、余裕だよな?」

「…………えっ」


 それはまさに悪魔のささやきだった。


   ☆ ★ ☆ ★

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